EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 兵藤 伸考
Question
2023年3月期決算に係る有価証券報告書(以下「有報」という。)における「コーポレート・ガバナンスの状況等」のうち「内部監査の状況」の開示府令の改正対応状況を知りたい。
Answer
【調査範囲】
- 調査日:2023年8月
- 調査対象期間:2023年3月31日
- 調査対象書類:有報
- 調査対象会社:以下の条件に該当する201社
①2023年4月1日現在、JPX400に採用されている
②3月31日決算である
③2023年6月30日までに有報を提出している
④日本基準を適用している
【調査結果】
「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下「開示府令」という。)第二号様式(記載上の注意)(56)b(c)では、「コーポレート・ガバナンスの状況等」のうち「監査の状況」の「内部監査の状況」において、内部監査の実効性を確保するための取組み(内部監査部門が代表取締役のみならず、取締役会並びに監査役及び監査役会に対しても直接報告を行う仕組み(いわゆるデュアルレポーティングライン)の有無を含む。)について、具体的に、かつ、分かりやすく記載することが求められている。
調査対象会社(201社)の有報の「コーポレート・ガバナンスの状況等」のうち「監査の状況」の「内部監査の状況」から、「デュアルレポーティングライン」及び「直接・報告」等をキーワードに分析した結果が<図表1>のとおりである。
「デュアルレポーティングライン」及び「直接・報告」と記載している事例は57社と全体の28.4%であった。また、上記以外の会社は「デュアルレポーティングライン」及び「直接・報告」と記載していないものの、144社のうちほとんどの会社は取締役会又は監査役会等に報告を行う体制である旨を記載していた。
<図表1> 「内部監査の状況」の記載内容の分析
項目 | 会社数 | 比率 |
「デュアルレポーティングライン」の記載あり | 20社 | 10.0% |
「直接・報告」の記載あり | 37社 | 18.4% |
上記以外 | 144社 | 71.6% |
合計 | 201社 | 100.0% |
また、「デュアルレポーティングライン」及び「直接・報告」と記載している事例57社について、報告先の分析を行った結果が<図表2>のとおりである。
大部分の会社では、取締役会並びに監査役及び監査役会(監査等委員及び監査等委員会を含む。)へ直接報告する仕組みであった。
なお、取締役会並びに監査役及び監査役会(監査等委員及び監査等委員会を含む。)のいずれに対しても直接報告する仕組みであった事例は34社(59.6%)であった。
<図表2> 報告先の分析
報告先 | 会社数 | 比率 |
監査役及び監査役会 | 49社 | 86.0% |
(監査等委員及び監査等委員会を含む。) | ||
取締役会 | 41社 | 71.9% |
経営会議 | 5社 | 8.7% |
担当取締役等 | 4社 | 7.0% |
コンプライアンス委員会 | 2社 | 3.5% |
(旬刊経理情報(中央経済社)2023年9月20日号 No.1688「2023年3月期「有報」分析」を一部修正)
この記事に関連するテーマ別一覧
2023年3月期 有報開示事例分析
- 第1回:総会前提出 (2023.11.20)
- 第2回:コーポレート・ガバナンスの状況等①(取締役会及び監査役会等の記載状況) (2023.11.21)
- 第3回:コーポレート・ガバナンスの状況等②(内部監査の状況) (2023.11.22)
- 第4回:コーポレート・ガバナンスの状況等③(株式の保有状況) (2023.11.24)
- 第5回:コロナ/ロシア・ウクライナ関連開示 (2023.11.27)
- 第6回:時価算定適用指針(改正適用指針) (2023.11.28)
- 第7回:グループ通算制度に関する注記 (2023.11.29)
- 第8回:グループ通算制度を適用している会社 (2023.11.30)
- 第9回:グローバル・ミニマム課税制度 (2023.12.01)
- 第10回:早期適用した会計基準(電子記録移転有価証券表示権利等) (2023.12.04)
- 第11回:未適用の会計基準等に関する注記 (2023.12.05)
- 第12回:2年目の収益認識注記開示分析①(重要な会計方針の注記、収益を理解するための基礎となる情報) (2023.12.06)
- 第13回:2年目の収益認識注記開示分析②(収益の分解情報) (2023.12.07)
- 第14回:2年目の収益認識注記開示分析③(当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報) (2023.12.08)