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会計情報トピックス 柏岡佳樹
企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成29年10月31日に改正「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」(以下「改正修正国際基準」という。)を公表しています。
ASBJは「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(2013年6月)の記載に基づき、2013年7月に「IFRSのエンドースメントに関する作業部会」を設置し、IASBにより公表された会計基準等に関するエンドースメント手続を実施し、修正国際基準を公表しています。ASBJは、2017年4月11日に修正国際基準の直近の改正を行っていますが、これまでの作業を通じて、2016年9月30日までに国際会計基準審議会(IASB)により公表された会計基準等のうち2017年12月31日までに発効するものを対象としてエンドースメント手続を行っています。
今般、ASBJは、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」(以下「IFRS第15号」)及びこれに関連する改正会計基準のエンドースメント手続を行ったほか、2016年10月1日以後2016年12月31日までに公表されている会計基準等のうち、2017年12月31日までに発効する会計基準等を対象としてエンドースメント手続を行い、改正修正国際基準の公表にいたりました。
エンドースメント手続の具体的な対象は以下の通りです。
改正修正国際基準は以下によって構成されます。
改正修正国際基準では、以下の(3)及び(4)に記載の通り、上述したエンドースメント手続の対象となる会計基準等について「削除又は修正」を行うことなく採択することとしています。
ASBJは、以下の①及び②を「削除又は修正」の要否の検討を行う中心的な項目として抽出し、「削除又は修正」の要否の検討を行いました。また、③については、ASBJにおける収益認識に関する包括的な会計基準の開発の取組みの議論を参考とする中で聞かれた指摘に対応して検討を行いました。
IFRS第15号の支配の移転の考え方について、エンドースメント手続の検討の過程では、工事進行基準は企業の活動を基礎として業績を測定するものであり支配の移転の考え方と相容れず、基準内で整合性が図られていないのではないかとの懸念が聞かれたため、ASBJは「削除又は修正」の要否の検討を行いました。
この点については、IFRS第15号の開発過程において、我が国をはじめとした市場関係者から、新たな会計基準の下で工事進行基準の適用が認められない場合には工事契約に関する有用な情報が提供されなくなるとの懸念が寄せられたことを受けて、IASBは支配の移転の考え方を維持しつつ、一定の期間にわたり充足される履行義務の枠組みの下で工事契約への具体的な適用を整理したとされています。
このようなIFRS第15号の開発の経緯を踏まえて検討した結果、改正修正国際基準では、IFRS第15号における支配の移転の考え方の工事契約への適用について、「削除又は修正」を行わないこととしています。
IFRS第15号における開示の拡充に対して、我が国の関係者からは、IFRS第15号の開発段階から実務上の負担について強い懸念が寄せられてきました。特に強い懸念が示された開示項目は、「収益の分解」(IFRS第15号第114項及び第115項)、「契約残高」(IFRS第15号第116項から第118項)、「残存履行義務に配分した取引価格」(IFRS第15号第120項から第122項)であり、ASBJは特に懸念が寄せられたこれらの3項目を中心に「削除又は修正」の要否の検討を行いました。
検討の結果、ASBJは、現時点では、各国の早期適用の事例及び我が国の準備状況に関する情報が限定的であり、IFRS第15号の開示の要求事項について、便益がコストに見合っていると結論付けているIASBの主張を否定する根拠が十分に見出せないと判断し、上述の3項目を含むIFRS第15号の開示の要求事項について「削除又は修正」を行わないこととしています。
ASBJは原価回収基準及び棚卸資産以外(固定資産等)の売却の会計処理についても「削除又は修正」の要否の検討を行いましたが、いずれも「削除又は修正」を行わないこととしています。
IFRS第12号の修正は、IFRS第12号の要求事項のうち、IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」に従う売却目的保有又は非継続事業に分類される子会社等に適用される要求事項を明確化したものであり、IFRS第12号の基本的な取扱いに変更はないため、IFRS第12号の修正について「削除又は修正」の要否を検討する必要はないとして、「削除又は修正」を行わないこととしています。
上述のエンドースメント手続を行った結果として、「修正国際基準の適用」の「別紙1 当委員会が採択したIASBにより公表された会計基準等」を改正しています。 また、上述の通り今回のエンドースメント手続において「削除又は修正」は行っていませんが、企業会計基準委員会による修正会計基準第2号「その他の包括利益の会計処理」について、IFRS第15号によるIFRS第9号「金融商品」(2013年)の修正を反映するように文言を修正しています。
企業が修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成する場合、改正後の「修正国際基準の適用」を公表日以後開始する連結会計年度から適用することを原則とし、公表日を含む連結会計年度に係る連結財務諸表に早期適用することができる(その場合、四半期連結財務諸表に関しては、翌連結会計年度に係る四半期連結財務諸表から適用する)としています。
「1.改正修正国際基準の概要 (5) 修正国際基準の改正」に記載の通り、企業会計基準委員会による修正会計基準第2号「その他の包括利益の会計処理」について文言の修正が行われていますが、内容にかかわるような公開草案からの変更はありません。
なお、本稿は改正修正国際基準の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。
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