リース会計基準の概要 第2回

2018年2月14日 PDF
カテゴリー 解説シリーズ

公認会計士 井澤依子
公認会計士 江村羊奈子

5.借手の会計処理

(4) 利息相当額の各期への配分方法

利息相当額の各期への配分は、所有権移転ファイナンス・リース取引については利息法しか認められていませんが、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、簡便的な取扱いとして、重要性が乏しく一定の要件を満たした場合には、利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法、または利息相当額を定額法により配分する方法が認められています。

原則 利息法
例外
重要性が乏しい場合
a. またはb. を選択可
a.リース料総額から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法
b.利息相当額をリース期間中の各期に定額法により配分する方法

① 原則(利息法)

リース料を支払利息と元本の支払とに分ける方法は、原則として「利息法」によらなければなりません。

利息法とは、各期のリース債務の未返済元本残高に一定の利率(リース料総額の現在価値が、リース取引開始日におけるリース資産(リース債務)の計上価額と等しくなる利率)を乗じて、支払利息相当額を算定する方法です。

利息法の計算は、自社計算も可能ですが、リース会社に実施してもらい結果表を入手するのか、自社計算によるのかは事前に検討しておく必要があります。

<設例>

リース資産およびリース債務の計上価額が48,000である場合に、割引現在価値が48,000になるような利子率を求めます。割引現在価値が48,000になるような利子率は9.154%ですが、下記の表はその結果を示したものです。

毎回のリース料の金額と現在価値

割引率 0.09154%
回数 返済額 返済額 現在価値
1 ×1 1 31 1,000 992
2 ×1 2 28 1,000 985
3 ×1 3 31 1,000 977
4 ×1 4 30 1,000 970
5 ×1 5 31 1,000 963
6 ×1 6 30 1,000 955
     
55 ×5 7 31 1,000 658
56 ×5 8 31 1,000 653
57 ×5 9 30 1,000 648
58 ×5 10 31 1,000 644
59 ×5 11 30 1,000 639
60 ×5 12 31 1,000 634
  60,000 48,000

1,000÷(1+r%×1/12)+1,000÷(1+r%×1/12)^2+1,000÷(1+r%×1/12)^3・・・・・・+1,000÷(1+r%×1/12)^60=48,000
を満たすr%は9.154%です。

そして、この計算を元に毎回のリース料1,000を元本と利息に区別したものが下記の表となります。

リース債務の返済スケジュール
回数 返済日 毎月末元本 返済合計 元本分 利息分 月末元本
1 ×1 1 31 48,000 1,000 634 366 47,366
2 ×1 2 28 47,366 1,000 639 361 46,727
3 ×1 3 31 46,727 1,000 644 356 46,084
4 ×1 4 30 46,084 1,000 648 352 45,435
5 ×1 5 31 45,435 1,000 653 347 44,782
6 ×1 6 30 44,782 1,000 658 342 44,124
           
55 ×5 7 31 5,842 1,000 955 45 4,887
56 ×5 8 31 4,887 1,000 963 37 3,924
57 ×5 9 30 3,924 1,000 970 30 2,954
58 ×5 10 31 2,954 1,000 977 23 1,977
59 ×5 11 30 1,977 1,000 985 15 992
60 ×5 12 31 992 1,000 992 8 0
  合計 60,000 48,000 12,000  

毎回のリース料は上記の表の元本と利息の区分に従って会計処理されます。

毎回のリース料の会計処理

※ この結果、リース取引を開始したときに計上したリース債務48,000は、第60回目の支払リース料を支出した段階でゼロになります。

※ 減価償却費の計上
(借)減価償却費 9,600  (貸)減価償却費累計額 9,600

※ 減価償却費は、定額法、リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして計算。
48,000×1年/5年×12月/12月=9,600

② 例外

リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合は、次のいずれかの方法によることができます(適用指針第31項)。

a.利息相当額を控除しない方法

b.利息相当額を定額法で配分する方法

a. 利息相当額を控除しない方法
リース料総額から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法によることができます。この場合、リース資産およびリース債務は、リース料総額で計上され、支払利息は計上されず、減価償却費のみが計上されることになります。

利息相当額を控除しない方法

※ 減価償却費は、定額法、リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして計算。
60,000×1年/5年×12月/12月=12,000

b. 利息相当額を定額法で配分する方法
利息相当額の総額をリース期間中の各期に配分する方法として、定額法を採用することができます。この場合、リース資産およびリース債務の計上価額は原則法と同様ですが、その後の支払利息の期間配分額は定額であり、利息相当額は毎期一定となります。

