公認会計士 山岸 聡
3.金融商品の状況に関する事項(適用指針3項)
金融商品の状況に関する事項を注記するに当たっては以下の点に留意します。
(1) 金融商品に対する取組方針
① 金融資産であれば、資金運用方針、金融負債であれば資金調達方針およびその手段(内容)、償還期間の状況などが含まれます。
② 金融資産と金融負債との間または金融商品と非金融商品との間に重要な関連が認められる場合、当該重要な関連の概要について記載します。
③ 金融商品の取り扱いが主たる業務である場合には、当該業務の概要について記載します。
(2) 金融商品の内容およびそのリスク
① 取り扱っている主な金融商品の種類(例えば、有価証券の場合には、株式および債券等、デリバティブ取引の場合には、先物取引、オプション取引、先渡取引およびスワップ取引等)および主な金融商品についての説明が含まれます。
② 金融商品のリスクには、市場リスク(市場の相場その他指標の数値の変動によるリスク)、信用リスク(取引相手先の契約不履行に係るリスク)、資金調達に係る流動性リスク(支払期日に支払いを実行できなくなるリスク)が含まれます。
③ 金融商品に係る信用リスクが、特定の企業集団、業種または地域等に著しく集中している場合には、その概要(貸借対照表計上額および契約額に対する当該信用リスクを有する取引相手先の金額の割合を含む)を記載します。
(3) 金融商品に係るリスク管理体制
① リスク管理方針、リスク管理規程、リスク管理部署の状況およびリスクの減殺方法または測定手続等が含まれます。
② 金融資産および金融負債がそれぞれ資産の総額および負債の総額の大部分を占めており、かつ当該金融資産および金融負債の双方が事業目的に照らして重要である会社にあっては、当該金融資産および金融負債の主要な市場リスクの要因となる当該指標の数値の変動に対する当該金融資産および金融負債の価値の変動率(感応度)の重要性がある場合には、次の(ア)または(イ)の事項を記載します。
(ア) 市場リスクに関する定量的分析を利用している金融商品
当該分析に基づく定量的情報およびこれに関連する情報
(イ) 市場リスクに関する定量的分析を利用していない金融商品
リスク変数の変動を合理的な範囲で仮定して算定した時価の増減額およびこれに関連する情報
(4) 金融商品の時価等に関する補足説明
金融商品の時価に関する重要な前提条件などが含まれます。
【記載内容の例示】
(1) 金融商品に対する取組方針
- 資金運用は短期的な預金等に限定している旨
- 資金調達は銀行借入によっている旨
- デリバティブは、借入金の金利変動リスクを回避するため等の目的のために利用し、投機的な取引は行わないこととしている旨
- 事業目的に沿った設備投資計画から必要な資金を調達している旨
- 余資は安全性の高い金融資産で運用している旨
など
(2) 金融商品の内容およびそのリスク
- 営業債権としての受取手形および売掛金が信用リスクにさらされている旨
- 営業債務としての支払手形および買掛金が為替リスクにさらされている旨
- 為替リスクにさらされているため先物為替予約を利用している旨
- 保有する有価証券および投資有価証券は取引先企業の株式である旨
- 有価証券が市場価格の変動リスクにさらされている旨
- 借入金が金利リスクにさらされている旨
- 金利リスクをヘッジするために金利スワップ取引を利用している旨
など
(3) 金融商品に係るリスク管理体制
- 信用リスクの管理は与信管理規程や債権管理規程によって管理している旨
- 取引相手ごとに期日および残高を管理している旨
- デリバティブ取引は格付の高い金融機関とのみ取引を行っている旨
- 為替リスクの管理は通貨別に行っている旨
- 金利変動リスクを抑制するために金利スワップ取引を利用している旨
- 有価証券および投資有価証券は、定期的に時価や発行体(取引先企業)の財務状況等を把握している旨
- 資金調達に係る流動性リスク(支払期日に支払いを実行できなくなるリスク)の管理は、財務部が適時に資金繰り計画を作成・更新している旨
- 手許流動性を月間売上高の一定期間に維持している旨
など
この記事に関連するテーマ別一覧
金融商品の時価等の開示
- 第1回: 概要 その1 (2009.08.20)
- 第2回: 概要 その2 (2009.08.21)
- 第3回: 概要 その3 (2009.09.01)
- 第4回: 実務上のポイント その1 (2009.12.04)
- 第5回: 実務上のポイント その2 (2009.12.08)
- 第6回: 実務上のポイント その3 (2009.12.14)