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EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 兵藤 伸考
2023年3月期決算に係る有価証券報告書(以下「有報」という。)における「従業員の状況」の男女賃金差異の開示状況を知りたい。
調査対象会社(201社)の有報の「従業員の状況」において、提出会社における労働者の男女の賃金の差異の比率を業種別に分析した結果は<図表1>のとおりである。
業種別の平均賃金差異(男性労働者の賃金に対する女性労働者の賃金の割合)は、調査対象会社5社以上の中では情報・通信業が74.2%と男女の賃金の差異が小さかったものの、平均賃金差異は65.6%であり、業種による大きな差異はみられなかった。
業種 |
調査対象会社 |
平均賃金差異 |
---|---|---|
情報・通信業 |
14社 |
74.2% |
化学 |
19社 |
69.6% |
電気機器 |
17社 |
68.2% |
サービス業 |
13社 |
67.8% |
電気・ガス業 |
8社 |
64.9% |
銀行業 |
5社 |
64.3% |
ガラス・土石製品 |
5社 |
64.2% |
不動産業 |
7社 |
63.4% |
食料品 |
9社 |
63.0% |
機械 |
5社 |
62.2% |
建設業 |
16社 |
62.1% |
小売業 |
11社 |
59.0% |
その他金融業 |
7社 |
59.0% |
卸売業 |
6社 |
58.9% |
その他(注1) |
34社 |
66.0% |
合計(注2) |
176社 |
65.6% |
(注1)調査対象会社5社未満の業種は「その他」に集計している。
(注2)提出会社に係る労働者の男女の賃金の差異の記載がない事例25社は集計外としている。
また、提出会社における労働者の男女の賃金の差異の比率について、比率の分布分析を行った結果は<図表2>のとおりである。賃金差異が「60%超70%以下」の会社が最も多く64社(36.4%)であった。なお、調査対象会社のうち最も賃金差異が小さかった事例は88.0%であり、最も賃金差異が大きかった事例は35.0%であった。
賃金差異 |
会社数 |
比率 |
---|---|---|
80%超90%以下 |
8社 |
4.5% |
70%超80%以下 |
53社 |
30.1% |
60%超70%以下 |
64社 |
36.4% |
50%超60%以下 |
41社 |
23.3% |
40%超50%以下 |
7社 |
4.0% |
30%超40%以下 |
3社 |
1.7% |
合計(注) |
176社 |
100.0% |
(注)提出会社に係る労働者の男女の賃金の差異の記載がない事例25社は集計外としている。
さらに、調査対象会社(201社)について、提出会社における労働者の男女の賃金の差異の主な要因を記載している事例を分析した結果は<図表3>のとおりである。
大部分の会社では、賃金差異の要因として等級別や管理職比率等の人数構成による要因をあげていた。その他には職種による要因や、出産・育児等勤務形態による要因をあげている事例がみられた。
差異要因の内容 |
会社数 |
---|---|
等級別や管理職比率等人数構成による |
88社 |
残業手当、住宅手当や交替手当等の手当が男性労働者に多い |
12社 |
女性にパートタイムの人員が多い |
8社 |
女性採用を積極的に行っている |
7社 |
女性労働者に地域職が多い |
5社 |
時短希望者に女性が多い |
4社 |
特別職・専門職に男性が多い |
4社 |
定年後の再雇用者など嘱託社員の男性比率が高い |
4社 |
(注)複数の項目を記載している場合には、それぞれを1社としてカウントしている。
(旬刊経理情報(中央経済社)2023年10月10日号 No.1690「2023年3月期有報におけるサステナビリティ情報の開示分析」を一部修正)