エクゼクティブサマリー
2021年12月22日、欧州委員会は、多国籍企業グループに対するグローバルミニマム課税を確保するためのルールを定めた指令の法案(以下、「指令草案」)を公表しました。提案されたルールは、2021年10月8日の税源浸食と利益移転(BEPS)に関する包摂的枠組みによる合意(10月声明)1とおおむね一致しており、2021年12月20日に公表されたモデルルール2を忠実に踏襲しています。
10月声明において、包摂的枠組みは、共通のアプローチとしてグローバルミニマム課税ルールを発表しました。つまり、各国・地域はミニマム課税アプローチを導入する場合、モデルルールに従うことになります。欧州委員会は現在、指令草案を提示することにより、欧州連合(EU)加盟国27カ国すべてに協調的な導入を図ることを提案しています。
指令草案は、所得合算ルール(IIR)と軽課税支払ルール(UTPR)を含むモデルルール(総称して「GloBEルール」と呼ばれる)を全27加盟国間で一貫して実施することを目的としています。しかし、基本的自由の遵守を確保するために、その範囲を大規模な純国内グループにも広げています。さらに、指令草案は、IIRを適用する加盟国が、外国子会社だけでなく、当該加盟国に居住するすべての構成事業体に対しても、合意されたミニマム税率で追加課税を課すオプションを使用しています。
合意された第2の柱の設計には、二国間租税条約を通じて実施される予定の課税対象ルール(STTR)も含まれており、これは指令草案には含まれていません。しかし、欧州委員会は注釈において、グローバルミニマム課税に関する合意が利子・ロイヤルティ指令(IRD)の改正に道を開くと述べています。一方、欧州委員会は、当初検討されていた租税回避防止指令における外国子会社合算税制(CFC税制)の改正を提案しない予定です。
法案は、今後、最終的な合意に向けて加盟国間の交渉段階に移行します。EUでは、租税に関する指令の採択には27の加盟国すべての全会一致が必要です。欧州委員会は、加盟国が2022年12月31日までに指令を国内法化し、2023年1月1日からルールが施行されるようにすることを提案していますが、UTPRについては例外として、2024年1月1日まで適用が延期されることになります。
本アラートの詳細は、2021年12月22日付EY Global Tax Alert 「European Commission proposes tax Directive for implementing BEPS 2.0 Pillar Two Model Rules in the EU」(英語のみ)をご覧ください。
巻末注
- 2021年10月11日付EY Global Tax Alert「OECD releases statement updating July conceptual agreement on BEPS 2.0 project」、2021年10月14日付EY Japan税務アラート「OECD、BEPS 2.0プロジェクトの大枠合意の更新に関する声明を発表」をご参照ください。
- 2021年12月20日付EY Global Tax Alert「OECD releases Model Rules on the Pillar Two Global Minimum Tax: First impressions」、2021年12月23日付EY Japan税務アラート「OECD、BEPS 2.0 Pillar 2 GloBEモデルルールを発表」をご参照ください。