EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2021年度EY 税務リスクと税務係争に関する調査によると、回答企業の半数以上(グローバル:53%、日本企業:45%)は、政府がCOVID-19パンデミックに対応するためにさまざまな経済政策を実施したことにより財政が圧迫されているため、今後3年間は世界各国で税務調査が強化されると予想しています。今回EYでは、2020年第4四半期に、60の国と地域と20の業界セクターにおける1,265名の税務・財務リーダーの見解を詳しく調査しました。これは今までの調査の中で最大のサンプル数となっています。
回答を寄せた各国企業の税務リーダーは、パンデミック関連の最大の税務リスク分野として、海外で足止めされている従業員、パンデミックに関連する経済的損失の扱い、租税還付の請求、さらには景気刺激策の影響を挙げました。また、パンデミックによって変化した移転価格に関連する税務リスクと、税務当局のデジタル変革の加速についても懸念しています。回答者は、日常的な業務活動の税務調査から、数十億米ドル相当の大規模な係争に至るまで、あらゆる状況において税務リスクを予想していると述べています。
その結果、企業グループ全体での税務リスクの管理とそれに伴う税務係争への対応が企業の課題として急速に浮上しています。回答者の3分の2(グローバル:66%、日本企業:73%)が税務リスクの管理と税務係争への対応は、すでに税務部門にとって以前より重要になっていると述べ、経営幹部が税務問題を管理し適切に対応することに、より多くの関心を示していることが明らかになっています。
地理的には、欧州を今後3年間で最も高い税務リスクが生じる地域と見なしており、それに続くのが南北アメリカとアジア太平洋です。また、業界によっても結果は異なり、世界平均53%(日本企業:45%)に対し、メディア・エンターテインメント(57%)、石油・ガス(59%)、電気通信・ライフサイエンス(68%)の各業界の企業が、徴税の強化を予想しています。
過去3回の隔年調査によると、移転価格は再び税務リスクの最大の原因と認識されています。回答者は、パンデミックに関連する利益の変動と税務当局が容認可能と考える移転価格ベンチマークとの乖離に伴い、2021年以降にはこの分野でより広範なリスクが生じる可能性があると述べています。
パンデミックにより生じた、経済的損失、租税還付の請求、さらには景気刺激策の影響などの税務上の課題が、さらなる税務係争の原因となることも予想されます。回答者のほぼ半数(グローバル:45%、日本企業:50%)が、渡航禁止と入国管理の変化の結果として、足止めされているビジネスマンや駐在員に関連する税金、恒久的施設、入国管理の問題に関するリスクを強調しています。ほぼ3分の1(グローバル:28%、日本企業:23%)が、COVID-19パンデミックにより実行された支援策または刺激策に関連する新たな分野の税務調査の可能性を認識しています。また、企業の税務リーダーは、今後3年間でより多くの税金を支払う結果となることを予想しています。グローバルでは、51%(日本企業:45%)が直接税の引き上げを予想しており、44%(日本企業:30%)が間接税の引き上げを予想しています。
パンデミック以前から、税務部門はかつてないスピードのデジタル化と法規制の変化を経験しており、回答者の4分の3(グローバル:75%、日本企業:70%)が、過去3年間に実施された自国の税制改正により、全体的な税務リスクレベルが上昇したと述べています。一方、ほぼ4分の3(グローバル:74%、日本企業:80%)が税務当局のデジタル化が、データ分析、機械学習、人工知能(AI)、国境を越えた情報共有を強化し、それに伴い税務リスクが高まったと述べています。回答者は、より多くの税務当局でデジタル化が進んでおり、税務当局が納税者自身よりも企業の税務ポジションについてより詳細に把握している可能性があると述べています。
税務リスクと税務係争を管理するため、回答者の半数(グローバル:50%、日本企業:43%)は、税務管理体制(Tax Control Framework:TCF)を整備していると述べています。しかし、租税政策の動向を世界規模で積極的に追跡しているのは47%(日本企業:56%)のみであり、データ分析を使用して定期的に自らの税務申告を検証しているのは37%(日本企業:41%)、定期的に模擬調査プログラムを実施しているのは28%(日本企業:36%)との結果となっています。また、40%(日本企業:33%)の企業は明確に定義された積極的な協調的コンプライアンス戦略を実施し、35%(日本企業:33%)の企業は明確に定義された事前確認(APA)戦略を実施すると述べています。
EYのグローバル バイス チェア(タックス)のケイト・バートンは、次のように述べています。
「COVID-19パンデミックは、企業の税務リスクを大幅に増加させました。税務リスクと税務係争対策において企業が優位性を保つためには、テクノロジーへの投資や税務リスクと税務係争管理に関するグローバルな一元的アプローチを導入するなどの対応策を今すぐ検討する必要があります。税務部門は、企業の長期的な価値創造の促進、ステークホルダーとの信頼関係の構築、そしてリスクの軽減において重要な役割を担っています。財政赤字の均衡を目指すため、各国の税務当局は中断している税務調査と訴訟を再開しています。一方、グローバル規模で起こっているデジタルトランスフォーメーション、また税務当局からの大量のデータの提出要請とコンプライアンス要件の厳格化は、企業が今後厳しい調査に伴うさまざまな税務リスクに直面する可能性を示唆しています。近い将来、金銭的なペナルティや風評被害などのリスクを回避するために、貴社における税務リスクと税務係争に対する現状のアプローチを見直すことは非常に重要です」
EY Japan タックスポリシーリーダーの関谷浩一は、次のように述べています。
「今回の調査により、世界のグローバル企業が、今後、税務調査がさらに厳しくなり、世界各国の税務当局との係争が増加することを強く懸念していることが明らかになりました。また、このような税務リスクの高まりに対応するために税務部門を強化する必要性を感じていることも明らかになりました。海外子会社における税務調査に本社主導で対応する日本企業はまだ多くないなど、税務リスクに対する日本企業の危機感はグローバルの平均と比較すると相対的に低く、過去の調査においても同様でした。これは、日本企業が保守的な税務ポジションを採用していたからではなく、世界各国の厳しい状況が日本親会社まで十分に報告されていなかったからだと思われます。一方、日本企業の73%が、経営幹部が以前よりも税務問題により強い関心を示していると回答しており、この割合はグローバルの66%を上回りました。今回の調査では、日本企業においてもグローバル税務ガバナンスの確立が喫緊の課題であるとの認識が急速に広がり、世界のグローバル企業以上に、税務部門強化の必要性を感じていることが明らかになりました」
2021年度EY 税務リスクと税務係争に関する調査の詳細については、下記サイトをご参照ください。
なお、EY Japanでは、本レポートに関する下記ウェブキャストを2021年5月18日に開催いたしますので、是非ご参加ください。
開催日時:2021年5月18日(火) 13:30-15:00
参加費用:無料
プログラム:
・激動する国際税務環境
・令和3年度EY 税務リスクと税務係争に関する調査
・グローバル税務ガバナンス強化のロードマップ
・海外税務調査対応ベストプラクティス
・各国の税務調査の動向
EYについて
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EYは、「Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)」をパーパスとしています。クライアント、人々、そして社会のために長期的価値を創出し、資本市場における信頼の構築に貢献します。
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EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。EYによる個人情報の取得・利用の方法や、データ保護に関する法令により個人情報の主体が有する権利については、ey.com/privacyをご確認ください。EYのメンバーファームは、現地の法令により禁止されている場合、法務サービスを提供することはありません。EYについて詳しくは、ey.com をご覧ください。
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