その他 親子会社の決算日の統一

2013年12月13日 PDF
カテゴリー 解説シリーズ

公認会計士 鯵坂雄二郎
公認会計士 江村羊奈子

1. はじめに

日本の会計基準では、子会社の決算日と連結決算日の差異が3カ月を超えない場合には、子会社の正規の決算を基礎に連結決算を行うことが認められています(連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)注4)。そのため、12月決算の子会社の財務諸表を用いて3月決算の連結財務諸表を作成している事例が多く見られます。

一方、近年では次のような理由から「親子会社の決算日統一」を行う事例が見られるようになりました。

  • 将来のIFRS適用へ備える
  • 予算編成等において経営の効率化を図る
  • 投資家等のステイクホルダーへ他社との比較利便性等を提供する
  • 期ズレをなくし、より適切な連結業績を把握する

そこで本稿では、親子会社の決算日の統一にあたっての実務上の留意点を、解説します。

2. 決算日の統一の方法

親子会社の決算日を統一するには、子会社の決算日を変更する方法、または親会社の決算日を変更する方法、の両方が考えられます。
例えば親会社が3月決算である場合には、12月決算の子会社の決算日を3月に変更する方法、または親会社の決算日を12月に変更する方法が考えられます。

今までに親子会社の決算日の変更に伴う会計処理等を明確に定めた会計基準等はありませんが、平成23年4月1日以後開始する事業年度から「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」が定められ過年度遡及の考えが導入されたことに合わせ、日本公認会計士協会から「比較情報の取扱いに関する研究報告(中間報告)」(会計制度委員会研究報告第14号、平成24年5月15日)(以下、「本研究報告」という。)が公表され、親子会社の決算日の変更に伴う会計処理等が示されました(本研究報告Ⅱ5、Ⅱ6)。
本研究報告は、日本公認会計士協会会員の業務の「参考」に資することを目的として公表されているため実務を拘束するものではありませんが、実際の現場実務では考慮されていくものと考えられるため、本稿ではこの研究報告も踏まえた解説を行います。

3. 会計方針の変更への該当有無等

我が国において、親会社又は子会社の「決算日」の変更は「会計方針」の変更には該当しないと考えられています(本研究報告Ⅱ5A(2))。

【四半期決算での対応】
上述のとおり決算日の変更は会計方針の変更に該当しません。しかし、四半期報告制度や次年度以降の比較情報の有用性等を考慮すると、会計方針の変更の取扱いに準じて、親会社の第1四半期決算から四半期連結決算日の統一を行うことが適当と考えられるものとされています。
なお、いわゆる第4四半期(最後の四半期)において決算日の統一を行うやむを得ない場合もあると考えられますが、この場合には、損益計算書を通して調整する方法のみが採用でき、実施した会計処理の概要のほか、その理由も記載することが適当と考えられています(本研究報告Ⅱ6A(1))。

4. 比較情報の取扱い

上記のとおり決算日の変更は会計方針の変更ではないので、遡及適用はされず、比較情報については、前連結会計年度に係る連結財務諸表を記載することになると考えられます(本研究報告Ⅱ6A(2))。

5. 子会社の決算日を変更する場合(前提:親会社3月決算、子会社12月決算)

12月決算の子会社の決算日を変更して平成27年3月期から決算日を統一するとし、15か月の事業年度として決算を行う場合、親会社の月数は12ヶ月(平成26年4月~平成27年3月)となり、子会社の月数は15ヶ月(平成26年1月~平成27年3月)となります。

親会社と子会社の連結対象月数の差異となる、子会社の平成26年1月~3月の3ヶ月分の損益の取り込み方法については、次のいずれかを採用することになると考えられます。なお、いずれの方法でも子会社の15ヶ月分を連結財務諸表に取り込むこととなります。

①利益剰余金で調整する方法

子会社の平成26年1月~平成26年3月の3ヶ月分の損益を、連結株主資本等変動計算書に利益剰余金の増減として取り込み(「決算期の変更に伴う子会社剰余金の増加高」等の科目を使用)、平成26年4月~平成27年3月の12ヶ月分の損益のみ、連結損益計算書に損益として取り込みます。

また、この場合、第1四半期決算では次のようになると考えられます。
親会社:平成26年4月~平成26年6月の3ヶ月分の損益を連結損益計算書に計上
子会社:平成26年1月~平成26年3月の3ヶ月分の損益を、利益剰余金の増減として取り込み、平成26年4月~平成26年6月の3ヶ月分の損益を連結損益計算書に計上

