EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
米国証券法(1933年法)において、吸収合併、株式交換、株式移転などの組織再編取引により、米国株主に対し株式の割当を行う場合、非米国企業であっても免除が適用されない限り、米国証券取引委員会(以下、「SEC」という)への、当該会社の監査済み財務諸表や事業統合に関する詳細な開示を含む登録書類「Form F-4」の提出が必要となる可能性があります。
ここで注意すべきは、日本国内企業同士の統合や再編であっても、米国内での株式の募集又は売り出しにあたるとされており、SECへの登録義務が生ずる可能性があるということです。
以下は、Form F-4の提出が必要となる場合の経営統合発表から統合までのスケジュールのイメージです。Form F-4では、少なくとも2期間分のIFRSまたは米国会計基準(US GAAP)に従った財務諸表を作成し、米国公開会社会計監督委員会が定める監査基準(PCAOB基準)に従った監査を受ける必要があります。また、Form F-4をコンフィデンシャルファイリングした後、SECのコメントに対応するためには3ヶ月程度要するということ、Form F-4は、統合議案承認のための株主総会招集通知が発送される前に有効となっている必要があるということを考慮すると、統合議案承認のための株主総会の最低1年前程度から、法律事務所、会計アドバイザーと連携して準備を進める必要があります。
(各社におけるIFRSやUS GAAP導入準備の状況にもよるため、
上記スケジュールどおりにプロジェクトが進むことを保証するものではありません。)
以下の要件を満たす場合、免除規定が適用される場合を除き、Form F-4の提出が必要となる可能性があります。
所在地国 |
米国企業のみならず、非米国企業であっても対象 |
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組織再編 |
吸収合併、株式交換、株式移転およびこれらと同様の組織再編取引の場合 |
米国株主 |
米国株主に対し、株式の割当を行う場合 |
ルール802登録免除規定は、以下の3つを満たすことです。
1 |
保有割合 |
米国株主の保有割合が10%以下であること |
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2 |
株主の取扱い |
米国株主に対して、米国外に居住する株主と平等的な取扱いがなされていること |
3 |
情報開示 |
一定の情報開示がなされていること(Form CBの提出) |
米国株主の保有割合が10%を上回ると、事実上Form F-4の提出を免れることができないため、通称「10%テスト」をいつどのように実施するかが問題となります。
10%テストは、株式交換取引の公表前の60日以内および公表後30日以内の90日間の間に、任意の基準日を設定して行います。ただし、これらの期間内に株主名簿が確定しない場合には、公表日前120日まで遡って算定することができます。
SECへの登録の必要性については、法律の専門家を交え、入念に検討する必要があります。
EYでは、SEC登録に関して豊富な知識と経験を持つ専門家が、GAAPコンバージョン、前段(財務パート)作成、監査人対応、SECコメント対応等を通じて、Form F-4作成からSEC承認に至るまでの全プロセスを適切にサポートいたします。
米州(主にはカナダ)、欧州(主には英国)の提出企業の約2/3は、既SEC登録企業でした。また、Form F-4の提出によって、はじめてSEC登録企業となった企業のうちおおよそ半数の企業は、将来の資金調達や企業買収に備え、そのまま継続開示企業としてForm 20-Fを提出しています。
また、租税回避地に所在する企業以外は、一部の例外を除いてIFRSを採用していました。
2011年までは既にSECに登録している大手企業が規模の小さい企業を買収する、もしくは上場子会社を100%子会社化する際、Form F-4を提出するといったケースがよく見られました。しかし、近年は国内市場の縮小に対応するため、同規模の企業同士が対等の精神で統合するといったケースが増え、国内中心で事業活動を行っていたSEC未登録企業のForm F-4の提出が増えています(このため2015年以降にForm F-4を提出した会社はIFRSを採用しているケースが多く、また業種も多岐にわたります。なお、これらの企業はForm F-4提出によってSEC登録企業となったものの、Form 20-Fを一度提出した後、上場廃止しています。)
以下は、SECコメントの数が多い項目をリストアップしたものです。
SECに提出する財務諸表作成にあたっては、会計基準への準拠が厳格に求められます。
日本で一般的に受けられている会計実務でも、SECから質問を受ける可能性があることに留意が必要です。