EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
三部:サービスを作る時に最も重要なのは、ユーザーを中心に考えることです。ユーザーの思考を深く掘り下げることでニーズを理解し、アイデアに落とし込む。カスタマージャーニーを設計し、ユーザーにきちんと使われるシステムやアセットを作っていく。そのために私たちは、デザイン思考や人間中心設計を活用しています。
池本:特に、メタバースはまだ使ったことがない人が大半です。拒否反応が出ないよう、ユーザーの体験をどうデザインしていったらいいのか。ユーザーにサービスを使って遊んでもらい、そこでまた新しい文化が作られるにはどうすべきなのか。そういったことを考える際に、デザイン思考や人間中心設計は非常に有効です。
今回のプロジェクトでも鳥飼八幡宮が抱える文化の伝承や新しい神社の在り方という課題に対し、デザイン思考や人間中心設計でアプローチしながらユーザーとの高い親和性を実現するにはどうしたらいいかを考え、企画へと落とし込んでいきました。
三部:メタバースの成功例はまだ少ないのが現状です。本プロジェクトで「EYが成功事例を作り上げる」という意識は強く持っていましたね。また、一度触れただけで終わってしまうサービスではなく、ユーザーが長く楽しめるものにしたいという強い思いがありました。幸い、EYにはゲーム開発に精通したメンバーがいるため、その知見を活用しながら、ただ機能を提供するだけではない、全体の体験としてもつながるサービスを生み出せたのではないかと自負しています。
池本:「文化の継承や新しい神社の在り方を伝えるためにメタバース神社を作る」という強いコンセプトがずれないように、毎回ミーティングの始めに必ずコンセプトを確認するようにしていました。
三部:昨年12月末に現地で取材を行い、今年の1月にはポリゴンでイメージを制作。2月にはアイデアや機能を詰めて、3月から作り込みに着手しました。4月に最終調整、5月にはリリースと、半年でリリースできた理由は、ゲームなどの開発に比べると機能がミニマムに収まったことが1つ。そしてもう1つは、お客さまがただ待っているのではなく、チームとして一緒に考え、プロジェクトを進めてくださったことが大きいですね。
お客さまから伝えられたのは、最低限のルールのみ。逆に、お客さま側から斬新なアイデアを頂いたことで、私たちが持っていた“神社”に対する固定概念が取り払われました。
また、宮司から伺った宇宙創造の神様のお話がきっかけとなり、宇宙をキーワードとした世界観につながりました。世界観が決まったことにより、バラバラだったアイデアがひとつの軸に結びつき、スピードアップすることができました。
池本:幅広い層をターゲットにすると開発期間も長くなるのですが、今回はコンセプトに基づくお客さまの理解があり、ターゲットを若い世代に絞ることとなりました。ペルソナやカスタマージャーニーを細かく設計し、「メタバース神社」でこんな体験をしてほしいというゴールを明確化できたことが、短い期間でのリリースを可能にしたと考えています。
三部:鳥飼八幡宮をかなりリアルに再現しているクオリティの高さですね。実際に現地を訪れると、バーチャル上での再現度の高さを実感していただけると思います。
池本:例えば、手水舎(てみずしゃ)やおみくじのあたりが少し狭くて通りにくいところもあえてそのままに。現地に行った時に感じる印象が変わらないように作っています。境内に住み着いている猫も登場します。メタバースの中で、ぜひ猫に触れてみてください。
池本:「若い世代は参拝に行く習慣もなく、神社に行く機会は初詣ぐらい。現代において、メタバースでの鳥飼八幡宮が心のよりどころとなるような場所になれたら」という宮司のお話が印象に残っています。「メタバース神社」でのさまざまな体験を通して、ユーザーそれぞれに合った神社との関わり方を見つけていただけたらと願っています。
三部:鳥飼八幡宮はとても個性的な神社です。その独特の雰囲気や空気感をまずはメタバース上で体験し、そしてそれをきっかけに、現地に足を運んでもらえたらうれしいですね。
