金融商品取引法改正に伴う四半期開示の見直しに関する上場制度の見直し等の公開草案のポイント及びコメント募集のお知らせ

2024年1月12日
カテゴリー 会計情報トピックス

EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 前田 和哉

<東京証券取引所が2023年12月18日に公表>

東京証券取引所(以下「東証」という。)が2023年11月に取りまとめた「四半期開示の見直しに関する実務方針」(以下「実務の方針」という。)を踏まえ、金融商品取引法改正に伴う四半期開示の見直しに関する上場制度の見直し等の公開草案(以下「本公開草案」という。)ことを公表しました。

1. 本公開草案の背景

2023年11月20日に成立した「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(以下「改正金商法」という。)において、上場企業について、四半期報告書(第1・第3四半期)が廃止され、四半期決算短信に「一本化」されることになりました。東京証券取引所(以下「東証」という。)では、この「一本化」の具体的な方向性に沿った実務の実現に向け、「四半期開示の見直しに関する実務検討会」において検討を行い、2023年11月に実務の方針を取りまとめ公表しました。本公開草案は、実務の方針を踏まえ、四半期開示の見直しに関して、所要の上場制度の整備を行うことを提案しています。

2. 本公開草案の概要

(1) 四半期決算短信の取扱い

  • 第1・第3四半期累計期間に係る決算の内容の開示において、四半期財務諸表又は四半期連結財務諸表(以下「四半期財務諸表等」という。)として、少なくとも以下の事項を開示することを提案しています。

    a 四半期連結貸借対照表
    b 四半期連結損益計算書及び四半期連結包括利益計算書又は四半期連結損益及び包括利益計算書
    c 継続企業の前提に関する注記
    d 株主資本の金額に著しい変動があった場合の注記
    e 会計方針の変更、会計上の見積りの変更、修正再表示に関する注記
    f 四半期連結財務諸表の作成に特有の会計処理に関する注記
    g セグメント情報等の注記
    h キャッシュ・フローに関する注記(期首からの累計期間に係る有形固定資産及びのれんを除く無形固定資産の減価償却費及びのれんの償却額(負ののれんの償却額を含む。))
  • 上記hのキャッシュ・フローに関する注記は、任意に四半期連結キャッシュ・フロー計算書を開示する場合は除かれることを提案しています。
  • 四半期財務諸表等の作成方法については、東証が「四半期財務諸表等の作成基準」を作成し、有価証券上場規程施行規則の別添として規定することを提案しています。そして、四半期財務諸表等は、企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」等に準拠して作成するものとし、上記aからh以外の項目については省略できることを提案しています。
  • レビューの有無等の記載やその他作成にあたっての留意事項は、「決算短信・四半期決算短信作成要領等」において定めることを提案しています。
  • 第2四半期累計期間に係る四半期決算短信については、現在の取扱いを維持することを提案しています。


(2) 公認会計士又は監査法人によるレビュー

  • 第1・第3四半期累計期間に係る四半期財務諸表等に対する公認会計士又は監査法人(以下「公認会計士等」という。)によるレビューを受けることは原則として任意とすることを提案しています。ただし、以下のいずれかの要件に該当した場合には、要件該当以後に開示する第1・第3四半期累計期間に係る四半期財務諸表等に対し、公認会計士等によるレビューを義務付けることを提案しています。

    a 直近の有価証券報告書、半期報告書又は四半期決算短信(レビューを受ける場合)において、無限定適正意見(無限定の結論)以外の監査意見(レビューの結論)が付される場合
    b 直近の内部統制監査報告書において、無限定適正意見以外の監査意見が付される場合
    c 直近の内部統制報告書において、内部統制に開示すべき重要な不備がある場合
    d 直近の有価証券報告書又は半期報告書が当初の提出期限内に提出されない場合
    e 当期の半期報告書の訂正を行う場合であって、訂正後の財務諸表に対してレビュー報告書が添付される場合
  • 上記aとcについては、直近の有価証券報告書、半期報告書若しくは四半期決算短信(レビューを受ける場合)又は内部統制報告書の訂正を行い、訂正後の報告書等において要件に該当する場合を含むことを提案しています。
  • d と e については、財務諸表の信頼性の観点から問題がないことが明らかな場合として、当取引所が認める場合を除くことを提案しています。
  • 要件該当後に提出される有価証券報告書及び内部統制報告書において、上記aからdのいずれにも該当しないこととなった場合には、レビューの義務付けを行わないこととすることを提案しています。
  • 第1・第3四半期累計期間に係る四半期財務諸表等に対してレビューを受ける場合、年度財務諸表等の監査証明を行う公認会計士等によるレビューを受けることとし、一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って実施されたレビューの結果に基づいて作成されたレビュー報告書を添付することを提案しています。
  • 上場外国会社については、半期報告書の公認会計士等によるレビューが求められない場合は、レビューの義務付けの対象外とすることを提案しています。


(3) 上場規則の実効性の確保

  • 上場会社による調査及び調査結果の報告や公認会計士等との情報連携の強化、特別注意銘柄の指定要件に第1・第3四半期累計期間に係る四半期財務諸表等に対するレビュー報告書に「否定的結論」又は「結論を表明しない」旨が記載されたときを追加することを提案しています。


(4) その他

  • 四半期報告書が廃止されることに伴う所要の見直しや「買収防衛策」の用語を「買収への対応方針」又は「買収への対抗措置」に改めることを提案しています。

3. 適用時期

改正金商法の施行の日から実施予定です。

ただし、四半期決算短信の取扱いに関しては、施行日以後に開始する四半期会計期間(第2四半期を除く。)に係る四半期決算短信から適用予定です。

図表 決算期別の改正金商法の適用時期

なお、本稿は本改正案の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

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