会計情報トピックス 吉田剛
企業会計基準委員会が平成24年1月20日に公表
企業会計基準委員会は、平成24年1月20日に実務対応報告第28号「改正法人税法及び復興財源確保法に伴う税率変更等に係る四半期財務諸表における税金費用の実務上の取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)を公表しています。
本実務対応報告では、「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第114号)による法人税法の改正(以下「改正法人税法」という。)及び「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(平成23年法律第117号)(以下「復興財源確保法」という。)が平成23年12月2日に公布されたことに伴う会計処理への影響のうち、四半期決算における税金費用の取扱いについて、実務上の対応が示されています。
基本的には、これまで公表されている会計基準等における取扱いを改めて確認するものとなっていますが、新たな定めとして、一定の要件の下、公布日以後最初に迎える四半期決算に限り、合理的で実態に即していると考えられる方法により算出した単一の税率により繰延税金資産及び繰延税金負債を計算することができる取扱いが示されています。
1. 本実務対応報告の概要
① 単一の税率を用いることができる場合(本実務対応報告Q3)
四半期決算では、適時性に係る強い制約があることから、適時に一時差異等のスケジューリングを行うことが実務上困難な場合も考えられることに配慮し、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算において、合理的で実態にも即していると考えられる方法により算出した単一の税率を用いて、税金費用を計算することを認める取扱いが示されました。
本実務対応報告Q3において、認められる単一の税率としては、以下のようなものが例示されています。
- 繰延税金資産の回収可能性の判断の際に使用した課税所得の見積期間の各期の法定実効税率を単純に平均した税率
- 一時差異等の項目の主な解消見込時期に対応した法定実効税率(例えば、一時差異等が、主におおむね3年以内に解消されると見込まれる場合には、復興特別法人税額を含む法定実効税率を使う。また、例えば、一時差異等が、主におおむね3年を超えて解消されると見込まれる場合には復興特別法人税額を含まない法定実効税率を使う、など。)
この取扱いを用いた場合には、その旨、使用した税率及びその算定方法を注記することになります。
② その他(本実務対応報告Q1・Q2・適用時期等)
①のほか、現行の会計基準等などの定めのうち、以下の取扱いなどが確認されています。
(本実務対応報告Q1)
- 四半期財務諸表における税金費用について、原則的な方法によった場合には、支払又は回収が行われると見込まれる期に対応した改正後の税率を用いて繰延税金資産及び繰延税金負債が計算されること
- 復興特別法人税額が上乗せされる期間に支払又は回収が行われると見込まれる繰延税金資産又は繰延税金負債は、復興特別法人税額を含む税率を用いること
- 四半期財務諸表における税金費用について原則的な方法によった場合にも、財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、納付税額等の算出等において、簡便的な方法が認められていること
- スケジューリングが不能な一時差異に関しては、一律に復興特別法人税額を含まない税率で繰延税金資産及び繰延税金負債が計算されること
- 繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性について、改正法人税法による欠損金の繰越控除制度の改正(控除限度額が繰越控除前の所得金額の80%に制限)を考慮する必要があること
(本実務対応報告Q2)
- 四半期財務諸表における税金費用について、四半期特有の会計処理によっている場合には、原則として、予想年間納付税額に税率変更を反映した予想年間法人税等調整額を加減し、当該金額を予想年間税引前当期純利益で除して税率変更後の見積実効税率を算定すること(会計制度委員会報告第11号「中間財務諸表等における税効果会計に関する実務指針」(以下「中間税効果実務指針」という。)第10項本文参照)
- 上記の原則的な取扱いのほか、当期首の繰延税金資産及び繰延税金負債の大部分がそのまま当期末の繰延税金資産及び繰延税金負債を構成するような場合は、従来用いていた見積実効税率で税金費用をいったん計算した後に、当期首の繰延税金資産及び繰延税金負債を変更後の税率により再計算し、当該再計算による修正額を税金費用に加減して処理する方法が認められていること(中間税効果実務指針第10項なお書き参照)
- 法定実効税率を用いている場合には、期末の修正差額を見積り、各四半期に合理的に配分すること(中間税効果実務指針第12項)
(本実務対応報告 適用時期等)
- 税率変更に係る会計処理の結果、四半期財務諸表に重要な影響を及ぼすと認められる場合などには、追加情報として、その旨及び影響額(適時に正確な金額を算定することができない場合には、概算額も可)の注記が必要となること
また、設例として、以下のものが示されています。
設例1 四半期累計期間中に税率の変更があった場合の税金費用の計算
設例2 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の計算
2. 公開草案から変更された主な点
平成23年12月に公表された公開草案から、結論を含め、大きな変更は行われていません。
3. 適用時期等
1. ①の取扱いについては、改正法人税法及び復興財源確保法の公布日以後最初に終了する四半期会計期間にのみの適用となります。
また、その他の取扱いについては、改正法人税法及び復興財源確保法の公布日を含む事業年度に係る四半期会計期間のうち、当該公布日以後に終了する四半期会計期間に適用するものとし、さらに、当該公布日後、かつ、最終版の実務対応報告の公表日前に終了する四半期会計期間についても、同様に適用されることになります。
なお、この実務対応報告の適用については、会計方針の変更に該当しないこととされています。
なお、本稿は本実務対応報告の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。