旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』 ー 第71回 楽観と悲観のバランスをうまくとりながら納得する道を歩む

坂梨 亜里咲
mederi株式会社 代表取締役


Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2023年3月10日号に掲載された記事をご紹介します。



打算的にキャリア形成してきた私が、まさか起業することになるとは思ってもみませんでした。

堅実な母から「男性に頼ってはいけない」といわれ育ち、一人で生きていくための保険として、30歳までに年収1000万円稼ぐ女性になることを目標にキャリアを構築してきました。

就活では大企業ばかり受けていましたが、小さなベンチャー企業のほうが昇進のチャンスがあるかもしれないと、新卒入社したのは従業員20人ほどのインターネット通販会社です。カスタマーサポート業務を通して、お客様のニーズを読み解き応えることに喜びを感じました。

1年後には起業した友人の誘いでスタートアップ企業へ転職。若い女性向けにコスメやファッションなどのトレンド情報を発信するWEBメディアの運営に携わることになり、ディレクター、COO、CEOへとステータスも年収も順調にアップしていきました。スタートアップ企業で学んだのは「速さは全てに勝る」ということで、行動力のある私の価値が十分に発揮できました。27歳という若さで子会社社長に就任したのですが、その2年後には社長としてのポジションを手放し、起業をすることとなります。

30代のキャリアをどうするか考えた時に、目標を達成していたので、年収へのこだわりがなくなっていました。そこで、30歳からの10年間は一生添い遂げられるようなライフワークにチャレンジすることに。自分自身がお金も時間も費やした不妊治療経験から着想を得て、1人でも多くの女性に望むタイミングで妊娠・出産・キャリアを実現して欲しいとmederi株式会社を起業し、4年目となります。

起業してから2年ほどは軌道にのらず苦しい日々が続きましたが、諦めずに未来を描き続け、資金調達を繰り返し、オンライン診療サービスに舵を切ってから、多くの女性から愛されるサービスに成長を遂げています。

私は何か特別な資格やスキルを持っているわけではないのですが、行動力と突破力が取り柄です。そんな自分が輝ける仕事や尊重してくれる環境を意識し身を置いた結果、自然とキャリアが切り拓かれていったように思います。

面白いもので、点と点に思えるキャリアが線となっていたり、当時は悲観的でも振り返ると美談になっている経験ばかりです。

例えば、社員が増えた今でも、お客様と向き合いサービス改善アイデアを得るため、週末には自らカスタマーサポートや発送業務を行ったり、そして、転職したスタートアップ企業が潰れるかもしれない出来事や、もまだまだ道半ばですが、楽観と悲観のバランスをうまくとりながら、チャレンジし続けていきます。

想いを伝えるために記事やプレスリリースを執筆しますが、インターネット通販会社やWEBメディア運営会社での経験が生きていると実感します。

不妊治療を続けても子を授かれないこと、資金調達を直前で断られたことなど絶望的な経験もたくさんあるのですが、全力で向き合い乗り越えたあとには自分を成長させてくれた有難い経験に思えます。

今思うようにいかないと悩んでいる方は、自分を俯瞰し強みを見つける、弱みと思えることも視点を変えて強みにする、そして人生で大切にする価値を明確にすることで、きっと納得する道が開けるはずです。



坂梨 亜里咲

坂梨 亜里咲(さかなし・ありさ)
mederi株式会社 代表取締役

略歴
明治大学卒業後、ECコンサルティング会社を経て、女性向けwebメディアのディレクター、COO、代表取締役を経験。自らの4年にわたる不妊治療経験からmederi㈱を設立。オンラインピル診療サービス「メデリピル(mederi Pill)」、妊活サポートプロダクト「メデリベイビー(mederi Baby)」を展開。2021年より実業家・前澤友作氏が設立した前澤ファンドから出資を受けている。



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