会計情報トピックス 吉田剛
内閣府令第30号が平成23年6月30日に公布
平成23年6月30日に、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第30号)が公布されています。
当該改正は、平成23年3月25日に企業会計基準委員会(ASBJ)から公表された企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下「連結会計基準」という。)の改正に対応するものです。連結会計基準の改正では、連結の範囲の取扱いに係る国際的な会計基準とのコンバージェンスへの短期的な対応として、一定の要件を満たす特別目的会社につき、当該特別目的会社が子会社に該当しないものとする推定規定を資産の譲渡者のみに適用することとされました。その他、連結会計基準等における連結の範囲に係る取扱いの改正等に対応して、開示規則上の取扱いを手当てするために、改正が行われたものです。
また、上記改正に併せて、平成23年3月31日に公布された「四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第10号)で示された四半期報告の簡素化に関する規定等について、追加的な改正が行われています。
1. 改正が行われた規則等
- 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(財規)
- 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(連結財規)
- 中間連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(中間連結財規)
(以下は四半期報告の簡素化に関する改正が行われた規則等)
- 四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(四半期連結財規)
- 四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(四半期財規)
- 「四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について(四半期連結財規ガイドライン)
- 「四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について(四半期財規ガイドライン)
2. 改正の概要―SPCの取扱い
(1)定義の改正(財規第8条第7項)
一定の特別目的会社のうち、当該特別目的会社に対する出資者から独立しているものと認め、その出資者の子会社に該当しないものと推定するとされていた規定が削除されました。
なお、当該特別目的会社に資産を譲渡した会社等に関しては、従来どおり、その譲渡者の子会社に該当しないものと推定することとされています。
改正後 | 改正前 | |
子会社に該当しないものと... | ||
出資者 | 推定されない | 推定する |
譲渡者 | 推定する | |
出資者かつ譲渡者 | 推定する |
(2)開示対象特別目的会社に係る注記(財規第8条の9第2号(連結財規第13条第2項第4号において財規を参照))
従来は開示対象特別目的会社とされていた、出資者の子会社に該当しないものと推定された特別目的会社について、(1)のとおり、基本的に連結の範囲に含められることとされたため、開示対象特別目的会社の範囲から除外されています。
(3)ノンリコース債務に関する表示(開示)(連結財規第41条の2、中間連結財規第43条の2など)
連結の範囲に含めた特別目的会社が有するノンリコース債務(*)については、当該ノンリコース債務を示す名称を付した科目をもって、社債又は借入金その他の負債の項目ごとに独立掲記することとされました。ただし、当該ノンリコース債務について、社債・借入金等の科目に含めて表示し、ノンリコース債務の金額を注記することもできるとされています。
このノンリコース債務に対応する資産については、当該資産の科目及び金額を注記するものとされます。
また、社債明細表において、特別目的会社が発行する社債がノンリコース債務に該当する場合には欄外にその旨を記載することとされるほか、借入金等明細表においても、連結貸借対照表上で区分掲記されたノンリコース債務に関して、他の債務と別に科目ごとに記載することとされています。
(*)ノンリコース債務とは、特別目的会社の資産の全部又は一部及び当該資産から生じる収益のみを返済原資とし、当該資産以外の資産及び当該収益以外の収益に遡求しない債務をいうこととされています。
3. 改正の概要―四半期報告の簡素化に係る規定の明確化など
四半期報告の簡素化について、追加的に以下の規定等が改正され、開示における取扱いが明確化されました。
- 著しい季節的変動の注記が四半期(連結)累計期間において求められるものである旨(四半期連結財規第81条、四半期財規第72条)
- 事業分離における分離元企業の注記(四半期財規第19条)で開示される四半期損益計算書に含まれる業績について、3か月情報が不要の旨
- 希薄化効果を有しない潜在株式について、これまでと同様、重要な変動がある場合にのみ記載する旨(四半期連結財規ガイドライン78、四半期財規ガイドライン70)
なお、平成23年6月14日の官報において、平成23年3月31日に公布された「四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第10号)の正誤表が掲げられており、以下の点について修正が施されていますので、ご留意ください。
- 前年度の第2四半期以降に会計方針を変更していた場合に必要となる注記事項について、適用初年度は改正前の規定が適用となり、改正後の注記事項は翌年度より適用となる旨(附則第2条第1項、第2項、第3条第1項、第2項)
- 第1四半期の四半期報告書において、前期の連結財務諸表につき初めて指定国際会計基準を適用して作成したものを記載した場合に求められる開示(要約連結財務諸表・基準差の開示)が引き続き必要となる旨(開示府令 第四号の三様式 記載上の注意(6)b、c)
4. 適用時期
SPCに係る規定については、連結会計基準と同じく、平成25年4月1日以後開始する連結会計年度より原則適用とするものとされています。また、早期適用の規定についても、連結会計基準と同様、平成23年4月1日以後開始する連結会計年度からとすることが示されています。
5. 公開草案から修正された事項
(連結)貸借対照表に掲げられるノンリコース債務については、「(短期・長期)ノンリコース債務」として区分掲記されるのではなく、ノンリコースの借入金、社債又はその他の負債の区分をもって掲記することが明確化されました。
また、各附属明細表での返済予定額の開示についても、ノンリコース債務を区分して(借入金等明細表については科目ごとに区分して)記載されることが示されました。
なお、本稿は改正の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。