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会計情報トピックス 吉田剛
日本公認会計士協会(会計制度委員会)は、平成23年3月29日付で以下の会計制度委員会報告等の改正を公表しています。
① 会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」(以下「外貨実務指針」という。)
② 会計制度委員会報告第12号「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」(以下「研究開発費実務指針」という。)
③ 会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品実務指針」という。)
④ 「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A」(以下「研究開発費Q&A」という。)
⑤ 「金融商品会計に関するQ&A」(以下「金融商品Q&A」という。)
⑥ 「税効果会計に関するQ&A」(以下「税効果Q&A」という。)
これらは、企業会計基準委員会(ASBJ)より平成21年12月に公表された企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「過年度遡及会計基準」という。)及び同じくASBJより平成22年6月に公表された企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」(以下「包括利益会計基準」という。)を受け、既存の実務指針等の改正が行われたものです。
金商法開示対象会社においては、平成23年3月31日以後終了する連結会計年度の連結財務諸表より、包括利益の表示が行われますが、これに対応する形で、以下の実務指針の改正が行われています。
在外子会社等のその他の包括利益の換算(外貨実務指針第31-2項、第70-2項、設例10-2)
外貨建取引等会計処理基準で明示されていない在外子会社等のその他の包括利益の換算に係る定めが設けられました。
企業会計基準適用指針第8号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針」第7項(2)また書においては、親会社による株式の取得後に生じた評価・換算差額等に属する項目につき、決算時の為替相場による円換算額を付すものとされています。このように貸借対照表の純資産の残高は、毎期の決算時の為替相場で換算される定めとなっていることから、連結包括利益計算書(又は連結損益及び包括利益計算書)のその他の包括利益に関して、親会社の支配獲得後に生じた評価・換算差額等に属する項目の円換算額による変動額として算定されることになります。
平成23年4月1日以後開始する事業年度より、過年度遡及会計基準が適用されることに伴い、以下の内容の実務指針等の改正が行われています。
過年度遡及会計基準の導入による遡及処理の定めに対応し、遡及適用及び修正再表示の場合の税効果会計の考え方が示されています。
会計方針の変更に伴う遡及適用又は過去の誤謬の訂正による修正再表示により、過年度の資産又は負債の残高が修正された場合、税務上の残高は修正されないことから、この差額が通常は一時差異に該当し、税効果会計を適用することになるとされています。
この場合、回収可能性の判断に際し、遡及適用により過年度の監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(以下「66号」という。)5.の例示区分が形式的に変動したとしても、会計方針の変更によって会社の本質的な収益力は変化せず、また見積りの変更が将来にわたって会計処理するとされていることとの整合より、例示区分の変更の影響は、会計方針を変更した期の損益に反映することとされています。
一方、修正再表示により66号5.の例示区分が変更となったような場合には、修正後の例示区分を基礎として、過去の時点での回収可能性を判断し、修正再表示の一環として過去の財務諸表における繰延税金資産の計上額を修正することが示されています。
ソフトウェアの見込販売数量の見直しの結果として、当初予見することができなかった原因により見込販売数量の著しい減少が見込まれる場合に、当該ソフトウェアの経済価値の減少部分を一時の費用(損失)とする定めが削除されました。
また、耐用年数の変更により、自社利用ソフトウェアの価値減少部分を一時の費用(損失)とする定めも、廃止されています。
債権を直接減額して取り崩す場合において、貸倒引当金の不足額が過年度の見積誤差によるときに、当該不足額を特別損失に計上するとした定めが削除されます。改正後は、それぞれの債権の性格により、当該不足額を営業費用又は営業外費用として処理することになります。
また、債権の直接減額後の回収額(償却債権取立益)及び繰入額と取崩額を相殺した差額が貸方差額となった場合(貸倒引当金戻入益)について、これらを特別利益として計上する定めが廃止されます。改正後は、償却債権取立益については営業外収益として、貸倒引当金戻入益については営業費用又は営業外費用から控除するかもしくは営業外収益として計上すべき旨が示されています。
為替予約等に係るヘッジ会計の会計処理として振当処理を採用している会社が、原則的処理への変更を行った場合、過年度遡及会計基準に従い、遡及適用することになると考えられます。
これまでは、振当処理が行われた外貨建金銭債権債務が決済されるまで、当該振当処理が継続するとされていましたが、当該定めが削除されており、原則どおり遡及適用が求められることになります。
これらの改正は、過年度遡及会計基準及び包括利益会計基準の適用と合わせて適用されています。具体的には、包括利益の表示に関係する改正は平成23年3月31日以後終了する連結会計年度から、過年度遡及に関係する改正は平成23年4月1日以後開始する事業年度から適用となります。
このため、1.③に示した貸倒引当金関係の表示区分の変更については、過去の財務諸表の組替えを行わず、例えば特別利益に表示された平成23年3月期決算の貸倒引当金戻入益等は、平成24年3月期決算の比較情報においても、従来どおりの区分(特別利益)に掲記されることになります。
公開草案では、ソフトウェアの見込販売数量の見直しについて、毎期末において行われる定めとなっていましたが、会計上の見積りが随時行われるものであることに対応し、見込販売数量の見直しも「適宜行われる」ものと変更されました(研究開発費実務指針第19項)。
また、見込販売数量の見直しや残存利用可能期間を見直した場合の減価償却額の算式について、期末に変更が行われた場合でも、期首から償却費を修正する算式となっていたものを、会計上の見積りの変更がその変更時点から将来に向かってその影響を反映するものであることから、変更時点からその影響を反映する算式へと変更されています(研究開発費実務指針第19項、第21項)。
連結財務諸表において、その他有価証券評価差額金及び繰延ヘッジ損益の当期変動額がその他の包括利益として表示されることが明示されました(金融商品実務指針第73項、第174項)。
また、連結子会社又は持分法適用会社におけるその他有価証券評価差額金の連結包括利益計算書(注記含む。)作成上の取扱いが、新たに示されています(金融商品Q&A Q73、Q74、Q77)。
なお、本稿は改正実務指針の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。