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本ガイドは、南アフリカ共和国の会計・監査・税務における最新の基礎的概要を掲載しています。すでに南アフリカ共和国へ投資されている企業、およびこれから投資を検討している企業の皆さまが、基本的な概要を把握するためにお役立ていただけますことを願っております。
南アフリカ共和国(以下、南アフリカ)の会計制度は、2011年5月1日に施行された新しい会社法により、企業の事業規模を測定する「Public Interest Score」(後述)の点数によって、国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、以下IFRS)、中小企業向け国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards for Small and Medium-sized Entities、以下IFRS for SMEs)または、南アフリカ版 Generally Accepted Accounting Practice(以下、南アGAAP)の使用が規定されていましたが、2012年3月に南アGAAPの失効が宣言され、2012年12月1日事業開始年度からは、すべての企業がIFRSまたはIFRS for SMEsの使用が強制適用となりました。ただし、IFRSではカバーできない南アフリカ特有の取引には、財務報告諮問委員会(Financial Reporting Standards Council)から発出の解釈指針(Financial Reporting Pronouncement、FRP)が規定されています。
南アフリカのIFRSへのコンバージェンスの歴史は古く、1995年からプロジェクトが開始され、2003年には南アGAAPはIFRSを一切の改定無く適用することが発表されました。そのため南アGAAPとIFRSは、施行日と条文番号のみが異なる状態となりました。2005年1月1日以降の事業開始年度にはヨハネスブルグ証券取引所(Johannesburg Stock Exchange、JSE)において、上場企業にはIFRSの強制適用が実施され、2011年5月の会社法施行、2012年の南アGAAPの失効によりIFRS、IFRS for SMEsが全面的に適用され、現在に至っています。
南アフリカの税制は、南アフリカ歳入庁(South African Revenue Service、以下SARS)によって法人税、付加価値税(VAT)、個人所得税が提案、施行されており、毎年2月に財務大臣によるBudget Speech(日本の税制改正大綱にあたる)にて、その課税年度における各種税制の改正について詳細が発表され、順次施行されます。
SARSは、税収確保のため非常に積極的な活動を実施しており、特定の税金について還付請求を行うことで、関連の税金すべての照合作業を要求されるケースもあります。具体的な例としては、企業が法人税の還付請求を行うことで企業が源泉徴収および申告を行った個人所得税、付加価値税(VAT)の申告額についての情報の提供が求められるケースが確認されています。
項目 |
南アフリカ共和国 |
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非上場企業(日本企業の子会社)IFRS適用の可否* |
可 |
IFRSと現地会計基準の主な差異 |
なし |
決算期の変更 |
可 |
決算期末の選定(暦年以外の採用可否 |
可 |
会社法で作成が求められる財務諸表 |
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提出する財務諸表 |
同上
税務ステータスによっては税務申告時に財務諸表一式を添付して提出が必要 |
保存期間 |
原則7年間 |
機能通貨適用の可否 |
否 |
法定監査 |
必要 |
*:非上場企業のIFRS適用可否については、以下の基準で記載しています。
否:税務申告時または規制当局に提出(添付)する財務諸表が自国の会計基準で提出しなければならない場合。
可:税務申告時または現地当局に提出(添付)する財務諸表が自国の会計基準以外にIFRS基準であっても良い場合。
南アフリカ会社法は、非上場企業の場合、個々の企業のPublic Interest Scoreに応じて国際財務報告基準(IFRS)もしくは中小企業向け国際財務報告基準(IFRS for SMEs)を適用する旨を規定しています。Public Interest Scoreは従業員数、第三者への負債、売上、株主構成などを応じて割り当てられたポイントを元に作られています。ただし、Public Interest Score上、IFRS for SMEsの利用となった場合でも企業が任意にIFRSを選択することは可能です。
南アフリカ会社法には、国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board、IASB)によって発行されたIFRSを直接参照するとの規定があります。そのため、差異はありません。
南アフリカでは、取締役会がNotice of Incorporationで決算期の変更を企業知的所有権委員会(Companies and Intellectual Property Commission、CIPC)、SARSに提出することにより合理的な理由があれば、いつでも決算期末を変更できます。会社法によれば、同一会計年度における変更は一度だけで、決算期変更は提出後に効果が生じます。
