日本の新規上場動向 - 2021年1月~3月

EY新日本有限責任監査法人
企業成長サポートセンター
税理士 左近司 涼子

1. 新規上場市場の概況

2021年1月~3月の国内株式市場は、年明け日経平均株価終値27,258円でスタートし、その後徐々に上昇し2月中旬には30,000円台となり、その後は28,000円台から30,000円台で緩やかに変動し、3月末には29,178円となりました。そのような市場環境の中で、新規上場企業数は24社(TOKYO PRO Marketを含む。以下同様)となりました。前年同期(2020年1月から3月)と比較した場合4社減となっており、ゆっくりとしたスタートになっています。市場別に見ると、全体の62.5%にあたる15社がマザーズに上場しており、新興市場合計で全体の95.8%を占めています(表1)。東証本則(1部、2部)への上場はウイングアーク1st(株)の1社となっております。

表1 最近5年間(1月~3月)の市場別新規上場企業数

(単位:社)

市場

2017年
1月~3月

2018年
1月~3月

2019年
1月~3月

2020年
1月~3月

2021年
1月~3月

2021/2020
増減

東証1部

3

2

1

2

1

△1

東証2部

2

2

3

4

0

△4

名証2部

0

0

0

0

0

0

福証本則

0

0

0

0

0

0

マザーズ

15

11

15

16

15

△1

JASDAQスタンダード

6

1

2

4

4

0

JASDAQグロース

0

0

0

0

0

0

名証セントレックス

0

0

0

1

0

△1

福証Qボード

0

0

0

0

0

0

札証アンビシャス

1

0

0

0

0

0

TOKYO PRO Market

1

1

2

1

4

3

①全市場合計

28

17

23

28

24

△4

②①の内で新興市場合計

23

13

19

22

23

1

(②/①比率)

82.1%

76.5%

82.6%

78.6%

95.8%

-

(注1)対象期間に新規上場実績のある市場のみを上記に記載しています。
(注2)東証と同日に他の市場に上場している場合は、東証の実績に含めています。


2. 新規上場企業データの分析

業種別では、情報・通信業10社が全体の41.7%を占め、他の業種社数と開きが見られます。次いで多いのはサービス業の4社(16.7%)、電気機器製造業と不動産業の各2社(各8.3%)となっています。(表2)。

本社所在地別では、全体の62.5%にあたる15社の本店所在地が東京都であり、依然として東京都が中心です。東京都以外に本店所在地がある場合でも上場市場は東証に集中しています。赤字上場(直前期の当期純利益が赤字で上場した会社)数はマザーズ上場した6社です。

表2 2021年(1月~3月)の業種別新規上場企業数

社数

シェア

建設業

1

4.2%

化学業

1

4.2%

医薬品製造業

1

4.2%

機械製造業

1

4.2%

電気機器製造業

2

8.3%

倉庫・運輸業

1

4.2%

情報・通信業

10

41.7%

保険業

1

4.2%

不動産業

2

8.3%

サービス業

4

16.7%

合計

24

100%


表3 2021年(1月~3月)の地域別新規上場企業数

社数

シェア

宮城県

1

4.2%

東京都

15

62.5%

神奈川県

1

4.2%

富山県

1

4.2%

愛知県

1

4.2%

京都府

1

4.2%

大阪府

1

4.2%

岡山県

1

4.2%

福岡県

1

4.2%

沖縄県

1

4.2%

合計

24

100%

直前期の売上高の分布を見ると、10億円未満の企業が6社(25%)、10億円以上50億円未満の企業が11社(46%)であり、全体の3分の2を売上高50億円未満の比較的小規模な企業が占めています(図1)。売上高が200億円を超える新規上場企業はありませんでした。

初値時価総額の分布を見ると、50億円未満の企業3社(12%)、50億円以上100億円未満の企業が9社(37%)であり、全体の2分の1程度を占めております(図2)。また、TOKYO PRO Marketを除いた新規上場企業においては、公募割(初値が公開価格を下回る)企業はありませんでした。

図1 2021年(1月~3月)新規上場企業・直前期売上高/図2 2021年(1月~3月)新規上場企業・初値時価総額

図1 2021年(1月~3月)新規上場企業・直前期売上高/図2 2021年(1月~3月)新規上場企業・初値時価総額

監査法人別では、2018年1月~2021年3月までを通算するとEY新日本有限責任監査法人86社(26.9%)、有限責任監査法人トーマツ56社(17.5%)、有限責任あずさ監査法人が71社(22.2%)となっており、大手監査法人に集中する傾向にあります(表4)。

表4 2018年~2020年、2021年1月~3月の監査法人別新規上場企業数

2018年

2019年

2020年

2021年
1月~3月

合計

社数

シェア

社数

シェア

社数

シェア

社数

シェア

社数

シェア

EY新日本有限責任監査法人

29

29.6%

23

24.2%

28

27.2%

6

25.0%

86

26.9%

有限責任監査法人トーマツ

21

21.4%

21

22.1%

11

10.7%

3

12.5%

56

17.5%

有限責任あずさ監査法人

25

25.5%

19

20.0%

24

23.3%

3

12.5%

71

22.2%

太陽有限責任監査法人

6

6.1%

9

9.5%

11

10.7%

3

12.5%

29

9.1%

その他

17

17.3%

23

24.2%

29

28.2%

9

37.5%

78

24.4%

合計

98

100%

95

100%

103

100%

24

100%

320

100%