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日韓租税条約および韓国法人税法上の恒久的施設

2020年12月1日 PDF
カテゴリー JBS

情報センサー2020年12月号 JBS

EY Korea 公認会計士 朴 基亨

EY Korea 常務、税務本部のAssociate Partnerで、韓国に進出した日系企業に、国際租税を含むさまざまな税務業務を提供している。2017年7月から1年2カ月、EY税理士法人での派遣勤務を経験。

Ⅰ  はじめに

2008年の金融危機以後、多国籍企業の租税回避問題(Base Erosion and Profit Shifting:BEPS)の発生により、経済協力開発機構(OECD)会員国を中心に対応策を模索し、15年10月のG20首脳会議で15のBEPS Action Planに関する最終報告書が承認されました。
15のAction planのうちBEPS Action7は恒久的施設に関連するもので、17年6月にOECDはBEPS Action 7に関連する協議文書を発表し、同年11月にOECDモデル租税条約を改正しました。
このような国際的な動向を反映させて世界各国が自国の関連税法を改正しており、韓国も18年末に関連法人税法と所得税法を改正しました。本稿では、日系企業に影響を与え得る韓国の法人税法の恒久的施設に関連する改正事項と、韓国内で恒久的施設が成立する場合の事業者登録など、税法上の義務について解説します。

Ⅱ 改正された韓国の法人税法上の恒久的施設に関連する規定

1. 法令の改正内容(法人税法第94条)

韓国の法人税法上、恒久的施設が成立するかどうかに関連する内容は法人税法第94条に規定されており、当該規定は18年末に改正されました。改正された事項のうち、主要内容は次の通りです。

(1) 従属代理人の範囲を拡大(法人税法第94条第3項)

改正前の法人税法では、従属代理人の範囲を「国内にその外国法人のために契約を締結する権限を有し、その権限を反復的に行使する者」と規定していましたが、改正後、「国内で外国法人のために外国法人名義の契約などを締結する権限を有していなくても、契約を締結する過程で重要な役割(外国法人が契約の重要事項を変更せず契約を締結する場合に限る)を反復的に行使する者」も従属代理人の範囲に含めました。

(2) 従属代理人を判定するときに適用される契約の種類(法人税法第94条第3項)

改正前には契約の種類に関する明示された規定はありませんでしたが、改正後に従属代理人が権限を行使する契約を「外国法人名義の契約」「外国法人が所有する資産の所有権の移転、又は所有権又は使用権を有する資産の使用許諾のための契約」「外国法人の役務提供のための契約」と、その種類を明確にしました。

(3) 恒久的施設の除外規定を明確化(法人税法第94条第4項)

改正前には恒久的施設に含まれない場所を単純に並べているだけで準備的・補助的な性格についての規定はありませんでしたが、改正を通して挙げられた場所が準備的・補助的な性格の活動を行うために使用される場所である場合に限って除外可能である、と関連規定を明確にしました。

(4) 事業の細分化に対処するための規定を追加(法人税法第94条第5項)

一定の場所における活動を準備的・補助的な性格のものに変容させて恒久的施設に該当することを回避するために変法的に行われる「細分化活動」に対処するため、関連規定が新設されました。つまり、「特定活動場所」の活動がその外国法人又は特殊関係にある法人の既存の恒久的施設の事業活動と相互補完的である場合、又は複数の場所で行われるそれぞれの活動を結合した全体的な活動が準備的・補助的な性格の活動に該当しない場合は、恒久的施設として取り扱えるようにする法的根拠を設けました。

2. 日韓租税条約との関係

BEPS Action 7及び17年に改正されたOECDモデル租税条約上の恒久的施設の規定を反映させて、韓国だけでなく日本も自国の関連税法を改正しました。このような両国の税法改正効力を極大化するためには、日韓租税条約上の恒久的施設関連の内容もOECDモデル租税条約に則して改正されると予想されますが、租税条約の改正はまだ行われていません。

Ⅲ 韓国の国内事業場の設置申告及び事業者登録申請

韓国の法人税法上の恒久的施設に該当する国内事業場を設置しようとする外国法人の場合、下記の手続きに則して国内事業場の設置申告及び事業者登録申請をしなければなりません。

1. 国内事業場の設置申告及び事業者登録申請

外国法人が国内事業場を有することになったときは、その日から2カ月以内に国内事業場の設置申告書を作成して納税地の管轄税務署長に申告しなければなりません。また、国内事業場を設置して新規に事業を開始する当該事業の開始日から20日以内に事業者登録をしなければなりません(法人税法第109条第2項、第111条、付加価値税法施行令第11条)。
上記の法人税法の規定によると、付加価値税法に基づいて事業者登録をした場合、法人税法上の事業者登録及び法人設立申告をしたものと見なしており、実務上、付加価値税法に基づいた事業者登録手続きを行うことで法人税法による事業者登録手続き及び事業場設置申告を行ったものと見なしています。

2. 従属代理人を置いた外国法人の事業者登録申請

国内に人的・物的施設なしに従属代理人のみを置いた外国法人の事業者登録方法は、国内事業場を有する外国法人の事業者登録手続きと同一です。
ただし、従属代理人を置いた外国法人は国内に直接人的・物的施設がないということですので、事業者登録及び支店設置申告時に、事実上、記載又は添付が不可能な事項(ex.支店登記書類など)は求められません。

3. 韓国内の恒久的施設に該当する場合の納税義務

韓国内の恒久的施設を有することになった場合に関連して予想される税務上の申告・納税義務は次の通りです。

  • 駐在員の給与に対する源泉税申告・納付義務(毎月)及び駐在員別の所得税申告・納付義務(個人別の年末調整又は総合所得税の申告が必要)。ただし、暦年を基準に6カ月以下の期間滞在し、恒久的施設の費用として計上されない場合には申告・納付義務はありません(租税条約第15条第2項)。
  • 付加価値税の申告・納付義務(四半期別)
  • 法人税の申告・納付義務(事業年度別の中間予納及び期末確定申告)

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