金融商品の時価等の開示 第1回: 概要 その1

2009年8月20日
カテゴリー 解説シリーズ

公認会計士 山岸 聡

1.目的

金融商品全般に関する開示の充実を図る目的で「金融商品に関する会計基準」(以下、改正基準)および企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」(以下、適用指針)が公表されました。

時価等の開示情報の充実を図り、従来の注記による有価証券やデリバティブ取引についての情報開示が、金銭債権や金銭債務等の金融商品全般に対象範囲が拡大され、各項目に関する定性的情報および定量的情報の開示項目が拡大されました。

ただし、重要性が乏しいものは注記を省略することができます。さらに、連結財務諸表において注記する場合、個別財務諸表における記載は不要という扱いになっています。

2.適用指針の内容

(1) 開示の内容

金融商品の状況に関する事項(定性的情報)と金融商品の時価等に関する事項(定量的情報)を開示しますが、それぞれの内容をまとめると以下のようになります。

金融商品の状況に関する事項(会計基準40‐2(1)、適用指針3)
⇒ 定性的情報
① 金融商品に対する取組方針
② 金融商品の内容およびそのリスク
③ 金融商品に係るリスク管理体制
④ 金融商品の時価等に関する事項について補足説明
金融商品の時価等に関する事項(会計基準40‐2(2)、適用指針4)(※1)
⇒ 定量的情報
① 金融商品に関する科目ごとに貸借対照表計上額
② 貸借対照表日における時価(※2)
③ 貸借対照表計上額と時価の差額
④ 時価の算定方法

(※1)有価証券、デリバティブ取引、金銭債権および満期がある有価証券(売買目的を除く)、社債・長期借入金・リース債務およびその他の有利子負債、金銭債務については、別途追加的な開示項目を記載する規定があります(適用指針4項)。

(※2)時価を把握することが極めて困難なため、時価を注記しない場合は、金融商品の概要、貸借対照表計上額およびその理由の注記が必要です(適用指針5項)。

定性的情報全体のイメージ

定性的情報全体のイメージ

(2) 適用時期

改正基準および適用指針は、金融業等における市場リスクの定量的情報を除いて、原則として平成22年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用されます。

また、リスク管理体制に関する事項のうち、リスク変数の変動に係る感応度が重要な企業について必要とされる事項(適用指針3項(3))は、開示を翌期からとすることができます(適用指針7項)。

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