地域統括会社設立検討の進め方
情報センサー2017年3月号 Trend watcher
EYトランザクション・アドバイザリー・サービス(株)
オペレーショナル・トランザクション・サービス 長谷健一
大手外資系・会計系コンサルティング会社を経て2014年より現職。欧州・アジアの地域統括会社の業務改革・設立検討、M&Aにおける企業統合(PMI)、ダイベスチャー(一部事業売却)、SCM・物流業務改革、グローバルERP導入プロジェクトマネジメントなど、製造業中心にコンサルティング経験多数。
Ⅰ はじめに
近年、国内市場が人口減少・高齢化に伴い量的縮小傾向で推移し、多くの日本企業が海外に成長機会を求めた結果、日本企業の海外市場比率※は拡大しており、海外現地法人数も、経済成長が見込まれるアジア新興国を中心に継続的に増加しています(<図1>参照)。
各国で異なる顧客のニーズ、および海外競合企業との厳しい競争環境に対応するには、各国を本社が一括管理してコントロールするのでは難しくなってきており、各国の状況に即した迅速な経営判断が求められています。
このような環境の中、域内の国々の事業を現地にて運営・管理する際の拠点として地域統括会社を設立し、これを活用した地域経営に移行する企業が増加しています。
Ⅱ 地域統括会社設立の目的と機能
1. 地域統括会社設立の主な目的
地域統括会社とは、東南アジア諸国連合(ASEAN)など域内の国々の現地法人、関係会社などのグループ会社に対し、地域に共通する事業環境を基に、統一的・総合的に経営管理するために設置した組織を言います。
地域統括会社設立の主な目的としては、日本本社から地域統括会社に権限を付与することで、域内の「経営統制・管理を強化」、域内グループ企業との「営業面での連携を強化」、「シェアードサービス(経営支援機能)を提供し(域内全体での)効率化・コスト削減」、域内の「意思決定を迅速化し市場ニーズに即した経営」の実現、などを挙げる企業が多く見られます(<図2>参照)。
なお、地域統括会社の設立に際して、各種税制インセンティブ適用、低税率国に地域統括会社を設立することによるグループ全体の税コスト抑制、資金・決済を一元管理し域内再投資、などを目的として検討することが多いのですが、それだけではうまくいかない場合が多いことに留意が必要です。
2. 地域統括会社の主な機能
前述の目的から、地域統括会社は、域内のグループ会社に対する「販売・マーケティング」「金融・財務・為替・経理(予算策定、モニタリングなど)」「経営企画(新規事業、再編、投資・M&Aの立案など)」の統括機能を有している会社が多くなっています(<図3>参照)。
Ⅲ 地域統括会社設立における主な検討項目
一般的に、地域統括会社設立を検討する際には<図4>の七つの項目を漏れなく検討することが求められます。
Ⅳ おわりに
地域統括会社の設立検討においては、地域戦略の策定、組織・業務・ガバナンス・人材の検討のみならず、各国の法規制、税制(関税や移転価格)などにおいて、各専門家と密に協議して検討を進めることが重要です。
※ 海外市場比率=(日本から海外への出荷+海外から日本以外への出荷)/総出荷