EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 中澤 範之
Question
2022年3月期決算に係る有価証券報告書において、実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」(以下「実務対応報告第42号」という。)の早期適用の状況を知りたい。
Answer
【調査範囲】
- 調査日:2022年8月
- 調査対象期間:2022年3月31日
- 調査対象書類:有価証券報告書
- 調査対象会社:2022年4月1日現在のJPX400に採用されている会社のうち、以下の条件に該当する198社
① 3月31日決算
② 2022年6月30日までに有価証券報告書を提出している
③ 日本基準を採用している
【調査結果】
(1) 早期適用事例
調査委対象会社(198社、このうち連結納税制度を適用している旨の注記をしている会社77社)を対象として、税効果会計に関する会計処理及び開示に関する実務対応報告第42号を早期適用している事例を調査した。調査結果は<図表1>のとおりである。
<図表1> 実務対応報告第42号を適用した会社数
2023年3月期における制度変更の内容 | 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項に注記 | 連結追加情報に注記 | 連結税効果会計関係に注記 | 合計 |
連結納税制度からグループ通算制度へ移行 | 1 | - | 1 | 2 |
連結納税制度から単体納税制度へ移行(※1) | 1 | - | 1 | 2 |
単体納税制度からグループ通算制度へ移行 | - | 2 | 4 | 6 |
合計(※2) | 2 | 2 | 6 | 10 |
(※1)単体納税制度への移行は早期適用とは異なり、グループ通算制度を適用しない旨の届出書を提出した日の属する会計期間から実務対応報告第42号が適用される
(※2)複数の項目を記載している会社は、それぞれ1社としてカウントしている
(2) 未適用の会計基準等に関する注記事例
調査委対象会社(198社、このうち連結納税制度を適用している旨の注記をしている会社77社)を対象として、実務対応報告第42号を未適用の会計基準等に関する注記の記載状況を調査した。調査結果は<図表2>のとおりである。
<図表2>実務対応報告第42号に関する未適用の会計基準等に関する注記
適用予定日 | 影響の記載内容 | 会社数 |
2023年3月期の期首又は2022年4月1日開始する事業年度の期首 | 評価中である旨 | 6 |
軽微である旨 | 1 | |
合計 | 7 |
実務対応報告第42号に関する未適用の会計基準等に関する注記は、(1)概要(2)適用予定日(3)当該会計基準等の適用による影響が記載されており、(1)概要について「2020年3月27日に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第8号)において、連結納税制度を見直しグループ通算制度へ移行することとされたことを受け、グループ通算制度を適用する場合における法人税及び地方法人税並びに税効果会計の会計処理及び開示の取扱いを明らかにすることを目的として企業会計基準委員会から公表されたものである」旨の記載が5社であった。
(旬刊経理情報(中央経済社)2022年9月20日号 No.1655「2022年3月期「有報」分析」を一部修正)
この記事に関連するテーマ別一覧
2022年3月期 有報開示事例分析
- 第1回:総会前提出 (2022.12.12)
- 第2回:サステナビリティ情報①(TCFD) (2022.12.12)
- 第3回:サステナビリティ情報②(人的資本・多様性、マテリアリティ) (2022.12.12)
- 第4回:早期適用した会計基準(改正時価算定適用指針) (2022.12.12)
- 第5回:早期適用した会計基準(グループ通算制度) (2022.12.12)
- 第6回:実務対応報告41号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」の開示 (2022.12.12)
- 第7回:グループ通算制度への移行に係る開示分析 (2022.12.12)
- 第8回:会計上の見積りに関する注記の2年目開示分析①(記載項目数分析) (2022.12.12)
- 第9回:会計上の見積りに関する注記の2年目開示分析②(業種別・記載内容分析) (2022.12.12)
- 第10回:時価算定会計基準 (2022.12.12)