平成21年3月27日公布の改正会社法施行規則の概要

2009年4月24日
カテゴリー 会計情報トピックス

会計監理レポート

1. はじめに

平成21年3月27日に法務省令第七号が公布され、会社法施行規則が改正されました。以下に改正内容の概要を記載します。

2. 会社法施行規則の改正概要

(1)株式に係る規律の改正

① 種類株式の内容として定款で定めるべき事項に係る規律の明確化(会社法施行規則第20条)

会社法第108条第2項に規定する種類株式の内容として定款で定めるべき事項について、剰余金の配当について内容の異なる種類の種類株主が配当を受けることができる額その他法務省令(会社法施行規則第20条)で定める事項に限り、その全部または一部については、当該種類株式を初めて発行するときまでに、株主総会等の決議によって定める旨を定款で定めることができることとなっています(同法第108条第3項)。

今回の改正で、会社法施行規則第20条第1項第四号および第九号で以下の事項が新たに規定されました。

第四号
譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること
法第107条第2項第一号イに掲げる事項

第九号
当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること
法第108条第2項第九号イ及びロに掲げる事項

② 株主名簿記載事項の記載または記録の請求を単独でできる場合に係る規律の合理化(会社法施行規則第22条)

会社法第133条では、株式を当該株式を発行した株式会社以外の者から取得した者が、当該株式会社に対して、当該株式に係る株主名簿記載事項を株主名簿に記載し、または記録することを請求することができる旨規定し、この請求は、利害関係人の利益を害する恐れがないものとして法務省令(会社法施行規則第22条)で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載され、もしくは記録された者またはその相続人その他の一般承継人と共同して請求することが要請されています。

今回の改正で、会社法施行規則第22条第1項第十号で以下の事項が新たに規定されるとともに、同条第2項第四号が以下のように改正され、同条第2項に第五号が新たに追加されました。これにより、1株に満たない端数株の処理について競売に代えて売却された場合に取得した株主や、株主への通知または催告が5年以上継続して到達せず、継続して5年間配当を受領していなかった株式の競売により取得した株主について、代金の全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたときについても株主名簿の名義書換えを単独請求できることが明記されました。

第1項第十号
株式取得者が法第234条第2項(法第235条第2項において準用する場合を含む。)の規定による売却に係る株式を取得した者である場合において、当該売却に係る代金の全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。

第2項第四号
株式取得者が法第197条第1項の株式を取得した者である場合において、同項の規定による競売又は同条第2項の規定による売却に係る代金の全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。

第2項第五号
株式取得者が法第234条第1項若しくは第235条第1項の規定による競売又は法第234条第2項(法第235条第2項において準用する場合を含む。)の規定による売却に係る株式を取得した者である場合において、当該競売又は当該売却に係る代金の全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。

③ 譲渡制限株式を取得した者の単独で承認請求できる場合に係る規律の合理化(会社法施行規則第24条)

会社法第137条では、譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対して、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認するか否かの決定を請求することができる旨規定し、この請求は、利害関係人の利益を害する恐れがないものとして法務省令(会社計算規則第24条)で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載され、もしくは記録された者またはその相続人その他の一般承継人と共同して請求することが要請されています。

今回の改正で、会社法施行規則第24条第1項第八号で以下の事項が新たに規定されるとともに、同条第2項第四号が以下のように改正され、同条第2項に第五号が新たに追加されました。

第1項第八号
株式取得者が法第234条第2項(法第235条第2項において準用する場合を含む。)の規定による売却に係る株式を取得した者である場合において、当該売却に係る代金の全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。

第2項第四号
株式取得者が法第197条第1項の株式を取得した者である場合において、同項の規定による競売又は同条第2項の規定による売却に係る代金の全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。

第2項第五号
株式取得者が法第234条第1項若しくは第235条第1項の規定による競売又は法第234条第2項(法第235条第2項において準用する場合を含む。)の規定による売却に係る株式を取得した者である場合において、当該競売又は当該売却に係る代金の全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。

④ 自己の株式を取得することができる場合に係る規律の合理化(会社法施行規則第27条)

会社法第155条では、自己株式を取得できる場合について規定し、同条第十三号では、前号に掲げる場合のほか、法務省令(会社法施行規則第27条)で定める場合についても自己株式の取得が容認されています。

