会計監理トピックス
平成20年5月13日に企業会計基準適用指針第22号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」が、企業会計基準委員会(ASBJ)から公表されました。本適用指針は、監査委員会報告第60号のうち会計上の取り扱いに関する部分について、その内容を引き継いで新たな適用指針を定め、加えて会社法の施行への対応や取り扱いの明確化が必要と考えられる点への対応を図るために検討されたものです。
なお、本稿において意見にわたる部分については、執筆者の私見であり、当法人の公式見解ではありません。
*1月の公開草案段階から変更された点および追加された点には下線を付しています。
1. 適用時期(第30項、第31項)
- 平成20年10月1日以後開始する連結会計年度から適用します。ただし、平成20年9月30日以前に開始する連結会計年度から適用することができます。
*公開草案は、4月1日以後開始の連結会計年度からの適用でしたが、変更されています。 - 本適用指針を適用することにより、これまでの会計処理と異なることとなる場合には、会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱います。
2. 目的と適用範囲(第1項、第2項、第35項)
本適用指針は、連結財務諸表を作成する場合の子会社および関連会社の範囲に関して、連結財務諸表原則、持分法に関する会計基準等を適用する際の指針となります。
また、個別財務諸表における子会社および関連会社株式の範囲、および連結財務諸表を作成していないが、個別財務諸表において連結財務諸表に係る注記を行う場合にも適用します。
*公開草案は、個別上の取り扱いを明確にしていませんでしたが、明示されています。
3. 本適用指針の主な内容
本適用指針は、実質的に監査委員会報告第60号の内容を引き継いだものですが、以下の点について明確化が図られていることが特徴です。
- 他の会社等の意思決定機関を支配していないこと等が明らかであると認められる場合(いわゆるVC条項)の要件を明確化しています。
- 利害関係者の判断を著しく誤らせる恐れがあるため連結の範囲に含めない子会社の具体例および関連会社についても同様の取り扱いをすることを明確化しています。
4. VC条項の明確化(第16項(4)、第24項等)
ベンチャーキャピタル等の投資企業が売却等によるキャピタルゲイン獲得を目的として投資を行う場合、銀行等の金融機関が債権の円滑な回収を目的として投資を行う場合には、他の会社等の意思決定機関を支配する要件に該当しても、実質的に支配していないことが明らかであるときには、子会社に該当しないこととする監査委員会報告第60号2(6)⑤および⑥の取り扱いについて考え方を整理し、具体的な場合を示しています。
また、関連会社の判定についても監査委員会報告第60号3(4)①および②の取り扱いを整理し、同様の内容を示しています。
具体的には、次のすべてを満たすときには、子会社に該当しないことが明示されています(関連会社についても同様です)。
①売却等により当該他の会社等の議決権の大部分を所有しないこととなる合理的な計画があること。
②当該他の会社等との間で、営業取引として投融資を行っているもの以外の取引がほとんどないこと。
③他の会社等の事業の種類は、自己の事業を単に移転したり自己に代わって行うものとはみなせないこと。
④当該他の会社等とのシナジー効果も連携関係も見込まれないこと。
なお、投資企業や金融機関は、実質的な営業活動を行っている会社等であることが必要です。また、出資会社が企業集団内にある場合や投資関係が多層構造をとる場合の考え方として、投資企業等が含まれる企業集団内の他の連結会社(親会社および連結子会社)においても上記②から④の事項を満たすことが適当としています。
*公開草案では、③他の会社等の事業は、自己の事業と明らかに異なるものであること、とされていましたが、上記のように変更されています。
5. 利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがある場合(第19項、第26項等)
連結原則第三.一.4(2)では、連結することにより利害関係者の判断を著しく誤らせる恐れのある会社等は連結の範囲に含めないものとしていますが、本適用指針では、そのような場合は、子会社が匿名組合の営業者となり損益のほとんどすべてが匿名組合員に帰属し、子会社および親会社に形式的にも実質的にも帰属せず、子会社と親会社との取引がほとんどないような限定的な場合であるとしています。
また、関連会社・非連結子会社についても、利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがある場合には、持分法を適用しないことを明示しています。
6. 監査委員会報告第60号について
海外の子会社等が連結財務諸表を作成している場合の連結子会社および持分法適用関連会社の範囲については、実務対応報告第18号により監査委員会報告第60号8の定めは適用されないため、本適用指針には含まれていません。なお、監査委員会報告第60号については、改廃を検討することが適当としています(第32項)。
なお、本稿は企業会計基準適用指針第22号の概要を記述したものであり、詳細については、以下の財務会計基準機構/企業会計基準委員会のウェブサイトをご参照ください。