EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYは、女性アスリートのビジネスへの挑戦をサポートしています。本記事では、2022年4月にEY Japan WABNアカデミーを修了した第1期生2人に、受講によってビジネスへの考え方やスキルがどう変化したかを語っていただきました。
要点
WABN(Women Athletes Business Network)アカデミーは、「優れた女性アスリートはビジネスリーダーとしても有望な資質を持つ」という独自調査に基づき、EY Japanがビジネスの世界での活躍を意識する女性アスリートにビジネススキルやリーダーシップを身に付けてもらうための支援活動です。
起業はもちろん、一会社員として新たな企画をスタートする際や、NPO法人の立ち上げなどにも役立つ7カ月のプログラムで、オリンピックやパラリンピックに出場した選手や、元日本代表選手を中心に10人が参加し、オンライン中心で学んでいただいています。
ここでは、2022年4月に修了した第1期生の浦田理恵さん(ゴールボールパラリンピック元日本代表)と、中村亜実さん(アイスホッケーオリンピック元日本代表)に、ビジネススキルがどう変わったかを語っていただきます。
「小学校教師になりたい」という夢を描いていた浦田理恵さん。教員免許取得を目指す学生生活は順調でしたが、卒業直前、網膜色素変性症を発症し、両眼を失明しました。
その後、専門学校で鍼灸(しんきゅう)師とマッサージ指圧師の国家資格を取得。在学中にゴールボールに出会い、08年北京大会よりパラリンピックに4大会出場。12年ロンドン大会で金メダル、21年東京大会で銅メダルを獲得。21年末に17年間の競技生活に終止符を打ちました。
「04年にゴールボールに出会い、企業でマッサージ師をしながら、金メダルを獲るんだ!と世界の頂点を目指していました。
でも、北京パラリンピックで8カ国中7位に終わったとき、悔しくて、パラアスリートを支援する“シーズアスリート”という組織に移りました。企業さまに会員になっていただき、パラアスリートを支援してもらうための組織です。
ここで選手として活動する一方、シーズアスリート内のマッサージルームで働きながら、研修会や講演を行い、ご支援いただく企業さまを増やすための活動もしていました。
ただ当時は、与えられた仕事を最低限やっていただけ。選手時代は、競技に集中したいから、セカンドキャリアを考える余裕はなかったんです。
現役引退後は、もっとビジネススキルを身に付け、今後は後輩たちを育成するためにも、新たに何かを生み出す力が欲しかった。それが、WABN受講のきっかけでした」
一方、中村亜実さんはアイスホッケーが盛んな青森県八戸市出身。中学3年の時、「もっと強くなりたい」と願い、単身上京し、強豪コクドレディース(現西武)に移籍しました。26歳で迎えた14年ソチ大会で五輪に初出場。18年平昌大会で2度目の五輪出場を果たしたのち、現役を引退しました。
「現役中、私は2度、転職を経験しました。手に職をつけたくて、大学では、小学校教諭免許と幼稚園教諭免許を取りました。同時に、卒業後もアイスホッケーを続けたくて、選手活動を認めてもらえる私立幼稚園に就職。年長クラスを2年間担任しました。
でも、オリンピックに出場するため、練習環境を充実させたい気持ちが強くなり、最初の転職をしました。銀座の焼き鳥屋さんで仕込みの仕事などを担当していました。
でも、ここでは金銭面が大変で。契約社員だったので、海外遠征に出てしまうと、お給料が5万円という月も。好きな職場でしたが、ソチ五輪直前の13年、再び転職し、現在のバンダイナムコグループとのご縁をいただきました」(中村)
中村さんもまた、浦田さん同様、「現役中、セカンドキャリアは考えにくかった」と語っています。
「ソチ五輪後は、夢をかなえたし、選手選考のし烈さも苦しくて引退を考えました。でも、選手を続けたら、もっと充実したアイスホッケーができるんじゃないかという未練があり、キャリア面で漠然とした不安も抱いていました。そのため、次の4年間、もう1回選手を頑張って、同時にセカンドキャリアを考えていこうと決めました。
そこで将来について人事部の方に相談をしたのですが、当時は『給与計算できる?』と聞かれて『できません』、『パソコンできる?』と聞かれて『できません』という状態(笑)。
