公認会計士 前田和哉
2021年2月3日公布、3月1日施行
2021年2月3日に、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」等及び「企業内容の開示に関する内閣府令」の改正(以下、「本改正」という。)が公布されています。
1. 本改正の趣旨
本改正は、2019年12月に成立した「会社法の一部を改正する法律」(以下、「改正法」という。)の施行及び2020年11月に公布された「会社法の改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正」に基づく会社法施行令、会社法施行規則及び会社計算規則などの改正を踏まえ、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等及び企業内容の開示に関する内閣府令について所要の改正を行うものです。
2. 改正された規則等
- 企業内容等の開示に関する内閣府令(開示府令)
- 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(財務諸表等規則)
- 中間財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(中間財務諸表等規則)
- 四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(四半期財務諸表等規則)
- 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(連結財務諸表規則)
- 中間連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(中間連結財務諸表規則)
- 四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(四半期連結財務諸表規則)
- 「財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について(財務諸表等規則ガイドライン)
3. 本改正の概要
2019年12月に成立した改正法により、「会社法」(平成17年法律第86号)第202条の2において、金融商品取引法第2条第16項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社が、取締役又は執行役(以下、「取締役等」という。)の報酬等として株式の発行等をする場合には、金銭の払込み等を要しないことが新たに定められ、会社計算規則も改正されました。
また、改正法により、役員等との補償契約や役員等賠償責任保険契約、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針が定められたことを受けて、事業報告において、役員の報酬等に関する事項の記載の拡充を求める会社法施行規則改正が行われました。
これらを踏まえ、財務諸表等規則等や開示府令においても以下の事項を求めることとされています。
(1)財務諸表規則等に関する改正事項
① 純資産の分類における株式引受権を新設(財務諸表等規則第67条の2、中間財務諸表規則第36条の2の4、連結財務諸表等規則第43条の2の2、中間連結財務諸表等規則45条の2の2、四半期財務諸表等規則50条の2、四半期連結財務諸表等規則56条の2)
事後交付型の場合、新株の発行等が行われるまでの間、取締役等の役務の公正な評価額を貸借対照表の純資産の部の株主資本以外の項目に株式引受権として掲記しなければならない。
② 株主資本等変動計算書における株式引受権の新設(財務諸表等規則第104条の2、中間財務諸表規則第63条の2、連結財務諸表等規則第74条の2、中間連結財務諸表等規則75条の2)
株主資本等変動計算書においても区分表示することとされ、当事業年度期首残高、当事業年度変動額及び当事業年度末残高に区分して記載しなければならない。
当事業年度変動額は、一括して記載することとされているが、主な変動事由ごとに記載又は注記することも認められている。
③ 注記の明確化(財務諸表等規則ガイドライン8の14及び8の16)
財務諸表等規則第8条の14に規定するストック・オプション若しくは自社株式オプションの付与又は自社の株式の交付に関する注記に取締役の役員報酬等として株式を無償交付する取引も対象となることが示されている。
財務諸表等規則第8条の16第1項に規定する「自社の株式を交付している場合」には、取締役等に報酬等として自社の株式を無償で交付する場合が含まれることが示されている。
(2)開示府令に関する改正事項
① 株式引受権の新設に伴う自己資本比率及び自己資本利益率の算定方法の明確化(開示府令第二号様式(記載上の注意)(25)a(j)(k)及びb(m)(n)、同第三号様式(記載上の注意)(5)a(m),b(O))
主要な経営指標等の推移の自己資本比率及び自己資本利益率は、新設された株式引受権の金額を控除した純資産額を用いて計算することが明確化された。
② 取締役等の補償契約や役員等賠償責任保険契約の開示規定の新設(開示府令第二号様式(記載上の注意)(54)a及びb)
コーポレート・ガバナンスの概要において、役員等との間で補償契約若しくは役員等賠償責任保険契約を締結した場合には、締結した契約の内容の概要の記載が求められる。
③ 取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針に関する開示規定の拡充(開示府令第二号様式(記載上の注意)(57))
取締役の個人別の報酬等の決定方針について定めている場合は、当該方針の決定の方法や当該方針の概要の内容、個人別の報酬等の内容が方針に沿うものであると取締役会が判断した理由の記載が求められる。
また、指名委員会等設置会社以外の会社で、役員の報酬等に関する株主総会の決議がない場合、役員の報酬等について定款に定めている事項の内容に加え、当該事項を設けた日を記載することが求められる。
報酬などの種類別の開示の例として、非金銭報酬等が示されており、業績連動報酬の全部又は一部が非金銭報酬等であるときは、その内容を記載することが求められる。
取締役の個人別の報酬等の内容の決定について、取締役会から委任された取締役又はその他の第三者がその全部又は一部を決定(以下、「再一任」という。)した場合、以下の記載が求められる。
- その旨
- 委任を受けた者の氏名
- 当該内容を決定した日における地位並びに担当
- 委任された権限の内容
- 委任の理由
- 当該権限が適切に行使されるようにするための措置を講じた場合における当該措置の内容を記載
4. 適用時期
改正会社法の施行の日(2021年3月1日)から適用。
ただし、役員等との補償契約及び役員等賠償責任保険契約に係る記載事項については、施行日以後に締結されたこれらの契約に係る事項に限られる。
5. 改正案からの変更点
軽微な修正を除き公開草案からの変更点はありません。
なお、本稿は本改正の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。
金融庁ウェブサイト