情報センサー

関連当事者の範囲

2022年10月31日 PDF

情報センサー2022年11月号 企業会計ナビダイジェスト

EY新日本有限責任監査法人 企業会計ナビチーム 公認会計士 滝鼻 怜奈

監査部門に所属し、主に食品メーカー等の会計監査の他、IPO支援業務に従事。また、法人ウェブサイト「企業会計ナビ」コーナーに掲載する会計情報コンテンツの執筆等を担当している。

当法人ウェブサイト内の「企業会計ナビ」より、「解説シリーズ『関連当事者の開示に関する会計基準の概要』第2回:関連当事者の範囲」を紹介します。

Ⅰ はじめに

会社と関連当事者との取引は、対等な立場で行われているとは限らず、会社の財政状態や経営成績に影響を及ぼすことがあります。そのため、その取引の実行にあたっては、取引の合理性を十分に検討し承認するための仕組みが整備されていることが重要と考えられます。

関連当事者の開示は、会社と関連当事者との取引や関連当事者の存在が財務諸表に与えている影響を財務諸表利用者が把握できるように、適切な情報を提供するためのものです。

財務諸表の注記事項としての関連当事者の開示については、「関連当事者の開示に関する会計基準」(以下、会計基準)及びその適用指針において、その内容が定められています。

Ⅱ 関連当事者の範囲

関連当事者とは、ある当事者が他の当事者を支配しているか、又は、他の当事者の財務上及び業務上の意思決定に対して重要な影響力を有している場合の当事者等をいい、次に掲げる者をいいます(会計基準第5項(3))。

① 親会社
② 子会社
③ 財務諸表作成会社と同一の親会社をもつ会社
④ 財務諸表作成会社が他の会社の関連会社である場合における当該他の会社(その他の関係会社)並びにその親会社及び子会社
⑤ 関連会社及び当該関連会社の子会社
⑥ 財務諸表作成会社の主要株主及びその近親者
⑦ 財務諸表作成会社の役員及びその近親者
⑧ 親会社の役員及びその近親者
⑨ 重要な子会社の役員及びその近親者
⑩ ⑥から⑨に掲げる者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社
⑪ 従業員のための企業年金(企業年金と会社との間で掛金の拠出以外の重要な取引を行う場合に限る)

関連当事者の範囲は<図1>で一覧できます。

図1

会社から見て、関連当事者とは、支配している者、されている者、または影響力を与えている者、受けている者のいずれかであるともいえます。

①から⑤及び⑩に掲げる“会社”には、会社だけでなく、指定法人、組合その他これらに準ずる事業体が含まれます。ここで使われている用語の定義と留意すべき事項は次のとおりです。

(1) 親会社

他の会社等の財務及び営業または事業の方針を決定する機関を支配している会社等をいい、子会社とは当該他の会社等をいいます(財務諸表等規則(以下、財規)第8条第3項)。同一の親会社をもつ会社とは、いわゆる兄弟会社のことです。

ここで、親会社及び子会社または子会社が、他の会社等の意思決定機関を支配している場合における当該他の会社等も、その親会社の子会社と見なすため(財規第8条3項)、子会社には、「子会社の子会社」、親会社には「親会社の親会社」も含まれることに留意が必要です。従って、例えば兄弟会社の子会社や、親会社の親会社の子会社なども、③として関連当事者の範囲に含まれます。

(2) 関連会社

会社等及び当該会社等の子会社が、出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、子会社以外の他の会社等の財務及び営業または事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該子会社以外の他の会社等をいいます(財規第8条第5項)。

(3) 主要株主

保有態様を勘案した上で、自己または他人の名義をもって総株主の議決権の10%以上を保有している株主をいいます(会計基準第5項(6))。

関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針(以下、適用指針)第3項では、次の場合は、その保有態様から、主要株主には該当しないとしています。

  • 信託業を営む者が信託財産として株式を保有している場合
  • 証券業を営む者が引受けまたは売出しを行う業務により株式を保有している場合
  • 証券金融会社がその業務として株式を保有している場合

(4) 役員

取締役、会計参与、監査役、執行役またはこれらに準ずる者をいいます(会計基準第5項(7))。これらに準ずる者として、例えば、相談役、顧問、執行役員その他これらに類する者であって、その会社内における地位や職務等からみて実質的に会社の経営に強い影響を及ぼしていると認められる者をいい、創業者等で役員を退任した者についても、役員の定義に該当するかどうかを実質的に判定します(適用指針第4項)。⑨において“重要な子会社の役員”の“重要な”は“役員”にかかります。すなわち、会社グループの事業運営に強い影響力を持つ者が子会社の役員にいる場合の当該役員が該当します。

(5) 近親者

⑥から⑨での近親者とは、二親等以内の親族、すなわち、配偶者、父母、兄弟、姉妹、祖父母、子、孫及び配偶者の父母、兄弟、姉妹、祖父母ならびに兄弟、姉妹、子、孫の配偶者をいいます(会計基準第5項(8))。⑩においては主要株主・役員の近親者のみが議決権の過半数を自己の計算において所有している会社も対象であることに留意が必要です。

(6) 従業員のための企業年金

従業員のための退職給付制度が、資金を提供している会社から強い影響を受けることなどを考慮して、国際的な会計基準で関連当事者として規定されていることと歩調を合わせ、関連当事者とされています(会計基準第23項)。

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