改正収益認識会計基準及び見積開示会計基準等の公表に伴う会社計算規則の改正のポイント

2020年9月2日
カテゴリー 会計情報トピックス

公認会計士 松下洋

2020年8月12日に公表

2020年8月12日に、「会社計算規則の一部を改正する省令」(以下「本改正」という。)が公表されています。本改正は、企業会計基準委員会から、2020年3月31日、改正企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下「改正収益認識会計基準」という。)及び企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」(以下「見積開示会計基準」という。)等が公表されたことを受け、会社計算規則の改正を行うものです。

1. 改正された規則

会社計算規則(平成18年法務省令第13号)

2. 改正の内容

(1)改正収益認識会計基準を受けた改正

会社計算規則第115条の2第1項の収益認識に関する注記として表示すべき事項を、「当該事業年度に認識した収益を、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づいて区分をした場合における当該区分ごとの収益の額その他の事項」(同項第1号)、「収益を理解するための基礎となる情報」(同項第2号)及び「当該事業年度及び翌事業年度以降の収益の金額を理解するための情報」(同項第3号)に改めることとされました。あわせて、重要な会計方針に係る事項に関する注記の内容とすべき事項を定める会社計算規則第101条に第2項を加え、会社が顧客との契約に基づく義務の履行の状況に応じて当該契約から生ずる収益を認識するときは、同条第1項第4号に掲げる事項には、「当該会社の主要な事業における顧客との契約に基づく主な義務の内容」(同条第2項第1号)、「前号に規定する義務に係る収益を認識する通常の時点」(同項第2号)及び「前二号に掲げるもののほか、当該会社が重要な会計方針に含まれると判断したもの」(同項第3号)を含むものとするほか、所要の整備が行われました。

ただし、有価証券報告書提出会社以外の株式会社にあっては、会社計算規則第115条の2第1項第1号及び第3号の事項を省略することができるものとされました(「『会社計算規則の一部を改正する省令案』に関する意見募集の結果について」第3の2)。

なお、収益認識に関する注記の内容は、実務上の負担等も考慮し、各会社の実情に応じて必要な限度での開示を可能とするため、改正収益認識会計基準の定めとは異なり概括的に定めることとされています。従って、改正収益認識会計基準において具体的に規定された事項であったとしても、各株式会社の実情を踏まえ、計算書類においては当該事項の注記を要しないと合理的に判断される場合には、計算書類において当該事項について注記しないことも許容されると考えられるとされています(「『会社計算規則の一部を改正する省令案』に関する意見募集の結果について」第3の3)。

(2)見積開示会計基準を受けた改正

会社計算規則第98条第1項に第4号の2として、注記表に区分して表示すべき項目として会計上の見積りに関する注記を追加し、会社計算規則第102条の3の2として、その注記の内容とすべき事項を以下と定める規定を追加するほか、所要の整備を行われました。

① 会計上の見積りにより当該事業年度に係る計算書類又は連結計算書類にその額を計上した項目であって、翌事業年度に係る計算書類又は連結計算書類に重要な影響を及ぼす可能性があるもの
② 当該事業年度に係る計算書類又は連結計算書類の①の項目に計上した額
③ ②の項目のほか、①の項目に係る会計上の見積りの内容に関する理解に資する情報

ただし、個別注記表に記載すべき③の事項については、連結注記表に記載すべき事項と同一である場合において、個別注記表にその旨を注記するときは、個別注記表における当該事項の注記を要しないこととされました。

なお、上記の③については、実務上の負担等を考慮し、各株式会社の実情において必要な限度での開示を可能とするため、概括的な定めとされています。従って、見積開示会計基準第8項において具体的に例示された事項であったとしても、各株式会社の実情を踏まえ、計算書類においては当該事項の注記を要しないと合理的に判断される場合には、計算書類において当該事項について注記しないことも許容されると考えられるとされています(「『会社計算規則の一部を改正する省令案』に関する意見募集の結果について」第3の7)。

3. 重要な会計方針に係る事項に関する注記

本改正においては、改正企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「改正過年度遡及会計基準」という。)の公表を受けた改正はしないこととされています。

ただし、改正過年度遡及会計基準においては、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合においても、関連する会計基準等の定めが明らかな場合と同じく、採用した会計処理の原則及び手続の概要を重要な会計方針として注記するとされています。当該採用した会計処理の原則及び手続が、計算書類を理解するために重要であると考えられる場合には、会社計算規則第101条第1項第5号に該当し、その概要を注記する必要があると考えられるとされています(「『会社計算規則の一部を改正する省令案』に関する意見募集の結果について」第3の10)。

4. 適用時期

公布の日(2020年8月12日)から施行されています。

5. 経過措置

(1)改正収益認識会計基準を受けた改正

この省令による改正後の会社計算規則第88条第1項第1号、第101条第2項及び第115条の2の規定は、2021年4月1日以後に開始する事業年度に係る計算書類及び連結計算書類について適用し、同日前に開始する事業年度に係るものについては、なお従前の例によるものとするとされています。
ただし、2020年4月1日以後に終了する事業年度に係るものについては、これらの規定を適用することができるものとされています。

(2)見積開示会計基準を受けた改正

この省令による改正後の会社計算規則第98条第1項第4号の2並びに第2項第1号、第2号及び第5号並びに第102条の3の2の規定は、2021年3月31日以後に終了する事業年度に係る計算書類及び連結計算書類について適用し、同日前に終了する事業年度に係るものについては、なお従前のものによるものとするとされています。

ただし、2020年3月31日以後に終了する事業年度に係るものについては、これらの規定を適用することができるものとするとされています。

6. 公開草案からの変更点

(1)収益認識に関する注記

会社計算規則第115条の2第1項第1号及び第3号に掲げる注記については、有価証券報告書を提出しなければならない株式会社以外の株式会社に過大な負担となると恐れがあるという意見が比較的多く寄せられたこと等を踏まえて、会社法第444条第3項に規定する株式会社以外の株式会社にあっては、会社計算規則第115条の2第1項第1号及び第3号に掲げる事項を省略することができることとされました。

(2)会計上の見積りに関する注記

会社計算規則第102条の3の2を修正し、当該事業年度に係る計算書類及び連結計算書類の同条第1項第1号の項目に計上した額以外の会計上の見積りの内容に関する理解に資する情報について、個別注記表に記載すべき事項が連結注記表に注記すべき事項と同一である場合において、個別注記表にその旨を注記するときは、個別注記表における当該事項の注記を要しないこととする規定が設けられました。

なお、本稿は本改正案の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

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