外国口座税務コンプライアンス法(FATCA):検証及び宣誓に関する規則案の公表

外国口座税務コンプライアンス法(FATCA):検証及び宣誓に関する規則案の公表

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EY 税理士法人

2017年2月27日
カテゴリー FATCA/CRS

Japan tax alert 2017年2月27日号

2016年12月30日、米国内国歳入庁(IRS)と米国財務省は、FATCAに関し、外国金融機関(FFI)やスポンサー事業体に課せられる検証や宣誓の要件及び契約不履行事由や終了手続きに関する規制案を公表しました。

なお、本規則案において、参加FFI等が負うFATCA遵守状況に係るIRSへの宣誓要件等の変更は、FFI契約(FFI Agreement)の修正によって行うことができるとされています。
もし変更がある場合には、パブリックコメント期間も考慮して、遅くともFFI契約が修正される90日前にはその内容を公表するとしています。

この規定からも、引き続きFATCA遵守状況に関する検証や宣誓の要件の改訂が行われることは明らかであり、IRSは、これまでのFATCA年次報告の状況や初回の宣誓結果を検証することにより、FATCAの運用上強化すべき領域を特定するとともに、適宜、検証・宣誓要件を修正していくものと考えられます。

以下、主な内容について記載いたします。

1. 参加FFI及びコンプライアンスFIの検証及び宣誓について

(1)FFI契約の不履行と参加FFIステータスの取り消しについて

参加FFIに適用されるFFI契約の不履行に関する通知及び参加FFIステータス取り消しに関する手続きとその対応期限が以下の通り、改訂されています。

  • IRSからFFI契約不履行の通知を受領した場合には、(IRSが対応期限の延長に合意する場合を除き)原則、通知を受けた日から45日以内に契約不履行事由を是正、IRSに回答を行う必要があります。当該期限までに適切な対応が行われない場合には、参加FFIステータスが取り消されてしまう可能性があります。
  • 参加FFIステータスが取り消されてしまった場合には、30日以内に、自身が金融口座を保有する各金融機関等に対し、参加FFIステータスが取り消された旨を通知する必要があります。
  • FFI契約不履行やFFIステータス取り消し処分に対する再検討の要請は、かかる契約不履行通知や取り消し通知を受けた日から90日以内に書面にて、行われなければなりません。
  • 参加FFI又は登録みなし遵守FFIとして再登録する場合には、IRSの書面による承認を得る必要があります。

なお、QI制度の運用状況を踏まえると、IRSからのFFI契約の不履行通知の解消には長い時間を要する可能性があります。よって、今回、規定された対応期限は非常に厳しいものとなっており、契約不履行の通知を受けた場合には、対応期間の延長をIRSと交渉する必要があると考えられます。

(2)連結コンプライアンスプログラムの適用及び宣誓について

連結コンプライアンスプログラムの適用を選択したFFIについては、グループ全体のFATCA遵守責任を担うコンプライアンスFIのコンプライアンスプログラムの一環として、定期検証及びIRSに対する宣誓を行う必要があります。連結コンプライアンスプログラムに適用される責任者(Responsible Officer以下、RO)の宣誓要件が以下の通り、修正されています。

  • 連結コンプライアンスプログラムの一部として参加することを選択したFFIの支店は、その所在地がモデル1IGA締結国内である場合には、当該コンプライアンスプログラムの定期検証や宣誓の対象とならないことが明確化されています。
  • 宣誓対象期間終了前の6カ月間において、連結コンプライアンスプログラムに途中参加したFFIについては、次回の宣誓の際に当該期間を含め宣誓を行うことを条件に、当該途中参加期間の宣誓を免除する旨の特別ルールが定められています。

2. スポンサード事業体へのコンプライアンスプログラムの適用及び宣誓について

スポンサード事業体、スポンサード閉鎖的投資ビークル(20名以下の個人により投資されている一定の投資事業体)などのFATCA遵守を担うスポンサー事業体に関する検証及び契約不遵守についての手続き等が明確化されています。

(1)書面によるスポンサー契約の締結とコンプライアンスプログラムの整備

スポンサー事業体は、スポンサード事業体に適用されるFATCA規則又はIGAの顧客確認、源泉徴収、報告に関する要件を各スポンサード事業体に遵守させるのに十分な方針、手続き、プロセスを含むコンプライアンスプログラムを維持しなければなりません。本規則案では、これらの要件を満たす権限をスポンサー事業体に与えることを規定した書面でのスポンサーシップ契約を各スポンサード事業体との間で締結することを義務付けています。なお、スポンサード直接報告NFFEとの契約には、スポンサー事業体が、スポンサード直接報告NFFEの米国人所有者を判断するために必要な情報へのアクセスする権限を付与することを規定する等、一定の特定条項が含まれていなければなりません。

(2)FATCA責任者(RO)による宣誓

各スポンサード事業体において、ROを任命する必要はありませんが、スポンサー事業体のROは、自身及び各スポンサード事業体のFATCA遵守状況を定期的に検証し、宣誓対象期間終了後の翌年7月1日までにIRSに対して宣誓を行わなければなりません。

具体的には、スポンサー事業体としての要件に適合していること、各スポンサード事業体との書面によるスポンサー契約を締結していること、各スポンサード事業体がFATCA要件を遵守していることについて、IRSに対して宣誓を行う必要があります。加えて、スポンサー事業体のROは、自身がスポンサー役を担うスポンサード事業体のための有効な内部統制を構築・維持していることを宣誓しなければなりません。

(3)宣誓対象期間

最初の宣誓対象期間は、スポンサー事業体がスポンサー事業体としての役割を果たすためにGIINの発行を受けた日又は2014年6月30日のいずれか遅い日から満3年経過する日の属する年の末日(その後3暦年ごと)となっています。

なお、スポンサー事業体のROは、宣誓対象期間の途中からスポンサー役を担うことになった、スポンサード事業体がある場合、その既存口座についても宣誓を行う必要があります。ただし、当該スポンサード事業体がすでに既存口座の宣誓を行っている場合や宣誓対象期間の最終日の前2年間の間にスポンサード事業体となった事業体については、次回の宣誓対象とすることを条件に既存口座の宣誓が免除される旨の特別ルールも定められています。

(4)IRSの調査

IRSは、スポンサー事業体がこれらのルールを遵守していることを確認するために、追加情報の提供を求める可能性があります。その結果、スポンサー事業体がFATCA要件を十分に遵守していない可能性があると判断する場合には、第三者による調査を行う可能性があるとしています。

(5) スポンサー事業体のステータスの取り消しについて

スポンサー事業体の契約不履行により、スポンサー事業体及びスポンサードFFIステータスを取り消される可能性があります。ただ、これまでは契約不履行が発生した場合には、すべてのスポンサードFFIに対するスポンサーとしてのステータスは取り消されると規定されていましたが、本規則案ではこのルールが修正され、特定のスポンサード事業体による契約の不履行は、他のスポンサード事業体のステータスには影響が及ばないとされました。

また、スポンサー事業体に適用される契約不履行通知や終了に関するタイムフレームについても、前述の参加FFIに適用されるタイムフレームと整合的な形で明確化されています。

※ 同時に公表された、FATCAに係る追加指針を規定する最終規則及び暫定規則(T.D.9809)、改訂版FFI契約書(Revenue Proc 2017-16)及びQI契約やChapter 3等に関するガイダンス(T.D.9809、REG-134247-16、Revenue Proc 2017-15等)に関しては、EY Japan tax alert 2017年2月8日号及び2017年2月14日号にてご案内しておりますので、そちらも合わせてご高覧ください。

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