幸い、引退後、その人事部に転籍させてもらいましたが、スポーツしかやってこなかった自分に自信がない状態が続き、成長したい!アスリートとしての経験を生かしたい!との思いで、WABNアカデミーを受講しました」(中村)
実は、中村さんのような人にこそ、「WABNアカデミーを受講してほしい」とEY JapanのWABNリーダー、佐々木ジャネルは考えています。
「中村さんのように現役中、ビジネス経験が少ないため、引退後、優れた選手としてのキャリアまで否定し、自信のない人が多いのです。でも本来、アスリート、とりわけ女性アスリートは、目標に向かって努力し達成する能力が高い人たち。浦田さんと中村さんのお話からも、現役時代、2人がいかに競技へ熱い情熱を傾けてきたか、並々ならぬ努力で目的を達成してきたかが分かるでしょう。新しい技術や戦略を身に付けるため、多くの挑戦もしてきたはずです。
こういったアスリートだからこその力は、ビジネスで成功するために欠かせない能力でもあります。元アスリートが目標を持つと、ビジネスにおいても成果を出すのが早いというのが私の印象です。
そこでWABNアカデミーは、ビジネス面でも能力の高い元アスリートたちの起業家精神を呼び起こし、ビジネススキルを上げるためのお手伝いをしています」
こうした理念のもと、WABNアカデミーでは、下記プログラムを実施。①オンラインでのセッション、②メンターとのメンタリング、③グループワークを3本柱としています。同様のプログラムを修了した中村さんは次のように7カ月間を振り返っています。
「まず“あなたのパーパス(存在意義)とは?”というセッションを通じ、自分の強みを知ることができたことがよかったです。自分には、好奇心の強さや、物事を実行していく推進力、チームを引っ張っていく力があるんだ、と。
また、その強みはアスリートだったからこそだということを、WABNで出会ったアスリートたちを通じ実感できました」
こうして自分を棚卸しできた中村さんは、起業するためのプロセスをグループワークで体験することで、アスリートだった経験を生かしたビジネスを展開したいという思いが湧き上がってきたと言います。
「まだ事業化していませんが、現役アスリートがセカンドキャリアを描くためのワークショップをWABNの仲間とスタートしています。引退後もアスリートとしての経験を生かしながら、輝き続けられる道があることを示したいと思っています」
また、浦田さんは、WABNアカデミーを修了後、講演の依頼が増えたそうです。
「事業を展開するには、限られた時間内で相手に求めていることを要約して伝える必要があることをセッションで学び、これまで講演で言いたいことばかり話していた自分を反省しました。企業さまへの営業活動にも役立っています」
さらに、WABN修了後、自身が温めてきた夢を実現する手応えも出てきたと言います。
「“生涯を通じて子どもたちを笑顔に、社会を元気に”が私のテーマ。親がいない子どもへの学習機会の提供や、子ども食堂の運営などをしたいという夢を持っています。WABN修了後は、夢に近づけた感じがします。以前は、どう実現すればいいか、まったく道筋が分かりませんでしたが、今はどう事業計画書を書き、どう資金を回せばいいかなどが見えてきました。セッション、メンタリング、グループワークと、WABNでの学びはどれも絡み合っていて、私に前に進む力を与えてくれました」
また、たくましくセカンドキャリアを歩んでいる2人に、佐々木ジャネルはメッセージを送りました。
「中村さんは、リーダーシップの面で大きく成長。ポジティブな浦田さんは、いつもWABNに居心地のいい空間を作ってくれました。2人ともアスリートとして、一心不乱に物事を進めていく力、ビジネスリーダーになるための潜在能力が高いと思うので、将来、起業家として社会に大きなインパクトを与えてほしいと思います」
現在、2024年秋から始まる第4期のWABNアカデミーを企画中。ビジネス界でも輝くべく、ビジネススキルの向上を求めている方、プログラムにご関心のある方は、ぜひお問い合わせください。
お問い合わせ先:EY Japan WABN事務局
「WABNアカデミー」は、女性アスリートのビジネスへの挑戦をサポートするEY Japanの支援活動です。パラリンピック元日本代表の浦田理恵さんと、オリンピック元日本代表の中村亜実さんが、「WABNアカデミー」の7カ月間のプログラムを通じ、夢を実現するためのビジネススキルをどう身に付けたかを語っています。