退職給付に係る調整額と組替調整額

Question 

退職給付会計基準に従い計上された「退職給付に係る調整額」については、どのようなものが組替調整の対象となるのでしょうか?また、組替調整に係る会計処理と表示についてはどのようになりますか?

Answer 

組替調整額 (リサイクリング)とは、一度「その他の包括利益」として認識したものについて、当期純利益の計算にあらためて含めた額(『リサイクル』をした額)をいいます。

「退職給付に関する会計基準」に従いその他の包括利益に計上される「退職給付に係る調整額」については、前期末までに認識された未認識項目の費用処理額、すなわち退職給付に係る調整累計額から退職給付費用へと振り替えられた金額が原則として組替調整額に含められることとなります。前期末時点の未認識項目のうち、当期中に費用処理されたものが組替調整の対象となり、費用処理されなかった部分がその他の包括利益に計上されるため、当期発生した未認識項目の当期費用計上額は組替調整の対象とならない点がポイントとなります。

なお、「退職給付に係る調整額」については、連結包括利益計算書に係る注記事項として、①当期発生額、②組替調整額、③税効果額を記載する必要があります。このうち、当期発生額、組替調整額として注記されるものは以下の通りとなります。

注記項目

集計される金額
(税効果控除前の税引前の金額)

当期発生額

  • 数理計算上の差異の発生額のうち、当期に費用処理されなかった金額
  • 過去勤務費用の発生額のうち、当期に費用処理されなかった金額

(注意)一括費用処理の場合は集計に含まれません。

組替調整額

  • 前期までに計上された未認識項目に係る当期の費用処理額

仕訳のイメージは以下の通りです。

前提

前期末までに発生した数理計算上の差異が100、当期に発生した数理計算上の差異が50、法定実効税率を30%とする。

1. 当期の数理計算上の差異50に係る発生時の仕訳(翌期から償却するものとします)

退職給付に係る調整額

50

退縮給付に係る負債

50

繰延税金資産

15

退職給付に係る調整額

15

2. 当期の組替調整に係る仕訳:前期末に発生した数理計算上の差異100のうち、当期に10だけ費用計上された場合

退職給付費用

10

退職給付に係る調整額

10

退職給付に係る調整額

3

法人税等調整額

3

3. 連結包括利益計算書の注記項目

① 当期発生額:▲50 ←当期の発生額のうち、費用処理されなかった金額(税効果控除前)
② 組替調整額:10 ←前期末までに計上された未認識項目に係る当期の費用処理額(税効果控除前)
③ 税効果額:12 ←税効果の当期変動額

根拠条文

      • 「包括利益の表示に関する会計基準」第9項、第31項(4)
      • 「退職給付に関する会計基準」第15項、第29項、第56項


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