公認会計士 行事 久仁子
Question
平成28年6月第1四半期の四半期報告書で、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性適用指針」(以下「回収可能性適用指針」という。)の注記の開示状況を知りたい。
Answer
【調査範囲】(原則適用会社について)
- 調査日:平成28年9月
- 調査対象期間:平成28年6月30日
- 調査対象書類:四半期報告書
- 調査対象会社:以下の条件に該当する198社
① 平成28年4月1日現在、日経株価指数300に採用されている
② 年度決算日が3月31日であり、平成28年6月30日を第1四半期決算日としている
③ 平成28年8月14日までに四半期報告書を提出
④ 日本基準を採用し、連結財務諸表作成会社である
【調査結果】
(1)原則適用会社における開示
回収可能性適用指針が、平成28年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から原則適用されている。3月決算会社においては平成28年6月第1四半期が原則適用初年度の第1四半期となる。
適用初年度においては、回収可能性適用指針49項(3)に定められる3項目を適用することによりこれまでの会計処理と異なる場合に、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。
一方、回収可能性適用指針を原則適用し、回収可能性適用指針49項(3)に定められる3項目を適用することによりこれまでの会計処理と異なる場合以外のケースにおいては、追加情報において回収可能性適用指針を適用している旨を記載するものと解されている(「四半期報告書の作成要領(平成28年6月第1四半期提出用)」(公益財団法人 財務会計基準機構)P.113 作成にあたってのポイント①)。また、第2四半期以降も同様に追加情報として記載することが考えられる。
調査対象会社198社を調査した結果、原則適用会社196社のうち、会計基準等の改正等に伴う会計方針の変更に関する注記を記載した事例は16社(8.1%)であった。このうち、繰延税金資産、利益剰余金等の影響額を記載した事例は6社(37.5%)であり、残り10社(62.5%)は影響は軽微である旨を記載していた。また、追加情報において原則適用している旨を記載している会社は159社(80.3%)と多数を占めた。このうち、影響額について言及している事例は1社だけあった。
(図表1)原則適用会社196社の開示分析
会社数 |
割合(%) | ||
会計方針の変更 |
影響額を記載 | 6 |
|
軽微 | 10 |
||
小計 | 16 | 8.2 | |
追加情報 | 影響額を記載 | 1 | |
影響額記載なし | 158 | ||
小計 |
159 | 81.1 | |
注記なし | 21 | 10.7 | |
合 計 | 196 | 100 |
(2)早期適用会社における開示
平成28年3月期に回収可能性適用指針を早期適用した会社で、会計方針の変更を記載した会社4社のうち、前連結会計年度の四半期報告書の四半期連結損益計算書及び四半期連結包括利益計算書と当第1四半期連結財務諸表の比較情報に相違がある場合に追加情報としてその旨を記載した事例は2社あった。
(図表2)前期に早期適用した会社の開示分析
会社数 | |
追加情報あり |
2 |
追加情報なし |
2 |
合計 | 4 |
(旬刊経理情報(中央経済社) 平成28年10月20日号 No.1460 「平成28年6月第1四半期『四半期報告書』の開示分析」を一部修正)
この記事に関連するテーマ別一覧
平成28年6月第1四半期 四半期報告書分析
- 第1回:繰延税金資産回収可能性適用指針の適用 (2016.11.28)
- 第2回:会計方針の変更・会計上の見積りの変更 (2016.11.28)
- 第3回:税制改正に係る減価償却方法の変更 (2016.11.28)