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第1章
モビリティの5分類
パンデミック下の消費者行動を通して得られるEV普及拡大につながるインサイト
世界的に見てもEVシフトは現実的であるでしょう。しかし、パンデミック下の消費者行動から、EVの普及、さらには飛躍的な成長に関し、どのようなインサイトが得られるでしょうか。
この点について消費者の行動と選択の決定要因への理解を深めるため、移動手段の特徴に着目し消費者を5つのタイプに分類しました。
1つの問題、異なる解決策
この分類により、パンデミック下の移動に関する消費者の行動習慣について、何が明らかになったのでしょうか。注目すべき点の1つは、同一の要因が異なる結果につながり得ることです。これは、功利的移動者(Expedient Movers、EM)と都市内移動者(Municipal Passengers、MP)の2つのタイプを深堀りした結果、判明しました。
これらの2つのグループには共通点が多く見られます。双方が、ビフォーコロナでは、中~高程度の移動ニーズがあり、移動手段の選択肢が豊富な都市部に居住し、大多数が週に5時間以上を移動に費やしていました。
しかし、移動に関してほぼ同様の選択肢に対して、共通したニーズがあり、共にアクセス可能であったにもかかわらず、両者はまったく異なる解決策を選択しています。
EMの流儀は車を選択することです。大多数(72%)が自動車所有者であり、40%は、週に3回以上マイカーを利用しています。公共交通機関を週に3回以上利用しているのは13%に過ぎません。
対照的にMPでは、公共交通機関が既定の選択です。現在自動車を所有しているのは3分の1未満(30%)です。60%が週に3回以上利用しており、マイカーを同頻度で利用しているのはわずか15%です。
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第2章
「グリーンギャップ」
パンデミックは、交通に関する環境感度を高めていない。
この結果となったのは、より環境に配慮した生活様式を実践したい意欲より、家庭内のニーズ、利便性、経済的要因が重視されるためと見られます。2つのグループに共通して、環境によい生活に対する肯定的な感情は、それぞれ、37%、42%と低水準に留まっています。パンデミックを原因とした移動手段を選択する上での環境感度も、さほど高まっておらず、双方とも6%上昇したに過ぎません。事実、両タイプにおいては、現実的な理由に基づいて選択が行われていることが窺えます。
これは、高まりつつある世間の気候変動に対する意識とは食い違っており、モビリティにおいて「グリーンギャップ」が存在することを示していると見られます。自身が行う個々のサステナブルな選択が、実際に変化につながることを、消費者は実感できていないようです。
購買意欲
意識、属性、移動手段の選択に大きな差異があるにもかかわらず、EM、MP双方に、自動車購入に関して大きな機会が生じています。両タイプの現自動車所有者の20%超が3カ月以内に買い替えを予定していると回答しました。また、自動車非所有者EMの44%と同MPの20%が6カ月以内に購入を予定しています。
政策に後押しされ、グリーンなEVを手ごろな価格で購入できるようになりました。そして、「グリーン購入(環境に配慮した購買)」に対する消費者の意欲は高まっています。業界が直面する課題は、その意識を現実の普及につなげることです。EVを十分に浸透させるためには、消費者にはさらなる誘因が必要かもしれません。
正しい選択をする
ビフォーコロナ時代より、政府・業界の双方が、交通分野における低炭素化の実現には、よりサステナブルなモビリティへのシフトが不可欠との見解を示していました
しかし、アフターコロナの消費者行動により、これは著しく制限される可能性があります。公共交通機関および移動手段のシェアリングは、経済的にも、利用者の安全衛生に対する意識においても、大きな打撃を受けました。利用状況が以前の水準に戻るのには時間を要するでしょう。一方で、消費者が自動車の利用をやめる兆候は見られません。自動車は利便性、快適さ、個人的な空間を備えていますが、今では感染リスクの低さという追加的要因が加わっています。
今後、消費者が「正しい」乗り物を選択することが、低炭素化の進展に対してより大きな影響を及ぼすでしょう。排出量に基づく規制により非ICE車の利用可能性が向上し、消費者の購入意欲は高まっています。他方、移動手段の決定において、サステナビリティと環境への影響は、依然として、衛生、利便性、快適さの脇役に甘んじています。
「グリーンギャップ」に取り組む
デジタル市場での経験から得られる教訓とは、支持者は補助金に勝るというものです。デジタルを活用する消費者は、専門販売員や従来の割引よりも、所有者や支持者の影響を受けやすいことが明らかになりました。スマートフォンの新モデル発売時に、料金を割り引く必要はありません。利用者が熱心な伝道者となり仲間に購入を薦めてくれるからです。
これとは対照的に、補助金は長期的には非経済的です。購入者の社会的名声や、売上増加とコスト低下による供給サイドでの好循環につながるわけでもありません。それにもかかわらず、今日に至るまで、EVのインセンティブの大半は、支持者からの推奨ではなく、補助金です。
EY分析では、主流のEVの購入を動機付けるために、支持者からの推奨がより大きな役割を果たせる可能性が示唆されています。自身が現実的かつ責任ある購入をしているという確証を得たい購入者に対しては、メーカーや販売員よりも、そのような車両をすでに所有している友人の意見の方が、大きな影響力があるでしょう。また、このような購入者は、EVは社会的な責任を果たしている証であるという考え方について、従来の情報チャネルではなく、個人的なネットワークからのほうが受け入れやすい傾向があります。
本調査結果から明らかになった消費者行動の多様性に対し、メーカーも、EVに関する多様な顧客体験を提供する必要があります。モビリティにおける新たな消費者ニーズに対応するため、例えば、電力事業者と協働して、電力料金に充電コストを組み込むことが考えられます。また、インフラ事業者が誰でも利用できる複数の充電ネットワークへのアクセスを提供する、あるいは、超小型モビリティ事業者や公共交通機関が、網羅的で利便性が高く、費用対効果の高い複合モビリティパッケージを提供し、将来的には、複数のモビリティハブを設置することも有効かもしれません。
EYの最新の見解
サマリー
私たちは、EVの普及に重大な変化が生じ得る転換点に立っています。しかし、消費者の多くが思い惑っています。現在の課題は、いかにして行動変容を促すか、EVの購入、所有、利用のあり方を刷新し、可能な限り多くの消費者を決断に導く斬新なインセンティブを創出することです。