公認会計士 浦田 千賀子
【ポイント】
減損損失の測定とは、減損金額がいくらになるかを検討するステップのことです。
減損会計の第4段階は、減損損失の測定です。このステップでは、減損を実施する必要があると認識された固定資産について、モトが取れないと見込まれる金額がいくらになるかを検討します。これにより、減損損失の金額が明らかになります。
減損損失の金額は固定資産の簿価マイナス回収可能価額で求められます。
回収可能価額とは、①使用価値と②正味売却価額のいずれか高い方の金額です。資産を保有して使用するよりも売却した方が得られるキャッシュ・フローが大きければ、売却を選択するであろうという想定に基づき、適用指針において、通常、使用価値は正味売却価額よりも高いと考えられています。つまり、減損損失の測定において明らかに正味売却価額が高いと想定される場合や処分がすぐに予定されている場合などを除き、必ずしも正味売却価額を算定する必要はないことになります。
【ポイント】
回収可能価額とは、①使用価値と②正味売却価額のいずれか高い方の金額である。
① 使用価値...資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値
② 正味売却価額...資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される金額
① 使用価値
使用価値とは、資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値のことです。
下記の事例を見てみましょう。
- 会社は、×1年~×4年まで、資産を利用することを予定している(×4年に処分予定)。
- 割引率は1.5%とする。
使用価値とは、将来キャッシュ・フローを現在価値に割引計算したものです。認識ステップでは、減損の存在が相当程度に確実かどうかを判断するため、割引前の将来キャッシュ・フローを用いましたが、減損損失を具体的に算出する際には、貨幣の時間価値などを考慮して割引計算した後の回収可能価額を用いて、固定資産の簿価と比較する必要があります。
② 正味売却価額
正味売却価額とは、資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される金額のことです。
資産の時価は以下のように把握することになります。
減損損失を測定するステップでは、より厳密に正味売却価額を検討する必要があります。従って、上記のような客観的な指標に基づいて、時価を算定する必要があるのです。
これらのステップを経由して減損損失を測定した後、会計処理・表示のステップを経て、財務諸表に記載されることになります。
この記事に関連するテーマ別一覧
わかりやすい解説シリーズ「減損会計」
- 第1回:減損会計の概要 (2015.12.11)
- 第2回:資産のグルーピング (2016.09.07)
- 第3回:減損の兆候 (2016.09.15)
- 第4回:減損損失の認識の判定 (2016.09.26)
- 第5回:減損損失の測定 (2016.09.30)