旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』 ー 第69回 アウェイに飛び込む勇気を!

村田 ますみ
株式会社ハウスボートクラブ 代表取締役会長CEO/日本葬送文化学会 副会長


Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2023年1月10日・20日合併増大号に掲載された記事をご紹介します。



「私はお墓に入りたくない。死んだら海に撒いて。」母が終末期の病床で発したひとことが、自分の人生を大きく変えることになりました。母の他界から1年後に、彼女の遺言どおり沖縄の海で散骨をおこない、その1年後には海洋散骨をビジネスにするために会社を設立しました。

2022年、その会社は15周年を迎えました。私のこれまでの人生の中では、一番長続きしたことかもしれません。とにかく日々一生懸命、好奇心を持ってチャレンジしてきたら、気が付いたら年月が経っていました。

そもそも、親を亡くしたという経験が、どうして起業に結び付いたのでしょうか?最近、私は会社の原点を振り返る機会があり、改めてそのことを思い返しました。

  1.  いつかまた起業したいと思っていた
    私の社会人としてのキャリアのスタートは、大学4年生のとき、当時の大学の友人たちとITの会社を立ち上げたところから始まります。私の学年は団塊ジュニア世代でもっとも人数が多く、就職難でした。当時はインターネットの黎明期で、学生がベンチャー企業を興すことも珍しくありませんでした。私は大学を卒業して1年後にその会社を去ることになりましたが、その時の経験は何事にも代えがたく、いつかまた自分で会社を興したいとどこかで思っていました。

  2.  母の死は人生を変えるほどのインパクトがあった
    人生ではじめて、もっとも身近な人を亡くすという経験は、自分の身体の一部がもぎ取られるような体験でした。今思えば当時の私は、これからの人生を前に進めるために、その出来事に意味付けをする必要があったのかもしれません。海洋散骨が、その後の自分のライフワークになったことは何か必然のような気がしてなりません。私は無神論者ですが、いつでも天から見守られている気がしており、すべての道はお導きだと感じています。

  3.  仲間に恵まれた
    私の仕事における信条は、「何をするかより誰とするか」です。起業から現在に至るまで、おかげさまで、たくさんの良き仲間に恵まれました。事業はけっして一人で成し遂げることは出来ませんでした。「この人とやりたい」と思える人たちとワクワクを共有することは宝物のような体験です。

私は、今これを読んでいるあなたに起業を薦めているわけではありません。ただ、あなたがもし今何か満たされないものを抱えているとしたら、少し勇気をもって、アウェイに飛び込んでみては?と思います。これまでのキャリアとはまったく違う畑、これまで関心のなかった分野の勉強、自分とは世界の違う人たちとの交流など、ひとつチャレンジしてみると道が開けます。そこには必ず、新しい出会いがあります。そして、開けた道は、いつかあなたが歩くために予め用意されていた道です。

私はこれまでそうやって人生を歩んできました。実は今、私は3回目の起業にチャレンジしようとしています。今年50歳になりますが、まだまだやりたいことが沢山あります。これまでたくさんの死に関わってきたからこそ、一度きりの人生を悔いなく思いっきり楽しもうと思っているのです。



村田ますみ

村田 ますみ(むらた・ますみ)
株式会社ハウスボートクラブ 代表取締役会長CEO/日本葬送文化学会 副会長

略歴
1996年同志社大学法学部卒業、学生時代の仲間と有限会社ジャパン・サーチ・エンジン(現・株式会社イー・エージェンシー)を起業。IT業界、生花流通業界を経て、母の死と海洋散骨をきっかけに2007年株式会社ハウスボートクラブを起業。2014年一般社団法人日本海洋散骨協会を設立。2019年株式会社鎌倉新書(東証プライム)と資本提携、グループ傘下に。2022年2月より現職。



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