利息相当額を定額法で配分する方法

ここで、重要性が乏しいと認められる場合とは、以下の比率が10%未満である場合です。

なお、分母の「有形固定資産及び無形固定資産の期末残高」は、未経過リース料の期末残高と二重にならないよう、所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース資産の期末残高は除くことが適当であると考えられます。

図

(5) 減価償却の方法

所有権移転外ファイナンス・リース取引の場合、リース資産の減価償却は、原則としてリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして、定額法、級数法、生産高比例法等の中から企業の実態に応じたものを選択適用します。所有権移転ファイナンス・リース取引では自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法による必要がありますが、所有権移転外ファイナンス・リース取引の場合は、その必要はありません(適用指針第27、28項参照)。

なお、法人税法はリース期間定額法で償却するため、定額法以外を採用した場合、申告調整が必要となります。

(6) 少額リース資産および短期のリース取引に関する簡便的な取扱い

以下のいずれかに該当する場合には、個々のリース資産に重要性が乏しいと認められ、賃貸借処理によることができます(適用指針第35項)。

a.重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、リース料総額が当該基準額以下のリース取引

b.リース期間が1年以内のリース取引

c.企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引で、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース取引(所有権移転外ファイナンス・リース取引のみ)

c.の企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引とは、当該リース物件が主要な設備ではない場合が想定されています。また、c.については、一つのリース契約に科目の異なる有形固定資産または無形固定資産が含まれている場合は、異なる科目ごとに、その合計金額により判定することができます。

なお、300万円基準は契約ごとに判断しますので、1物件当たり300万円以下であっても、契約総額が300万円超であれば賃貸借処理は認められませんので注意が必要です。

6.貸手の会計処理

借手側と同様、貸手側についても、ファイナンス・リースについては所有権移転、移転外に関わらず、売買処理しか認められません。

  改正前

改正後

ファイナンス・リース取引

所有権移転ファイナンス・リース取引



売買処理


売買処理

所有権移転外ファイナンス・リース取引

原則・・・売買処理
例外・・・賃貸借処理
売買処理
オペレーティング・リース取引 賃貸借処理 賃貸借処理

(1) ファイナンス・リース取引(貸手)の会計処理方法

以下のA,B,Cの3種類の方法が認められており、取引実態に応じ、いずれかの方法を継続的に適用する必要があります。ただし、AかBの方法を採用する場合は、割賦販売取引において採用している方法との整合性を考慮する必要があります(適用指針第51、61、122項)。

会計処理の種類 適用が想定される
ケース
A リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法 製造業、卸売業等を営む企業が製品、商品を販売するに当たってリースを利用するケースを想定
B リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法 従来行われてきた割賦販売処理を想定
C 売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法 金融取引の性格が強いケースを想定

なお、利息相当額の総額については、原則としてリース期間にわたり利息法により按分(あんぶん)しますが、所有権移転外ファイナンス・リース取引に重要性が乏しいと認められる場合には、定額で按分することができます(リース取引を主たる事業としている企業は除く)。

(2) 設例

所有権移転外ファイナンス・リース取引について、「Bリース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」を採用する場合の会計処理の概要を説明します。

「Bリース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」を採用する場合の会計処理の概要

7.不動産に係るリース取引

土地、建物等の不動産のリース取引についても、ファイナンス・リース取引に該当するか否かの判定を行います。

(1) 土地の取扱い

土地については、経済的耐用年数は無限であることからフルペイアウトのリース取引には該当しないと考えられるため、割安購入選択権が与えられているなど一定の場合を除き、オペレーティング・リース取引に該当するものと推定することとされています(適用指針第19、98項)。

(2) 土地と建物等を一括したリース取引の取扱い

土地と建物等を一括したリース取引(契約上、建物賃貸借契約とされているものも含む)は、原則として、以下のうち実態にあった方法(① から ③)により、リース料総額を合理的な方法で土地に係る部分と建物等に係る部分に分割した上で、ファイナンス・リース取引に係る現在価値基準の判定を行います。

建物等のリース料総額

なお、借手においては、土地の賃料相当額の算出が容易でないことも想定されるため、ファイナンス・リース取引に該当するか否かが売却損益の算出に影響を与えるセール・アンド・リースバック取引を除き、両者を区分せずに現在価値基準の判定を行うことができるものとされています(適用指針第20、99、100項)。

