ライブサービスゲームの成功要因:開発動向と持続的エンゲージメント戦略

ライブサービスゲームの成功要因:開発動向と持続的エンゲージメント戦略


プレーヤーとの持続的な関係を築くことを目的としたゲームモデルであるライブサービスゲーム。その開発実態およびトレンドを紹介します。


要点

  • 多くのゲームスタジオがライブサービスゲームタイトルを制作中か、リリース予定
  • 一方、従来のゲーム開発モデルからの移行にはさまざまなハードルが存在


ライブサービスゲーム(Live Service Games)は、現代のゲーム業界において重要なゲームモデルであり、プレーヤーとの長期的な関係を築くことを前提としています。このモデルでは、定期的なコンテンツの更新やイベントの開催を通じて、プレーヤーの興味を継続的に維持し、彼らがゲームを長期間にわたって楽しみ続けることが期待されています。ライブサービスゲームの最大の特徴は、単なる1度の販売による収益に依存せず、ゲームがリリースされた後も持続的に収益を上げ続けることができる点にあります。20年ほど前に流行した月額課金型のMMO RPGの頃から、定期的な課金によってプレーヤーがサービスを利用し続ける仕組みは構築されており、その延長線上に現在のライブサービスゲームは存在します。近年では特に、『フォートナイト』や『エイペックスレジェンズ』といったタイトルがその成功例として広く知られており、これらのゲームはシーズンごとのイベント、新キャラクターの追加、バトルパスといった魅力的なコンテンツを提供することで、プレーヤーのエンゲージメントを高め続けています。

調査会社Newzooが発表した無料調査レポート※1では、ユーザーのプレー時間を「3年以内にリリースされた作品」「3年から5年以内にリリースされた作品」「リリースから6年以上たった作品」の3つに分類し、その割合を分析した結果が公開されています。この調査によれば、プレーヤーの半数以上がリリースから6年以上経過した作品に最も多くのプレー時間を費やしていることが明らかになりました。この結果は、長期間ゲームを楽しみ追加コンテンツやアップデートを求めるユーザーは多数存在し、長期的なエンゲージメントを育むことにはゲーム会社にとっての商機があることを示唆しています。

ライブサービスゲームの開発においては、バグの修正やゲームバランスの調整が日常的、あるいは週単位で行われることが理想的です。そのためには、開発チームの生産性やDevOpsの成熟度が非常に高いレベルに達している必要があります。具体的には、コンテナ化されたアーキテクチャの採用、テストの自動化、技術的負債の管理などのエンジニアリング上の工夫が求められるだけでなく、運営データに基づく迅速で的確な開発意思決定が不可欠です。

華々しい成功事例が存在する一方で、従来の売り切り型ゲームの開発手法からライブサービスモデルへ移行することは決して容易ではなく、多くの企業がその過程で困難に直面しています。全世界で500社以上のゲームスタジオを対象とした調査レポート※2によると、ライブサービスを提供するリーディング企業と業界平均の間には、開発チームの生産性において顕著な差が見られることが報告されています。また、数百人規模のチームが数年にわたって開発を進めた結果、リリースを断念せざるを得なかった事例も報じられており、この分野における高いハードルを改めて感じさせるものです。

ライブサービスを提供するリーディング企業と業界平均の間には開発チームの生産性に顕著な差異が見られる
出典:”Game Development Report 2023”, Rendered VC & Griffin Gaming Partnersを基にEY作成
リーディング企業とゲーム業界平均の間ではゲームアップデート・チーム生産性に関する各KPIに大きな差異が見られる
出典:”Game Development Report 2023”, Rendered VC & Griffin Gaming Partnersを基にEY作成

近年のリリースタイトルで『HELLDIVERS 2』が、Steam版の最大同時接続者数が8万人※3を達成し成功例として挙げられます。当該ゲームの成功をForbes社の記事※4では、(1)過剰な投資抑制(2)控えめな課金要素(3)中間価格帯の採用(4)ゲーム性とコミュニティ運営力と評しています。

ゲーム開発において、確実な成功法則を断言することは難しいですが、このようなトレンドを鑑みると、回避しなければならない「失敗の兆候」やベンチマークすべき事例は着実に増えてきているようです。開発・投資の意思決定の在り方、エンジニアリング、組織・人材ケイパビリティ、ユーザー接点など、多角的な視点で従来のゲーム開発の「当たり前」を問い直す時期に来ていると言えます。


【共同執筆者】

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
テクノロジー/メディア・エンターテインメント/テレコムセクター
四元 美緑 マネージャー
笹山 隼大 シニアコンサルタント

※所属・役職は記事公開当時のものです。


参照:

※1 ”The PC & Console Gaming Report 2024”, Newzoo, newzoo.com/resources/trend-reports/pc-console-gaming-report-2024(2024年8月23日アクセス)
※2 “Game Development Report 2023”, Rendered VC & Griffin Gaming Partners, griffingp.com/2023-game-development-research/(2024年8月23日アクセス)
※3 Game*Spark「『HELLDIVERS 2』Steam最大同時接続者記録は『God of War』以上!PSスタジオパブリッシュ首位に―マッチメイキングなどの改善ももちろん進行中」、www.gamespark.jp/article/2024/02/09/138339.html(2024年8月23日アクセス)
※4 “The Correct Lessons To Learn From Helldivers 2’s Live Service Success”, Forbes, forbes.com/sites/paultassi/2024/03/06/the-correct-lessons-to-learn-from-helldivers-2s-live-service-success/(2024年8月23日アクセス)


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サマリー 

ライブサービスゲームは、プレーヤーとの長期的な関係を築き、継続的な収益を目指すゲームモデルです。定期的なコンテンツ更新やバグ修正が重要で、成功には高度な技術力と運営力が求められます。しかし、多くの企業が開発プロセスで困難に直面しており、慎重な意思決定と適切な投資が成功の鍵となります。


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