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トルコ、直近の投資動向について

2021年4月30日 PDF
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情報センサー2021年5月号 JBS

EY新日本有限責任監査法人 イスタンブール駐在員 公認会計士 恒田 範

2008年に入所後、金融機関への出向を挟み、小売業・製造業をはじめとする国内上場企業(日本基準)や多国籍企業(IFRS、米国会計基準)の会計監査に従事。18年9月よりEYトルコ イスタンブール事務所に現地日系企業担当として駐在し、トルコとルーマニアを担当。会計や税務にとどまらず、法務をはじめとするコンプライアンス支援・新規投資サポートや事業コンサルティングなど、幅広いサービスで日系企業の事業展開を支援している。

Ⅰ はじめに

近年堅調な経済成長を続けているトルコ。世界で19番目に大きな経済国であり、2003年から19年までの平均実質成長率は+4.9%と安定した経済成長をみせています。国際通貨基金(IMF※1)による直近の発表でも、その経済成長率は2020年は+1.2%、21年は+6.0%と報告されています。

欧州とアジアが交差する十字路として地理的優位性を有するこの国は、総計15億人と見込まれる欧州・独立国家共同体(CIS)・中東、北アフリカ(MENA)といった主要市場へのアクセスのしやすさを背景に、各国の製造・研究開発拠点としての機能のみならず、地域統括として主要市場へ進出するための拠点となっています。また、人口の半分は32歳未満となっており、19年までの過去10年間、年平均1.32%で成長する人口(19年:8,260万人)も国内市場として大変魅力があります。トルコに対する海外直接投資(FDI)は基本的に規制されておらず、自由な投資環境が整備されている点も特徴的です。

日本とトルコはアジアの両端に位置しますが、トルコは歴史的に親日国であり、日系企業にとってもビジネスがしやすい環境にあるといえます。20年、日系総合商社による大規模病院の建設完了・運営開始があり、コロナ禍ということも手伝って大きな注目を集め、日本とトルコ間の関係をより強固なものとしました。

Ⅱ トルコにおける直近の投資動向について

1. 2020年の投資動向の振り返り

トルコも他国と同様に20年の大部分がコロナ禍であったため、経済活動の縮小を余儀なくされました。しかし、トルコでは<図1>のとおり、過去3年間の平均に近い投資規模の水準を保っています。トルコ政府基金であるTürkiye Varlık Fonuによる投資取引の影響もありますが、日本でも有名な「トゥーンブラスト」を手がけるモバイルゲーム企業を米国ゲーム企業が18億米ドルで実施した買収が20年の海外直接投資(FDI)としては最大取引となり、大きな影響を与えました。一方、スタートアップ企業等に対する投資など中小規模の投資取引が増加している点も直近の傾向として特筆すべき点です。

図1 M&A取引金額と取引量の推移(米億ドルおよび件)

セクター別では、20年はIT・テレコム・金融関係の投資取引が活発でした。特に、ITセクターの中でもゲーム・Eコマース・ビッグデータ/AI・決済システムといったサブセクターへの関心が高かったといえます。

国別の投資金額を見ると、<図2>にあるように米国からの投資金額が大きい一方、日本からの投資金額も上位に位置していることが分かります。これは、日系大手製紙企業によるトルコ衛生用品企業の買収・日系大手ポンプ企業によるトルコポンプ企業の買収によるもので、海外展開強化の一環でトルコ国内市場のみならず欧州やMENA市場への販路拡大のためにトルコをその拠点とするという狙いがあるようです。

図2 国別投資金額

2. 2021年の展望

21年、トルコでは、新型コロナウイルス感染症流行の減速や金融政策の安定・高成長により経済指標が改善し、投資家からの信頼回復が見込まれています。継続的に新規投資誘致を積極的に取り組んできたこともあり、国際市場における低金利環境を背景とした高い資金の流動性も相まって、特にFDI増加の加速が期待されています。

  • 合計投資取引金額は100億米ドルを超えると予想されており、21年は20年よりもさらに投資活動がポジティブになると予想しています
  • 運輸・観光・小売セクターの急速な回復や、この分野の企業への関心の回復が期待されています。また、金融再編・インフラや不動産セクターでのポートフォリオの見直しによる資産の再整理が見込まれます
  • プライベートエクイティファンドからの関心の高まりを背景として、ITセクターのベンチャー企業への投資が引き続き増加する見込みです
  • 各セクター、国内市場や欧州・MENA等の主要市場への事業展開の推進を目的とした販売拠点・製造拠点への新規および追加投資は引き続きニーズが高いといえます

Ⅲ おわりに

トルコ国内を見渡すと、多くの日系企業とトルコ企業のジョイント・ベンチャーが存在します。直近では、日系大手総合電機メーカーとトルコ大手電機メーカーが海外展開において協業することを発表しました。ビジネスパートナーとしてのトルコにも注目が集まっているように思います。また、日本とトルコ間の経済連携協定(EPA)の合意が今後見込まれており、日本からの投資や輸出入取引に対して影響が生じる可能性があります。一方、EUとの関係においては、移民問題の解決、その先にEU加盟交渉の再開を期待したいと思います。

トルコ進出後の各日系企業は、制度が頻繁に改定され、かつ詳細なガイダンスが存在しないことによるコンプライアンスの困難さ、言葉や文化の違いによる企業内ガバナンスの困難さに悩まれているように思います。EYトルコでは、トルコの基本的な情報として「トルコの会計、監査、税務ガイド」※2を作成するとともに、日頃より在トルコ日系企業が直面する課題解決のサポートを行っています。上記以外にも各種ご相談に対応していますので、お気軽にお問い合わせください。

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