南アフリカの会社法によれば、企業は、Notice of Incorporationで示された日付を期末日として会計年度を定めることができます。税務上の課税年度と会計期間は一致します。企業設立年度は、15カ月を超える期間を会計年度として設定することはできません。2年目以降の会計年度は12カ月となります。
企業は以下の財務諸表を南アフリカの公用語の一つで作成する必要があります。
会計帳簿は、南アフリカの会社法によれば、7年間保管することになります。ただし、他の法律・規則でより長い期間が定められている場合はその期間に従うことになります。その他、株主総会の招集通知および議事録、取締役会議事録なども同じ扱いになります。
また、会計記録は、南アフリカの公用語の一つで記録・保管される必要があります。さらに企業は会計記録を企業の定款に登録したオフィスまたは南アフリカ内の他の地域で閲覧、入手できなければなりません。
IFRSの概念に従い、機能通貨としては南アフリカランド(ZAR)または外貨(USDなど)から選択適用します。ただし、税務申告用の財務諸表についてはランド建てのみが認められています。
南アフリカには、企業の種類として公開企業、国有企業、民間企業、個人責任企業、非営利企業の五つのタイプがあり、このうち、公開企業と国有企業は財務諸表監査が必須となります。ほとんどの日本の現地子会社が該当する民間企業の場合、該当の会計年度においてPublic Interest Score※1が350点を上回る点数、または少なくても100点以上、350点以下の点数で、年度財務諸表が企業内※2で作成されている場合は法定監査が必要になります。また、企業が自主的に監査を受けることを選択している場合や企業のMemorandum of Incorporation(MOI)が監査を要求している場合、他の法律、規則または企業の契約相手が契約で監査を要求している場合も法定監査の対象になります。
監査対象とならないすべての企業は、財務諸表の独立審査(Independently review)対象となります。ただし、株主と取締役が同一人物の場合でかつ、年次財務諸表が企業内※2で作成されていない場合は監査、独立審査の対象となる必要はなく、また規定もされていません。
※1 Public Interest Scoreの計算方法 (会計年度毎に実施される)
(注)Public Interest Scoreは会計規準の適用時にも使用される。
※2 財務諸表は、「独立して作成され、報告された」場合を除き、企業内にて作成されたとされます。「独立して作成され、報告された」とは、年次財務諸表が以下の項目に従って作成された場合を意味します。
南アフリカの会社法ではIFRSの発効日に即時強制適用ですので、IFRSの最新動向を確認して自社の会計処理に適用の可否について検討する必要があります。
南アフリカでは、会計に関する法的なインフラが比較的確立されており、早期よりIFRSの強制適用も実施されているため、会計面での現場の人材レベルも一定の品質を保持していると考えられています。他方、会計人材が不足している傾向にあり、監査報告書発出までは相当な時間を要することに留意が必要です。
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(a) 金鉱会社の鉱業所得は特別な方法により計算され、非鉱業所得については28%の税率で課税されます。生命保険会社、石油およびガスの生産会社ならびに小規模企業には、特別なルールが適用されます。詳細は、フルバージョン「B. 特別な取り扱いを受ける企業」をご参照ください。
(b)企業の実効税率の計算方法は、フルバージョン「キャピタルゲイン」をご参照ください。
(c)2012年4月1日より、配当源泉税(Dividend withholding tax、DWT)が導入されました。2017年2月22日以降に支払われる配当については税率が15%から20%に引き上げられました(配当宣言日のいかんにかかわらず)。南アフリカ居住法人が配当を支払う場合には源泉徴収が必要です。配当の受領者が南アフリカ居住法人や公益団体である場合には、DWTが免除されます。二重課税防止条約の適用によりDWT税率が軽減される可能性があります。詳細は、フルバージョン「配当金」をご参照ください。
(d)2015年3月1日より、非居住者が受け取る利子には15%の利子源泉税が課されます。政府債券に係る利子、上場債券に係る利子、銀行が発行した債券に係る利子を含む、一定の利子にかかる利子源泉税は免除されます。二重課税防止条約の適用により利子源泉税率が軽減される可能性があります。
(e)非居住者に対して、2015年1月1日以降に支払われる(または支払いを要する)ロイヤルティーには15%の源泉税が課されます。また、一定の免除が適用されます。二重課税防止条約の適用により税率が軽減される可能性があります。
(f)詳細は、フルバージョン「損失に対する税の軽減措置」をご参照ください。
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フルバージョンには、EY Tax Guideの日本語版(法人税、個人所得税およびイミグレーション、付加価値税(VAT))が含まれています。
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