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SSC/BPOにおける業務移行について

2018年9月28日 PDF
カテゴリー EY Consulting

情報センサー2018年10月号 EY Advisory

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング(株)
IAドメイン 于 鳳雷

中国生まれ。1997年に来日。大学院卒業後、外資系コンサルティング会社に入社。コンサルタントとして、SSC/BPOの初期構想・詳細設計・業務引継・本番運用に従事。2014年に当法人に入所し、18年1月にEYアドバイザリー・アンド・コンサルティング(株)に転籍。SSC/BPOのリスクアドバイザリーに従事。

Ⅰ はじめに

現在の日本では、経理、人事、総務、購買などのバックオフィス業務を自社にて集約するSSC(Shared Service Center)、外部委託するBPO(Business Process Outsourcing)が、国内の労働力減少の影響から非常に有効な手段として注目されています。導入においては、SSC/BPOの立ち上げの仕方や、どの業務を外部委託するかなどを検討する初期の「戦略立案・計画策定」フェーズや、具体的な新業務プロセス設計の検討を行う「設計(詳細設計)」フェーズがありますが、本稿では本番移行に進む直前の「立ち上げ(移行)」フェーズの重要性について解説します(<図1>参照)。SSC/BPO導入の一連のフェーズは、システム開発と同じく、上流から下流工程が存在し、上流工程でつまずくと、下流工程でそのリカバリーを行うのは非常に困難です。特に本番稼働直前の「立ち上げ(移行)」フェーズは、本番業務の品質やユーザーからの評価に直接つながるため、慎重な対応が必要となります。

図1 SSC/BPO導入における一般的なフェーズとタスク

Ⅱ SSC/BPOの立ち上げ(移行)

本フェーズで実施する主なタスクは、次の四つです。この四つのタスクを、本番稼働までの限られた期間の中で実施することになります。

① 業務引き継ぎ
業務移管元から移管先のオペレーターに対して、移管業務の引き継ぎをOJT形式で実施する。
② IT/環境準備
業務を遂行するセンターにおいて、ITやセンター居室のファシリティなどを準備する。
③ サービス管理準備
本番運用における主に品質面でのサービス管理の方法やサービス管理指標を設定する。
④ ガバナンス管理準備
本番運用時の関係者の役割分担や会議体、トラブル時の対応方法などを設定する。

Ⅲ 本番稼働の判定基準

前述のタスクについては、主観的かつ曖昧な形で実施すると、問題が発生した際、何が原因なのか、誰が対処すべきなのかのめどが立たず、現場の業務運営に大きな支障をきたすことになります。よって、各タスクが完全に終了したのかを判断するための客観的な判定基準が必要となります(<図2>参照)。

図2 移行時の判定基準(例)

図中の「判定軸」をさらに細分化した判定基準を設定します。例えば、「業務引き継ぎ」であれば、○件の処理のうち、○件が正確に処理できた、○名の担当者が○個のOJTを○日までに○個完了したなどのように、可能な限り定量的に設定することが肝要です。

Ⅳ 本番移行への評価判定の進め方

SSC/BPOの設立・運用には、経営企画部門、ユーザー部門、オペレーション部門(BPOの場合にはアウトソーサー)など、複数の関係者が介在することになります。前述の判定基準の運用について、次の点に留意することが必要となります。

  • 関係者全てが判定基準の内容に合意していること
  • 本番移行への評価判定には、関係者全てが参画し、関係者全ての合意・承認の下、本番移行に進むこと(稼働判定会議には議事録作成など、記録を取ることが望ましい)
  • 本番移行への評価判定の際に積み残し課題があった場合、誰がいつまでに本課題の対応するのかを決定すること

本番稼働判定の際、スケジュール通りのプロジェクト進行をしたいあまりに、関係者全員が安易に甘く評価をしてしまい、結果として、本番運用に大きな不具合を発生させてしまうケースも少なくありません。場合によっては、客観的かつ中立的な存在である外部業者を参画させることも効果的かと考えます。

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