三部:EYデジタルハブ福岡で掲げているような、地域を活性化していくというミッションに大きくつながるものだと考えています。本プロジェクトによって、神社とその周りにいる人々との新たな関係に貢献していけたらいいですね。グローバルでの反響も大きいため、日本の文化を世界に広げていくきっかけにできたらとも考えています。
池本:物理的な距離を取り払える「メタバース神社」は、健康上の理由や遠方に住んでいて直接訪れることが難しい方でも神社に参拝ができる、とても画期的なものです。このような新しい形のコミュニケーションが、より良い社会の実現につながっていくと信じています。
三部:コンサルティングにおいて重要なファクターであるビジネスと、それを形にするテクノロジー。そしてユーザーに寄り添ったデザイン。この三位一体のバランスこそがEYの強みです。多様なメンバーで構成されたクライアントテクノロジーハブの特性が、本プロジェクトで存分に生かせたと考えています。
池本:メタバースの開発は機能重視のシステム開発とはまったく異なり、要件定義だけではうまくいかないことがたくさんあります。きちんと作るだけではなく、ユーザーがどのような体験を望んでいるのかを考えなければなりません。
今回はまずビジネス設計として文化の継承や新しい神社の在り方を掲げた上で、テクノロジーの中で最適なメタバース、またそのプラットフォームを選択。そこからデザイン思考でユーザーに楽しんでもらえるものを設計していきましたが、それはやはり三位一体の組織力があるEYだからこそできたことだと思っています。
三部:まず、テクノロジーありきで動くのは危険だと思います。何を提供しようとしているのかが曖昧で目的が定まっていないと、せっかくサービスを作ってもユーザーが使わなくなってしまう可能性が高いからです。
池本:何をユーザーに体験してもらいたいのかが定まっていない段階で、とりあえずメタバースを作ろうとしても、誰も来ない公園のようなものになってしまいます。メタバースで何をしたいのか。ユーザーに何を届けたいのか。それを決めることが何より重要です。
三部:鳥飼八幡宮の本プロジェクトは、文化の継承や新しい世代に向けた神社の在り方を見直すという課題があり、導入の目的が明確でした。目的とユーザーとの親和性を考え、きちんと設計して初めて長期的にメタバースが活用されるのではないでしょうか。
EY JapanのCTHは、やりたいことが明確なお客さまはもちろんのこと、「何か新しい顧客体験を提供したいという思いはあるが、何をすればいいのかわからない」と悩んでいらっしゃるお客さまにも寄り添い、課題や目的を明確にすることからお手伝いすること可能です。ぜひ、少しでもご興味をお持ち方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。
ニュースリリース
EY Japan、鳥飼八幡宮メタバース神社を構築し、新たな取り組みを支援
EY Japan(東京都千代田区、チェアパーソン 兼 CEO 貴田 守亮)は、鳥飼八幡宮(福岡県福岡市中央区)のメタバース神社が完成し公開したことを発表します。
ニュースリリース
EY Japan、鳥飼八幡宮のメタバース構築を開始
EY Japan(東京都千代田区、チェアパーソン 兼 CEO 貴田 守亮)は、鳥飼八幡宮(福岡県福岡市中央区)のメタバース神社構築を支援することを発表します。完成は2023年5月を予定しています。
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なぜ、鳥飼八幡宮はEYと共に、メタバース神社を構築したのか…?
地域との新しい関わり方にチャレンジしている鳥飼八幡宮(福岡県福岡市)とともに、メタバースプロジェクトを始動。鳥飼八幡宮の山内圭司宮司に、これからの「神社のあり方」や「日本文化の伝承とテクノロジーの融合」などについてお話を伺いました。
「EYデジタルハブ 福岡」は、IT産業が活発な福岡から日本のDXをけん引するデジタル・ケイパビリティに特化した組織です。デジタル各領域のエキスパートが、貴社のDX案件の構想から実現までを支援します。
1,800年もの歴史を持つ福岡・鳥飼八幡宮とともに、時代に合った神社の最適化を目指して、EY Japanがメタバース神社を企画・構築しました。デザイン思考に基づいたユーザー中心の企画、ビジネス、テクノロジー、デザインの三位一体というEYの組織力により、新しい顧客体験を生み出しました。