②損益計算書を通して調整する方法

子会社の平成26年1月~平成27年3月の15ヶ月分の損益を、連結損益計算書に損益として取り込みます。

また、この場合、第1四半期決算では次のようになると考えられます。
親会社:平成26年4月~平成26年6月の3ヶ月分の損益を連結損益計算書に計上
子会社:平成26年1月~平成26年6月の6ヶ月分の損益を連結損益計算書に計上

子会社の決算日を変更する場合(前提:親会社3月決算、子会社12月決算)

なお、いずれの方法を採用する場合においても、当該連結子会社の事業年度の月数と連結会計年度の月数とが異なることになるので、下記を連結財務諸表に注記します(連結財務諸表規則ガイドライン3-3参照)。

  • その旨
  • その内容

また、重要性が乏しい場合を除き、実施した会計処理の概要等について、次のような内容を含めて注記することが適当と考えられています(本研究報告Ⅱ6A(3)①)。

ア. 利益剰余金で調整する方法を採用する場合

  • 利益剰余金で調整する方法を採用している旨
  • 子会社の平成26年1月から平成26年3月までの間に発生した特別な事象について、利害関係人が適正な判断を行うために必要と認められる事項

イ. 損益計算書を通して調整する方法を採用する場合

  • 損益計算書を通して調整する方法を採用している旨
  • 子会社の平成26年1月から平成26年3月までの売上高、営業損益、経常損益、税引前当期純損益などの損益に関する情報
  • 子会社の平成26年1月から平成26年3月までのその他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益などのその他の包括利益に関する情報

6. 親会社の決算日を変更する場合(前提:親会社3月決算、子会社12月決算)

3月決算の親会社の決算日を変更して平成26年12月期から決算日を統一するとした場合、親会社の月数は9ヶ月(平成26年4月~平成26年12月)となり、子会社の月数は12ヶ月(平成26年1月~平成26年12月)となります。 なお、この場合、連結決算日を変更することになるので下記を連結財務諸表に注記します。

  • その旨
  • 変更の理由
  • 当該変更に伴う連結会計年度の期間

親会社と子会社の連結対象月数の差異となる、子会社の平成26年1月~3月の3ヶ月分の損益については、次のいずれかの方法を採用することになると考えられます。

①利益剰余金で調整する方法

子会社の平成26年1月~平成26年3月の3ヶ月分の損益を、連結株主資本等変動計算書に利益剰余金の増減として取り込み、親会社及び同期間の子会社の平成26年4月~平成26年12月の9ヶ月分の損益を、連結損益計算書に損益として取り込みます。

また、この場合、第1四半期決算では次のようになると考えられます。
親会社:平成26年4月~平成26年6月の3ヶ月分の損益を連結損益計算書に計上
子会社:平成26年1月~平成26年3月の3ヶ月分の損益を利益剰余金の増減として取り込み、平成26年4月~平成26年6月の3ヶ月分の損益を連結損益計算書に計上

②損益計算書を通して調整する方法

子会社については平成26年1月~平成26年12月の12ヶ月分の損益を、親会社については平成26年4月~平成26年12月までの9カ月分の損益を、連結損益計算書に損益として取り込みます。

また、この場合、第1四半期決算では次のようになると考えられます。
親会社:平成26年4月~平成26年6月の3ヶ月分の損益を連結損益計算書に計上
子会社:平成26年1月~平成26年6月の6ヶ月分の損益を連結損益計算書に計上

親会社の決算日を変更する場合(前提:親会社3月決算、子会社12月決算)

なお、いずれの方法を採用する場合においても、当該連結子会社の事業年度の月数と連結会計年度の月数とが異なることになるので、下記を連結財務諸表に注記します。

  • その旨
  • その内容

また、重要性が乏しい場合を除き、実施した会計処理の概要等について、子会社の決算日を変更する場合と同様の注記をすることが適当と考えられています(本研究報告Ⅱ6A(3)②。具体的な内容は上記「5.子会社の決算日を変更する場合」の「本研究報告Ⅱ6A(3)①」に関する記載を参照)。

7. 決算日の変更方法の選択

決算日の統一にあたって、「子会社の決算日を変更する方法」、「親会社の決算日を変更する方法」のいずれの変更方法を採用するかは、次のような観点から検討することになると考えられます。

(例)

  • 各国の法律・税制
  • 人的リソース
  • システム
  • 主要な同業他社の決算日

なお、いずれの変更方法にも共通する課題として、決算処理にあたっての従来の期ズレのメリットが無くなるため、「決算早期化」という課題が挙げられます。実務上は、この「決算早期化」という課題に取り組むことと並行して、上記の観点からいずれの変更方法を採用するかの検討をしていくことになると考えられます。

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