(3) 事前予告をもって解約できるリース取引の取扱い

契約上数カ月程度の事前予告をもって解約できるリース契約のうち、解約不能である事前解約予告期間に係る部分のリース料は、重要性が乏しいため、オペレーティング・リース取引の注記は不要とされています(適用指針第75項)。

8.転リース取引(適用指針第47、73項)

(1) 転リース取引の定義

転リース取引とは、リース物件の所有者からリースを受け、同一物件をおおむね同一の条件で第三者にリースする取引をいいます。

(2) 転リース取引の会計処理

転リース取引において、借手、貸手双方のリース取引がファイナンス・リース取引に該当する場合には、損益計算書上、支払利息、売上高、売上原価等は計上せずに、貸手として受け取るリース料総額と借手として支払うリース料総額の差額を手数料収入として各期に配分し、転リース差益等の科目で計上します。

なお、貸借対照表上、リース債権またはリース投資資産とリース債務は、利息相当額控除後の金額で計上することが原則ですが、利息相当額控除前の金額で計上することが認められており(重要性を考慮する必要がありません)、その場合はそれぞれの金額を注記する必要があります。

設例、所有権移転外ファイナンス・リース取引

以下の仕訳において、通常の所有権移転外ファイナンス・リース取引と転リース取引との相違点は網掛け部分になります。

通常の所有権移転外ファイナンス・リース取引、転リース取引の会計処理

9.セール・アンド・リースバック取引

(1) セール・アンド・リースバック取引の定義

セール・アンド・リースバック取引とは、所有する物件を貸手に売却し、貸手から当該物件のリースを受ける取引をいいます(適用指針第48項)。

セール・アンド・リースバック取引の定義

(2) セール・アンド・リースバック取引の会計処理

① リース取引がファイナンス・リース取引の場合(適用指針第49項)

通常のファイナンス・リース取引に係る会計処理に加え、A社からB社の資産売却、B社からA社のリース取引を一連の取引として扱い、A社の資産売却損益について以下の会計処理を行います。

  • A社は物件売却に伴う損益を繰延処理し(長期前払費用または長期前受収益等)、リース資産の減価償却費に加減して損益に計上します。
  • ただし、物件売却に伴い損失が発生した場合で、その損失が合理的な見積市場価額が帳簿価額を下回ることにより生じたものであることが明らかな場合には、繰り延べずに売却時の損失として計上します。

② リース取引がオペレーティング・リース取引の場合

A社からB社の資産売却、B社からA社のリース取引は個別の取引として、それぞれ通常の賃貸借処理を行います。

(3) その他の留意点

① ファイナンス・リース取引に該当するか否かの判定

当該判定に際しては、ファイナンス・リース判定基準(第1回4(2)参照)に従いますが、以下の点に留意が必要です(適用指針第48項ただし書き)。

  • 経済的耐用年数
    →リースバック時におけるリース物件の性能、規格、陳腐化の状況等を考慮した経済的使用可能予測期間を用いる
  • リース物件の見積現金購入価額
    →実際売却価額を用いる

② 転リースした場合の会計処理

転リースした場合の会計処理

以下の条件をすべて満たした場合には、A社からB社への売却損益は繰延処理せず損益に計上することができます(適用指針第50項)。

  • 転リースが、セール・アンド・リースバック取引によるリース物件と同一で、おおむね同一の条件でリースする場合
  • 転リース(貸手)がファイナンス・リース取引に該当する場合
  • 取引の実態から売買損益が実現していると判断される場合

10.連結上の取扱い

(1) ファイナンス・リース取引の判定(現在価値基準)(適用指針第18項)

ファイナンス・リース取引の判定を現在価値基準で行うに当たっては、必要に応じて親会社のリース料総額および連結子会社のリース料総額を合算した金額に基づき判定を行います(重要性がない場合を除く)。例えば、子会社のリース契約に親会社が残価保証するようなケースについては、子会社の個別決算上の判定と連結上の判定が異なることが考えられます。

(2) 重要性の判定(適用指針第33項)

借手の所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース資産総額に重要性が乏しい場合には、利息相当額の調整において簡便的な方法が認められていますが(第2回5(4)参照)、連結財務諸表においては、この重要性の判定を連結財務諸表の数値を基礎として見直すことができます。