今回の改正で、会社法施行規則第27条第八号で以下の事項が新たに規定されました。

第八号
その権利の実行に当たり目的を達成するために当該株式会社の株式を取得することが必要かつ不可欠である場合(前各号に掲げる場合を除く。)

⑤ 公開会社でない株式会社における自己の株式の取得に係る議案の株主による追加請求の時期の伸長(会社法施行規則29条)

会社法第158条第1項では、株主との合意による自己株式の取得について、株主に対して一定の事項を通知することを要請し、同法第160条第1項では、当該通知を特定の株主に対して行う旨を株主総会の決議で定めることができることを規定しています。同条第3項では、この決定をしようとするときは、株主が、特定の株主に自己も加えたものを株主総会の議案とすることを法務省令(会社法施行規則第29条)で定めるときまでに請求することができる旨、規定しています。

今回の改正で、会社法施行規則第29条に以下のただし書きが、新たに規定され、会社計算規則第28条各号に掲げる場合について、従前の株主総会の日の5日前から3日前までに請求時期が伸長されました。

第29条
...(前略)...ただし、前条各号に掲げる場合には、三日(定款でこれを下回る期間を定めた場合にあっては、その期間)前とする。

⑥ 発行済株式の総数の200分の1に当たる数を超えないことを単元株式数に関する要件として追加(会社法施行規則34条)

会社法第188条では、株式会社は、その発行する株式について、一定の数の株式をもって株主が株主総会または種類株主総会において一個の議決権を行使することができる一単元の株式とする旨を定款で定めることができ、この一定の数は法務省令(会社計算規則第34条)で定める数を超えることができない旨規定しています。

今回の改正で、会社法施行規則第34条が以下のように改正され、一定の数について従前は、「千」と規定されていましたが、「千及び発行済株式の数の1/200に当たる数」に改正されました。

第34条
法第188条第2項に規定する法務省令で定める数は、千及び発行済株式の総数の二百分の一に当たる数とする。

⑦ その他所要の改正(会社法施行規則第35条)

会社法第189条第2項では、株式会社は単元未満株主が当該単元未満株式について同項各号に掲げる権利以外の権利の全部または一部を行使することができない旨を定款で定めることができる旨規定し、同項第六号では、前号に掲げるもののほか、法務省令(会社計算規則第35条)で定める権利について規定しています。

今回の改正で、会社法施行規則第35条第1項第四号のホ、へで、以下の事項が新たに規定されました。

第35条第1項第四号 ホ
法第234条第2項(法第235条第2項において準用する場合を含む。)の規定による売却

第35条第1項第四号 ヘ
競売

(2)株主総会参考書類に係る規律の改正

① 株主総会参考書類に記載すべき事項につき,取締役が提案する議案についての一般的な事項として提案の理由を加える改正(会社法施行規則第73条)

会社法第301条では、取締役は株主総会の招集通知に際して、法務省令(会社法施行規則第65条、第66条)で定めるところにより、株主に対し、株主総会参考書類および議決権行使書面を交付しなければならないことを規定しています。会社法施行規則第65条第1項では、株主総会参考書類に記載すべき事項は、次款(第73条から第93条)の定めるところによると規定しています。

今回の改正で、会社法施行規則第73条第1項第二号で、以下の事項が新たに規定されました。

第73条第1項第二号
提案の理由(議案が取締役の提出に係るものに限り、株主総会において一定の事項を説明しなければならない議案の場合における当該説明すべき内容を含む。)

② 公開会社が取締役または監査役の選任に関する議案を提出する場合の株主総会参考書類に記載すべき事項についての改正(会社法施行規則第74条、第76条)

今回の改正で、会社法施行規則第74条第2項第二号および第76条第2項第二号が以下のように改正され、従前の「候補者が他の法人等を代表する者であるとき」から「第121条第七号に定める重要な兼職に該当する事実があることとなるとき」と改正されました。

第74条第2項第二号
候補者が当該株式会社の取締役に就任した場合において第121条第七号に定める重要な兼職に該当する事実があることとなるときは、その事実

第76条第2項第二号
候補者が当該株式会社の監査役に就任した場合において第121条第七号に定める重要な兼職に該当する事実があることとなるときは、その事実

③ 公開会社の取締役が会計監査人選任の議案を提出する場合の株主総会参考書類に記載すべき事項についての改正(会社法施行規則第77条)

今回の改正で、会社法施行規則第77条第七号が以下のように改正され、多額の金銭その他の財産上の利益を受ける予定があるときまたは過去2年間に受けていたときの対象会社に「当該株式会社」が含まれることが明記されました。

