新QI契約 - 最終版の公表

新QI契約 - 最終版の公表

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EY 税理士法人

2017年2月14日
カテゴリー FATCA/CRS

Japan tax alert 2017年2月14日号

2016年12月30日、米国内国歳入庁(IRS)と米国財務省は、新QI契約-最終版(Revenue Proc 2017-15)を公表しました。

2016年7月に公表されていた新QI契約案(EY Japan tax alert 2016年8月5日号ご参照)からの大きな変更はありませんが、適格デリバティブ取扱業者(以下「QDD」)に関する経過措置が追加される等、各業界からのコメントの一部が反映されたものとなっています。

新QI契約においては、QI責任者に内部統制の有効性を宣誓することを義務付け、QIガバナンスの強化に重きをおいたものになっていますので、QIである日本の金融機関においては、従来以上に慎重かつ適時・適切な対応が求められることになります。

1. QI契約の更新

2017年1月1日より新QI契約を有効にするためには、2017年3月31日までにオンラインでの更新手続きが必要です。なお、当該更新作業は、FATCAポータルではなく、新たに設置されたQIポータル(QI/WP/WT Application and Account Management System)からの手続きとなります。

さらに、今回のQI契約更新作業においては、前回の契約更新作業のように、ポータルサイトにおいて単にチェックを付すだけではなく、QI専用アカウントをポータルサイト上に開設し、そこに必要な事項を入力して行う必要があり、相応に手間のかかるものとなっています。

https://www.irs.gov/businesses/corporations/qualified-intermediary-system

2. 法人顧客からの特典制限(Limitation of Benefits、以下「LOB」)条項の取得

QIは、日米租税条約上の軽減税率を適用する法人顧客から、当該特典を受ける適格者であることの証明となるLOB条項を含む租税条約表明文書(Treaty Statement)を取得しなければなりません。

本追加情報の取得は、2016年4月に改訂された様式W-8BEN-E及び様式1042‐S上の記載事項と平仄をあわせたものになっています。

新規法人口座に関しては、2017年1月1日より、既存法人口座に関しては、2019年1月1日までにLOB条項を含む租税条約表明文書の取得が必要となります。

さらに、従来、租税条約表明文書は状況の変化がない限り、無期限に有効とされていましたが、今後は様式W-8BEN-E 同様、3年(暦年ベースで丸3年)毎の更新が必要となります。

3. QI契約案からの主な変更点(要旨)

(1)QDDに係る経過措置

2017年1月1日以降、米国株式等を参照する一定のデリバティブ金融商品から支払われる配当見合い額は、米国源泉税の対象となっています。

当該源泉税を回避するためには、QIはQDDステータスの取得が必要となりますが、2017年度は経過措置としてデルタ値が1の対象取引に関する支払いのみが対象とされ、それ以外の取引に係る米国源泉徴収が免除されています。

また、2017年度については、QDD業務において、最善の誠意を持って対応する限り、QDD業務に係る内部統制の有効性についての定期検証および宣誓は対象外となります。    

(2)内部統制に関する宣誓対象期間と対応期限

新QI契約に基づく初回の宣誓対象期間は、2015年度から2017年度の3年間ですが、そのうちの1年間を定期検証の対象年度として選択し、その有効性の検証を行う必要があります。

2015年度あるいは2016年度を定期検証の対象年度として選択する場合は、QI責任者によるIRS宛ての宣誓期限に変更はなく、従前の公表通り、2018年7月1日までに行う必要があります。一方、2017年度を選択する場合には、宣誓期限が6ヵ月延長され、2018年12月31日となりました。

(3)検証人の独立性・適格性

新QI契約案が公表された際には、検証人の独立性に関する基準の明確化が強く要望されていましたが、独立性の判断は、事実関係や状況(QI遵守態勢を構築した者と検証人の関係性や関与度合い等)により判定されるべきであり、一律に決まるものではないという理由から、新QI契約案に記されている以上に詳細なものは、今回公表された新QI契約-最終版においても規定されていません。

なお、新QI契約において、検証人は外部/内部いずれの者でも構わないとされていますが、内部検証人であれば、QI 手続きや関連システムの構築に携わった者等は、独立性を欠くとされています。また、外部検証人においては、個人やチームベースではなく、会社ベースで独立性基準が適用されるべきと明記されています。よって、内部・外部いずれの検証人が、検証を行う場合であっても、検証過程において、独立性を維持するためには、自らの作業を検証する状況ではなく、新たな目で検証を行うことが肝要です。

(4)定期検証におけるサンプリング・過少源泉税額

定期検証において、サンプリングが認められるQI口座数は、50から60と変更されています。また、サンプリング手法の一つとして、スポットチェック手続きも認められることになりました。

サンプリングにより発覚した過少源泉税額において、推定過少源泉税額の総額計算は検証人が行うのではなく、IRSの裁量に委ねられることに変更されています。

(5)新QI契約の有効期間

QI契約の有効期間が3年から6年に延長され、2017年1月1日から有効となる新QI契約は、2022年12月31日まで有効となります。

同時に公表された、外国(法)人に支払う特定の米国源泉所得に係る源泉徴収制度に係る最終・暫定規則(TD 9808、REG-134247-16)、FATCAに係る追加指針を規定する最終規則及び暫定規則(T.D.9809)、改訂版FFI契約書(Revenue Proc 2017-16)、外国金融機関(FFI)等に課せられる検証や宣誓要件に関するガイダンス(REG-103477-14)に関しては、別のニュースレターにてご案内しておりますので、そちらも合わせてご高覧ください。

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