従って、親会社では重要性がなく簡便的な方法を、子会社では重要性があるため原則的な方法を採用している場合、連結財務諸表の数値で見直した結果、連結全体として重要性がない場合には、子会社分についても連結上調整を行うことで簡便的な方法を用いることができます。

(3) 連結会社間でリース取引を行う場合の留意点

「連結財務諸表におけるリース取引の会計処理及び開示に関する実務指針」のポイントは以下のとおりです。

① 借手の資産計上額と貸手の購入価額が相違する場合、連結会社間で利息相当額の取扱いが異なる場合
→ 連結上は原則として貸手の購入価額(外部調達価額)により固定資産計上し、減価償却を行う(借手の資産計上額と貸手の購入価額の差額に重要性が乏しい場合を除く)。

② 会計基準適用初年度開始前のファイナンス・リース取引について、借手・貸手ともに賃貸借処理を行う場合
→ 連結上は、貸手のリース資産を自社用資産に振り替えるとともに、両者の注記金額から当該取引分を控除する。

③ 販売益が生じている物件を第三者にリースした場合(貸手)
→ 例えば親会社が子会社に製品を販売し、子会社が第三者に当該製品をリースした場合、親会社で計上される製品の売却益が、連結上はリース物件の販売益(リース適用指針第56項)として取り扱われることとなる(販売益に重要性が乏しい場合を除く)。

11.財務諸表上の注記

リース取引の注記として必要な項目は以下のとおりです。

ファイナンス・リース取引の借手側は、その主な内容(主な資産の種類等)および減価償却の方法を注記しますが、重要性が乏しい場合(適用指針第32項と同様)には注記不要です。

オペレーティング・リース取引については、従来と同様の注記を行います。

  借手
貸手
ファイナンス・リース取引の注記(会計基準第19、20、21項、適用指針第71項)
  • リース資産の内容(主な資産の種類等)
  • 減価償却の方法(財規8の6 I ①)

※重要性が乏しい場合(適用指針第32項参照)は不要

①リース投資資産について、

  • リース料債権(将来のリース料を収受する権利)部分の金額
  • 見積残存価額(リース期間終了時に見積もられる残存価額で借主又は第三者による保証のない額)部分の金額
  • 受取利息相当額

②リース債権及びリース投資資産に係るリース料債権部分の金額について、貸借対照表日後5年内における1年ごとの回収予定額及び5年超の回収予定額(財規8の6 I ②)

※①②いずれも重要性が乏しい場合(適用指針第60項参照)は不要

③ファイナンス・リース取引の会計処理(適用指針第51項、図表2参照)のいずれを採用しているかを重要な会計方針に記載(適用指針第72項)。

既存のリース取引について例外規定を適用した場合の注記(適用指針第79、82項)

(例外その2)

  • 引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用している旨
  • 改正前基準で必要とされていた事項(適用指針付録1)(財規附則9 III ①)

(例外その1)

(リース取引を主たる事業とする企業のみ)原則的な取扱いをした場合との税引前当期純損益との差額の注記(適用指針第83項、財規附則9 III ③)

(例外その2)

  • 引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用している旨
  • 改正前基準で必要とされていた事項(適用指針付録2)(財規附則9 III ②)
オペレーティング・リース取引の注記(会計基準第22項、適用指針第74、75項)

解約不能のものに係る未経過リース料を、貸借対照表日と1年以内のリース期間に係るものと1年超のものとに区分して注記

※ 重要性が乏しい場合は不要(財規8の6 II)

同左
転リース取引に係る注記(適用指針第73項)

リース債権又はリース投資資産とリース債務を利息相当額控除前の金額で計上する場合は、以下の金額を注記

  • リース債権又はリース投資資産
  • リース債務

※ 重要性が乏しい場合は不要(財規8の6 III)

12.税務の扱い

法人税については、平成19年度の税制改正において、リース会計基準の改正に対応して税務の取扱いが変更されています。消費税については、会計上、少額・短期のファイナンス・リース取引について賃貸借処理を行う場合、リース開始時に一括して仕入控除税額の計算を行うのが原則ですが、課税期間ごとの分割控除も認められている点に留意が必要です。