第77条第七号
株式会社が公開会社である場合において、当該候補者が当該株式会社、その親会社又は当該親会社(当該株式会社に親会社がない場合にあっては、当該株式会社)の子会社(当該株式会社を除く。)若しくは関連会社(当該親会社が会社でない場合におけるその子会社及び関連会社に相当するものを含む。)から多額の金銭その他の財産上の利益(これらの者から受ける会計監査人(法以外の法令の規定によるこれに相当するものを含む。)としての報酬等及び公認会計士法第2条第1項に規定する業務の対価を除く。)を受ける予定があるとき又は過去2年間に受けていたときは、その内容

④ 責任免除または責任制限を受けた役員等に対し退職慰労金等を与える議案を提出する場合における開示事項の新設(会社法施行規則第84条の2)

今回の改正で、会社法施行規則第84条の2が新設され以下のように規定されました。

第84条の2
次の各号に掲げる場合において、取締役が法第425条第4項(法第426条第6項及び第427条第5項において準用する場合を含む。)に規定する承認の決議に関する議案を提出するときは、株主総会参考書類には、責任を免除し、又は責任を負わないとされた役員等が得る第114条各号に規定する額及び当該役員等に与える第115条各号に規定するものの内容を記載しなければならない。

一  法第425条第1項に規定する決議に基づき役員等の責任を免除した場合
ニ  法第426条第1項の規定による定款の定めに基づき役員等の責任を免除した場合
三  法第427条第1項の契約によって同項に規定する限度を超える部分について同項に規定する社外取締役等が損害を賠償する責任を負わないとされた場合

(3)事業報告に係る規律の改正

① 事業報告の内容とすべき事項について,その条文構成の合理化を図る改正(現行の同規則第127条を第118条第三号とすること等)

今回の改正で、株式会社の支配に関する基本方針を事業報告の内容としなければならないとする会社法施行規則第127条の規定が以下のとおり、第118条第三号に移設され、また、財務および事業を支配する者の在り方に関する基本方針の内容の開示につきその概要の開示で足りることが明確化されました。

第118条第三号
株式会社が当該株式会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(以下この号において「基本方針」という。)を定めているときは、次に掲げる事項

イ 基本方針の内容の概要
ロ 次に掲げる取組みの具体的な内容の概要

(1)当該株式会社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組み
(2)基本方針に照らして不適切な者によって当該株式会社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

ハ ロの取組みの次に掲げる要件への該当性に関する当該株式会社の取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の判断及びその理由(当該理由が社外役員の存否に関する事項のみである場合における当該事項を除く。)

(1)当該取組みが基本方針に沿うものであること。
(2)当該取組みが当該株式会社の株主の共同の利益を損なうものではないこと。
(3)当該取組みが当該株式会社の会社役員の地位の維持を目的とするものではないこと。

② 会社役員および社外役員の兼職等に関する開示の合理化(会社法施行規則第121条および第124条)

今回の改正で、会社法施行規則第121条第三号「会社役員が他の法人等の代表者その他これに類する者であるときは、その重要な事実」が削除され、新たに、第七号に以下のように規定されました。

また、社外役員を設けた株式会社の特則としての会社法施行規則第124条第ニ号の規定が以下のように改正され、「他の法人等の社外役員その他これに類する者を兼任していることが第121条第七号に定める重要な兼職に該当する場合」に「当該株式会社と当該他の法人等との関係」を事業報告の内容である「株式会社の会社役員に関する事項」とすることに改正されています。さらに、同条第三号の「...職務を行うべき者...」が「...職務を行うべき者その他これに類する者...」と以下のように改正されました。

第121条第七号
当該事業年度に係る当該株式会社の会社役員(会計参与を除く。)の重要な兼職の状況

第124条第二号
社外役員が他の法人等の社外役員その他これに類する者を兼任していることが第121条第七号に定める重要な兼職に該当する場合は、当該株式会社と当該他の法人等との関係

第124条第三号
社外役員が当該株式会社又は当該株式会社の特定関係事業者の業務執行取締役、執行役、業務を執行する社員若しくは法第598条第1項の職務を行うべき者その他これに類する者又は使用人の配偶者、三親等以内の親族その他これに準ずる者であることを当該株式会社が知っているときは、その事実(重要でないものを除く。)

