関連法令等の改正

EY新日本有限責任監査法人
企業成長サポートセンター
公認会計士 安藤 正伸

1. 法務省は、2020年11月27日に「会社法施行規則等の一部を改正する省令」を公布

「会社法の一部を改正する法律」(令和元年法律第70号。以下、「改正法」という)及び「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(令和元年法律第71号)が2019年12月4日に成立し、同月11日に公布され、「会社法の改正に伴う法務省令関係政令及び会社法施行規則等の改正案」が、2020年9月1日に公表されました。これを受け、法務省は2020年11月27日に改正法の施行に伴う「会社法施行規則等の一部を改正する省令」を公布しました。改正法は、後述している「(3)株主総会資料の電子提供制度に関する規定の新設及び整備」における株主総会資料の電子提供制度に関する改正規定を除き、2021年3月1日から施行されます。

この改正の背景として、会社をめぐる社会経済情勢の変化に鑑み、株主総会の運営及び取締役の職務の執行の一層の適正化等を図ることを目的としており、これにより日本企業のコーポレート・ガバナンスの更なる向上、日本企業の競争力や日本企業に対する内外の投資家からの信頼がより高まり、ひいては、日本経済の成長に大きく寄与するものと期待されることが挙げられます。

2. 改正法の内容

以下、改正法のうち、会計及び開示に関連するポイントを解説します。

(1) 定義の改正

改正法により、有価証券報告書を提出している一定の株式会社は社外取締役を置くことが義務付けられること(会社法327条の2)、業務執行の社外取締役への委託に関する規定が設けられたこと(会社法348条の2)に伴い、以下の定義が見直しされました。

①社外役員(会社法施行規則2条3項5号ロ)
②社外取締役候補者(会社法施行規則2条3項7号ロ)
③業務執行者(会社法施行規則2条3項6号イ)

(2) 取締役等の報酬に関する規定の新設

① 会社法施行規則

 (ア) 取締役又は執行役の報酬等として交付される株式及び新株予約権等に関する規定の新設
改正法により、取締役又は執行役の報酬等として株式もしくは新株予約権又はこれらと引換えにする払込みに充てるための金銭を付与する場合においては、定款又は株主総会の決議により法務省令で定める一定の事項を定めなければならないこととしていることから(会社法361条1項3号から5号まで及び409条3項3号から5号まで)、当該事項の具体的な内容を定める規定(会社法施行規則98条の2から98条の4まで及び111条から111条の3まで)を新設することが求められます。

 (イ) 取締役の個人別の報酬等についての決定に関する方針に関する規定の新設
改正法により、一定の株式会社の取締役会は取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として法務省令で定める事項を決定することを義務付けられていることから(会社法361条7項)、当該方針の具体的な内容を定める規定(会社法施行規則98条の5)を新設することが求められます。

② 会社計算規則

改正法においては、取締役又は執行役(以下、「取締役等」という)の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式を発行することができることとされました(会社法202条の2、205条3項から5項まで、209条4項、445条6項等)。これにより、株主資本の変動額について定める規定(会社計算規則42条の2、42条の3、54条の2)を新設するほか、所要の規定の整備を行うことが求められます。

(3) 株主総会資料の電子提供制度に関する規定の新設及び整備

① 会社法施行規則

改正法により新設される株主総会資料の電子提供制度(会社法325条の2から325条の7まで)について、以下の規定を新設するほか、所要の規定の整備を行うことが予定されています。

(ア) 電子提供措置をとる方法に関する規定(会社法施行規則95条の2)
(イ) 電子提供措置をとる場合における招集の通知の記載事項に関する規定(同令95条の3)
(ウ) 書面交付請求をした株主に対して交付する書面(電子提供措置事項記載書面)に記載することを要しない事項に関する規定(同令95条の4)

② 会社計算規則

改正法により新設される株主総会資料の電子提供制度(会社法325条の2から325条の7まで)について、連結計算書類に係る監査報告又は会計監査報告に記載され、又は記録された事項に係る情報についての電子提供措置に関する規定(会社計算規則134条3項)を新設することが予定されています。

(4) 事業報告に関する規定の改正

株式会社の事業報告について以下の項目などの見直しをするとともに、所要の規定の整備を行うことが求められます。

①取締役、会計参与、監査役又は執行役の報酬等に関する記載事項を拡充すること(同令121条4号イ及びロならびに5号の2から6号の3まで)
②報酬等として付与された株式や新株予約権等に関する記載事項を追加すること(同令122条1項2号及び123条1号)
③事業年度の末日において社外取締役を置いていない一定の株式会社は、社外取締役を置くことが相当でない理由を当該事業年度に係る事業報告に記載しなければならないこととする規定等(改正前の会社法施行規則124条2項及び3項)を削除すること
④社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要を記載しなければならないこととすること(会社法施行規則124条4号ホ)

3. 改正される規則

改正法に伴い、主として会計及び開示に関連する規則は以下の通りです。

(1) 会社法施行令(平成17年政令第364号)
(2) 会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)
(3) 会社計算規則(平成18年法務省令第13号)

4. 上場準備会社の対応

近年、会社を取り巻く経営環境の変化は特に著しく、それに対応するため経営管理体制の改変や企業買収等の事象が発生しています。このような社会情勢を鑑み、株主総会の運営及び取締役の職務の執行の一層の適正化等を図ることを目的に、監査役会設置会社における社外取締役の設置の義務付け等の措置を講ずる必要性が求められ、これらを背景に今般の法改正が行われました。このことから更なるガバナンス体制の強化及び開示の拡充をすることで、潜在的な利害関係者を含めた、すべての利害関係者からの信頼を高め、ひいては日本経済全体の成長に寄与することが期待されています。

特に上場準備会社においては多様なビジネスモデル、取引形態が発生することが想定され、急激な成長を遂げる会社が散見されます。そのような場合にも、成長とともに適切なガバナンス体制を並行して構築していくことが重要と考えられます。法令遵守の観点からも企業の行動として重要であるため、常に最新の情報を収集し、適応できる体制を整えることが望まれます。