(1) 会計と税務の異同について

以下、リースの借手側について会計と税務の異同をまとめています(○:一致、△:一部不一致、×:不一致)。

  会計 法人税 消費税
ファイナンス・リース取引(※4) 【原則】
売買処理
税務上も売買処理のため、原則調整不要(※1)。 税務上も売買処理のため、原則調整不要(リース開始時に仕入税額控除)だが、利息相当額の取扱いに相違が生じる可能性あり(※2)。
【少額・短期リースの例外】
賃貸借処理(※4)
税務上は売買処理だが、会計上の賃借料が税務上の償却費に含まれると規定されているため、原則調整不要。 税務上は売買処理のため、仕入税額控除されるのは、リース開始時。調整が必要(※3)。
オペレーティング・リース取引(※4) 賃貸借処理  
税務上も賃貸借処理。
消費税はリース期間にわたって仕入税額控除。

※1 所有権移転外ファイナンス・リース取引について、会計上利息相当額を控除しても(利息法、定額法)、控除しなくても、原則として調整不要。

※2 消費税上は、利息相当額が契約上明示されていない場合、リース料総額を課税仕入として仕入税額控除されるため、会計上利息相当額を控除する場合に相違が生じる。

※3 仕入税額控除をするためには、リース開始時に一括して仮払消費税等を債務計上することが原則である。他方、賃借人が賃借処理を行っている場合には、賃借処理に応じた取扱いが認められており、この場合には課税期間ごとの分割控除も認められる。

※4 ファイナンス・リース取引の判定基準について、会計と税務とで若干の相違がある(会計上はフルペイアウトを判定するのに現在価値基準を用いるが、税務上は現在価値ではなくリース料総額を用いる)。

(2) 適用開始時期の相違による影響

会計と税務においては、以下のように適用開始時期が異なるため、例えば12月決算会社が平成20年4月に契約・取引開始する所有権移転外ファイナンス・リース取引については、会計上は通常賃貸借処理される一方(早期適用等のケースを除く)、税務上は売買処理に変更されており、税務上の調整が必要となる可能性があるという論点がありました。

改正後の適用開始時期

① 改正後の会計基準
  →平成20年4月1日以後開始事業年度から取引開始される契約について適用

② 改正後の税法
  →平成20年4月1日以後に締結される契約から適用開始

なお、適用の基準が税務上は契約締結時点、会計上は取引開始時点と相違しているため、3月決算会社には影響がないように、平成20年4月1日前に契約締結したリース取引について、会計基準適用初年度開始前のリース取引として取扱うことができるように手当てされています(適用指針第86項)。

13.リース資産の管理と内部統制との関係

内部統制報告制度(以下、J-SOX)に関し、リース取引においては内部統制上、以下のような点に特に留意が必要と考えられます。

(1) ファイナンス・リースの判定等、文書化の重要性

ファイナンス・リース取引か否かの判定や、利息法によるべきかどうかなどの重要性判定について、これらの検討が適切になされていることを文書化し、事後的に説明できるようにしておくことが重要です。また、選択可能な処理については、どのような方法を選択するのか検討を行い、文書化しておく必要があります。具体的には、以下のような項目が挙げられます。

① リース取引ごとの文書化

  • ファイナンス・リース取引の判定(現在価値基準、経済的耐用年数基準)の検討過程
    維持管理費用相当額、残価保証の有無と取扱い
    割引率の選定根拠
  • 所有権移転外か否かの判定

② リース取引全体に係る会計処理

  • リース資産総額に重要性が乏しいか否かの文書化
  • 個々のリース資産に重要性が乏しい場合の会計処理方針

(2) 減価償却計算

リース資産の減価償却計算を行う仕組みを整備する必要があります。減価償却計算は年度末に行うだけでなく、四半期決算においても、計算することが必要な点にも注意する必要があります。

四半期決算における減価償却費は、年度決算と異なり、合理的な予算制度を利用することが可能とされています。この簡便的な処理とは、年度の予算を策定している場合には、当該予算に基づく年間償却予定額を期間按分(あんぶん)する方法により、四半期会計期間または期首からの累計期間の減価償却費として計上することができるというものです。

いずれにしても、減価償却計算は、年度決算と四半期決算の財務報告手続きの一つとして、位置づけられることになります。下記、(3)に示すような台帳を作成して、減価償却計算を行うのも対応の一つだと思います。

(3) リース資産の管理・保全

賃貸借処理であれば、注記の開示が必要な決算のタイミングで、その都度リース会社から情報を収集することで足りますが、ファイナンス・リース取引の場合、売買処理が原則であることから、資産の保全という観点から、リース資産台帳を作成し、実物の存在を確認することも考慮しておく必要があります。

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