③ 会社役員および会計監査人の解任または辞任に関する開示の合理化(会社法施行規則121条及および第126条)

会社法施行規則第121条第七号の規定が第六号に移設されるとともに、改正前第七号および改正前第126条第九号の「当該事業年度中」の文言が削除され、「次に掲げる事項」のかっこ書きで、「当該事業年度前の事業年度に係る事業報告の内容としたものを除く。」と以下のように改正されています。

また、改正前第121条第七号ロおよび改正前第126条第九号ハの「意見があったときは」の文言が、改正後第121条第六号ロおよび改正後第126条第九号ハでは、「意見があるときは」と改正されています。

第121条第六号
辞任した会社役員又は解任された会社役員(株主総会又は種類株主総会の決議によって解任されたものを除く。)があるときは、次に掲げる事項(当該事業年度前の事業年度に係る事業報告の内容としたものを除く。)

イ (略)
ロ 法第345条第1項(同条第4項において読み替えて準用する場合を含む。)の意見があるときは、その意見の内容
ハ (略)

第126条第九号
辞任した会計監査人又は解任された会計監査人(株主総会の決議によって解任されたものを除く。)があるときは、次に掲げる事項(当該事業年度前の事業年度に係る事業報告の内容としたものを除く。)

イ・ロ (略)
ハ 法第345条第5項において読み替えて準用する同条第1項の意見があるときは、その意見の内容
ニ (略)

④ 主要株主に関する開示の合理化(会社法施行規則第122条)

事業報告の内容とすべき「株式会社の株式に関する事項」のうち、主要株主に関する事項について規定している会社法施行規則第122条第一号が以下のように改正され、従前の「当該事業年度の末日において発行済株式(自己株式を除く。)の総数の十分の一以上の数の株式を有する株主」から「当該事業年度の末日において発行済株式(自己株式を除く。)の総数に対するその有する株式の数の割合が高いことにおいて上位となる十名の株主」に改正されるとともに、「当該株主の有する株式に係る当該割合」を開示事項とすることが明記されました。

第122条第一号
当該事業年度の末日において発行済株式(自己株式を除く。)の総数に対するその有する株式の数の割合が高いことにおいて上位となる十名の株主の氏名又は名称、当該株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数を含む。)及び当該株主の有する株式に係る当該割合

(4)その他の改正事項

その他所要の改正(会社法施行規則第119条および第128条)および形式的整備を含む所要の改正(会社法施行規則第132条,第133条,第143条,第167条,第218条および第234条等)。

3. 施行日

本改正省令は平成21年4月1日から施行されます(附則第1条)。

4. 経過措置

① 議案の追加請求の時期に関する経過措置

本改正省令の施行日前に会社法第160条第2項の通知がされた場合の当該通知に係る同条第3項に規定する法務省令で定めるときについては、なお従前の例によるとされています(附則第2条)。

② 単元株式数に関する経過措置

施行日前に定められた単元株式数に関する定款の定めは、なお効力を有するとされています(附則第3条第1項)。

会社法施行規則附則第3条第1項の適用を受ける株式会社(株式等に関する経過措置の適用を受ける株式会社)が施行日以後に単元株式数を変更する場合における同項の規定の適用については、同項中「(法の施行後単元株式数を変更する場合にあっては、千)」とあるのは、「(法の施行後単元株式数を変更する場合にあっては、千及び発行済株式総数の二百分の一に当たる数)」とするとされています(附則第3条第2項)。

③ 創立総会参考書類に関する経過措置

施行日前に招集の手続きが開始された創立総会に係る創立総会参考書類については、なお従前の例によるとされています(附則第4条)。

④ 株主総会参考書類に関する経過措置

施行日以後にその末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る定時株主総会より前に開催される株主総会または種類株主総会に係る株主総会参考書類については、なお従前の例によるとされています(附則第5条)。

⑤ 事業報告等に関する経過措置

施行日前にその末日が到来した事業年度のうち最終のものに係る事業報告およびその附属明細書については、なお従前の例によるとされています(附則第6条)。

⑥ 社債権者集会参考書類に関する経過措置

施行日前に招集の手続きが開始された社債権者集会に係る社債権者集会参考書類については、なお従前の例によるとされています(附則第7条)。

この記事に関連するテーマ別一覧

会社法

企業会計ナビ

企業会計ナビ

会計・監査や経営にまつわる最新情報、解説記事などを発信しています。

一覧ページへ