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 資産運用会社のクライアントはこれからどこに向かうのか

資産運用会社のクライアントはこれからどこに向かうのか


これまで以上に幅広く深い知見を活用することで、より包括的で、クライアントのニーズに合わせた有意義なエクスペリエンスを提供することが資産運用会社には求められています。


要点

  • 昨年は、富裕層が資産運用会社に期待することと、重視することが根本的に変化した。
  • 資産運用会社ではさらに強い目的意識を持って、サービスとエンゲージメントの融合の重要性に理解を深め、包括的に対応する必要がある。
  • このようなアプローチにより、クライアント・エクスペリエンスの向上、信頼の構築、および資産運用による長期的価値を示すことが可能となる。

資産運用会社にとって2020年は、実務面の混乱と内省を余儀なくされる状況が重なった結果、不安定な年となりました。2021年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる混乱も収まりつつあることから、クライアントが財務面から生活を見直し、自身にとって最も大切なことに再び重点を置くようになるでしょう。

21の国・地域の資産運用会社のクライアントを調査し、その結果を新たに2021年度のEYのGlobal Wealth Research Reportにまとめ、発表しました。このレポートを見ると、パンデミックがクライアントの考え方や世界観に非常に大きな影響を及ぼしていることが改めて分かります。

クライアントは、デジタルチャネルについての理解を深めているだけではありません。リスク回避志向を強め、人生の目的に沿った個人的な目標を達成することを今まで以上に重視し、金融資産の保全、分散、安全に力を入れるようになりました。

資産運用を任せる相手について考える中でクライアントが重視しているのは、有形無形のさまざまな要素の変化です。資産運用会社が長期的価値をもたらす新たな機会は、ウェルス・エクスペリエンスに関する以下の主な3つの要素にあることがEYの調査で明らかになりました。

  • クライアントが提供を受ける中核的サービス
  • クライアントの資産運用会社とのエンゲージメント
  • 目的に合った資産運用を担う資産運用会社の能力

1. サービス

今は資産運用会社にとって、新たなエコシステムモデルを構築して金融商品と金融サービスのネットワークを一本化し、リスク分散と回避の強化を図るチャンスです。資産運用会社のクライアントは、無料サービスの充実を期待する半面、自身のニーズに合った、より包括的なサービスに対しては別途料金を支払っても構わないと考えています。

オルタナティブ投資の活用拡大をはじめとした金融商品の多角化を求める声が強まっています。投資家の半数近くが、プライベートバンキング、保険、財産、投資にわたって資産管理・運用を一本化することを望んでいますが、そのうちの75%以上は、それをどこに委託するかをまだ決めていない状態です。これは、資産運用会社に非常に大きなチャンスをもたらす可能性があります。

資産運用会社にとってのチャンス
の投資家が資産管理・運用の一本化を望んでいる。

2. エンゲージメント

臨機応変に対応することの重要性がかつてないほど高まっています。今後ますます資産運用会社は、アドバイザーやデジタルツールに全面的に頼るわけにはいかなくなるでしょう。また、データ活用による優れた知見に基づいてデジタル・エクスペリエンスを収集・整理・要約・公開できれば、人間の関与が減ることによりクライアントごとのオーダーメードによるサービスの質が低下する、という予想を良い意味で裏切ることができるでしょう。データの共有が、クライアントのニーズに沿った成果を生み出すサービスの提供につながることを、資産運用会社はきちんと説明しなければなりません。クライアントが望んでいるのは、自らのニーズを中心に据えて進化する、柔軟なプラットフォームです。

 

3. 目的

クライアントは今、投資利益率だけを追求するのではなく、目的を持って投資をするようになってきました。そのため、クライアント独自のニーズを把握することがかつてないほど重要になっています。サステナビリティを目標とするクライアントは資産運用会社を変える可能性が2倍高く、同じ信念を持つ資産運用会社に魅力を感じています。従来型の投資に偏った運用を2024年まで続けると考えているクライアントは36%に留まりました。D&Iについては、サステナビリティの目標の1つであり、資産運用会社を選ぶ際の決め手となり、アドバイザーと強固な関係を築いていく中で重要な役割を果たすとの見方がクライアントの間で強まっています。

クライアントの投資ニーズが変化
持続可能な取り組みにあまり配慮していない、あるいはまったく配慮していない従来型の投資に偏った運用を2024年まで続けると考えている投資家の割合。

さらに前へと進む

サービスとエンゲージメントに重点を置く戦略をとりながら、目的を重視する姿勢を明確に打ち出すことが肝要です。このことが、クライアント・エクスペリエンスを向上させ、資産運用に長期的価値があることを示す上で鍵を握ります。

昨年は混乱が続く不安定な1年となり、クライアントの価値観が大きく変わりました。資産運用会社にとっての明るいニュースは、クライアントがより多くの個人データを共有することに前向きであり、関係の強化に関心を持ち、自身のニーズに合った、より包括的なサービスであれば、料金が高くても構わないと考えていることです。このような状況を背景に、自身のニーズに合っていること、分散、安全、教育、サステナビリティ、臨機応変な対応に対するクライアントの期待が高まっており、そうした要望への対応もまた大きな課題となっています。


EYのGlobal Wealth Research Reportをダウンロードする




サマリー

昨年起きた出来事が、富裕層の行動、期待、価値観に明らかな影響を及ぼしています。この変化に対応するため、資産運用会社はクライアントの考え方に対する理解を深め、それをサービスや対応に反映させる必要があります。そうすることにより、目的意識に基づいて信頼を構築し、さらに強固で長期に継続する関係を構築することができるはずです。


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