3. 判断マニュアルや判定フロー等の整備
新リース会計基準案によると、「契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、当該契約はリースを含む」とされており、契約にリースが含まれているかどうかについて、会計基準に精通しない方が判断するのは難しい状況です。また、リースと判断された取引をオンバランス処理する過程においても、いくつか判断を求められる項目があり、その中でも、「リース期間」は、その判断がオンバランス額に大きな影響を及ぼすため特に重要な項目です。しかし、新リース会計基準案では「解約不能期間に、行使することが合理的に確実な延長オプション期間と、行使しないことが合理的に確実な解約オプション期間を加えてリース期間を決定する」とされており、リース期間の判断についても会計基準に精通しない方が判断するのは難しい状況です。そのため、リース期間やそれ以外に判断が必要な項目について、適用指針において示されている設例も活用しながら、会社としての判断マニュアルや判定フロー等を整備していく必要があります。
特に、関係部署において「リースを含むかどうかの判断」や「リース計算要素に関する判断」を行い、その内容を契約管理システムに登録するような業務フローを構築する場合には、各関係部署の担当者が理解できるような判断マニュアルや判定フロー等を整備する必要があります。
4. 稟議書、決裁書のフォーマットの見直し
リースは、本社や工場、支店、営業店舗、倉庫等の不動産賃貸借契約や、車両リース、ITサービス契約に含まれるネットワーク設備機器使用契約、複合機リースの契約、従業員の社宅契約等、さまざまな契約に含まれており、おのおのの契約を担当する各部署の契約実務に影響が及ぶことが想定されます。そのため、会計処理の要となる経理部門(又は、リースのオンバランス処理を集中管理する固定資産管理部門等)も、どのようなリース物件がどのような条件で締結されようとしているのか等が早期に把握できるように、稟議書、決裁書等のフォーマットの見直しが必要となってくる可能性があります。
加えて、リースがオンバランス処理となるということは、今後、リースに関する新たな契約は単なる支出を伴う契約締結ではなく、投資案件として位置付ける会社も出てくるものと考えられます。特に、リース期間等、判断が必要な項目をどのように設定するのかによってオンバランス額が大きく代わり、ROAや自己資本比率等にも影響してくることを考えると、稟議書にオンバランス処理の概算額を載せて、当該概算額も含め関係者の決裁をとることが考えられます。
また、当該オンバランス処理の概算額によっては、決裁権限者自体が変わるという対応も考えられます。
5. 子会社からリース注記等に必要な情報を収集するための連結パッケージの改修
新リース会計基準の導入によって、各社単体決算上、新たな勘定科目の設定が必要となってくるだけでなく、それを連結決算においても集計できるように、連結の科目設定の見直しや連結注記で必要な情報を収集できるように連結パッケージの改修が必要となります。
現在公表されている新リース会計基準案では、下記に示すようにリースに関するさまざまな情報の注記が求められている(また、収集が容易ではないと思われる注記も含まれている)ため、連結パッケージの改修だけでなく、実際に必要な情報が集計可能なのか収集・集計の練習(トライアル)も、本番適用前に実施する必要があります。