情報センサー2023年5月号

減損会計(グルーピング)

2023年4月28日 PDF

情報センサー2023年5月号 企業会計ナビ ダイジェスト

EY新日本有限責任監査法人 企業会計ナビチーム 公認会計士 鎌田 光蔵

監査部門に所属し、主に製造業、不動産業、情報サービス業の監査など、上場準備会社を含む会計監査に携わる傍ら、雑誌への寄稿、法人ウェブサイト(企業会計ナビ)に掲載する会計情報コンテンツの執筆に携わっている。

当法人ウェブサイト内の「企業会計ナビ」より「解説シリーズ『減損会計』第3回:グルーピング」を紹介します。

Ⅰ はじめに

減損会計では、減損損失の認識・測定を行う単位としての資産グループを決定する必要があります。資産グループとは、他の資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位です。

Ⅱ 資産のグルーピング(グルーピングを行う単位)

資産のグルーピングは、他の資産または資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位で行いますが、グルーピングの方法で減損損失の計上額が異なります。

<図1>のような4つの資産グループがあったとします。グルーピングの方法(ア)から(エ)の違いによって減損損失に計上される金額が異なってきます。

図1 グルーピングの違いによる減損損失計上額

(ア) 各資産を1つのグループとする場合
資産Bと資産Dから減損損失が計上されることになります。

(イ) 資産Aと資産Bを同じグルーピングとする場合
資産Dから減損損失が計上されることになります。

(ウ) 資産Cと資産Dを同じグルーピングとする場合
資産Bから減損損失が計上されることになります。

(エ) 資産A、B、C、Dを同じグルーピングとする場合
減損損失が計上されないことになります。

Ⅲ グルーピングにおける基本的な考え方

資産のグルーピングは、管理会計上の区分や投資の意思決定を行う際の単位などを考慮してグルーピングの方法を定めることになります。具体的には、次のような点に留意してグルーピングを行います。


① 必ずしも企業の外部との間で直接的にキャッシュ・フローが生じている必要はありません。つまり、内部振替価額や共通費の配分額であっても、合理的なものであれば含まれます。

内部振替価額とは、例えば<図2>に示すように、社内における工場と営業所の損益を算定するために設けた社内価格のことです。減損会計では、基本的に収入と支出の両方を把握している単位を識別しますが、<図2>のような場合、直接的には営業部に帰属するキャッシュ・イン・フローを工場にも帰属するものとして取り扱うこととしました。

この場合、工場におけるキャッシュ・イン・フローは社内価格である120となりますが、工場と営業部は別個のグルーピングとなります。

図2 内部振替価額とは

② 賃貸不動産などの1つの資産において、一棟の建物が複数の単位に分割されて、継続的に収支の把握がなされている場合でも、通常はこの1つの資産がグルーピングの単位を決定する基礎になります。

③ グルーピングの単位を決定する基礎から生ずるキャッシュ・イン・フローが、製品やサービスの性質、市場などの類似性等によって、他の単位から生ずるキャッシュ・イン・フローと相互補完的であり、当該単位を切り離したときには他の単位から生ずるキャッシュ・イン・フローに大きな影響を及ぼすと考えられる場合には、当該他の単位とグルーピングを行います。

相互補完的とは、複数のグルーピングの単位を決定する基礎が生み出す製品やサービスの性質、市場などに類似性等があり、それらから生ずるキャッシュ・イン・フローが相互に補完的な影響を及ぼしあっている場合をいいます。この場合、補完関係にある複数の単位を一体としてグルーピングすることが適当です(<図3>参照)。

図3 相互補完的である場合のグルーピング

例えば、A製品とB製品という同種の製品ラインナップを有する企業があり、顧客がA製品を購入すると、B製品が購入されない場合、A製品を製造するための資産Aグループと、B製品を製造するための資産Bグループのキャッシュ・イン・フローは相互補完的であると考えられます。

Ⅳ 資産のグルーピングと遊休資産の関係

1. 遊休資産

遊休状態とは、企業活動にほとんど使用されていない状態をいい、また、そのような状態にある資産を遊休資産といいます。この遊休資産のうち、将来の使用が見込まれていないもので重要なものについては、他の資産または資産グループとは別の資産グループとして取り扱うことになります。


2. 遊休資産の回収可能価額

遊休資産の回収可能価額については、将来の使用が見込まれていないという前提から、使用価値はゼロであることが推定されるので、通常、回収可能価額は、正味売却価額となります。


3. 遊休資産というグルーピングは可能か

処分の意思決定を行った重要な資産や、廃止の意思決定を行った事業に係る重要な資産、将来の使用が見込まれていない重要な遊休資産は、これらを「遊休資産」としてグルーピングすることはできません(<図4>参照)。

図4 「遊休資産」というグルーピングの可否

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