日本、米国税関、輸出入手続きに関する新型コロナウイルス感染症の対応を発表

日本、米国税関、輸出入手続きに関する新型コロナウイルス感染症の対応を発表

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EY 税理士法人

2020年4月2日
カテゴリー 間接税

Japan tax alert 2020年4月2日号

日本の税関による新型コロナウイルス感染症の対応

日本の税関は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として、輸出入通関手続き等の対応を発表しました1 。新型コロナウイルス感染症の影響により原産地証明書等を提出することができない場合、例えば、通常は貨物の輸入許可前引取り承認(BP承認)を受けることを条件に原則として2カ月以内に提出する必要があるところ、提出期限の猶予が認められる等、柔軟な対応が行われます。事前に税関に対応方法については相談をすることをお勧めします。また、関税等の納期限延長の際に提供する担保についても、輸入者の具体的な相談をもって柔軟な取扱いが個別的に認められます。

輸出入申告の審査の際に原本を提出することとされている書面については、新型コロナウイルス感染症の影響によりその提出が難しい場合には電磁的記録の提出が認められます。期限内に提出が難しい場合、輸出入者等の事情を勘案して税関が指定する日まで延長することができます。

このほか、新型コロナウイルス感染症対策に係る救援物資等を輸入する場合、優先して通関が行われるほか、関税および輸入消費税が免除され、簡易な様式で輸入申告を行うことができます。

米国税関および米通商代表部(USTR)による対応

米国トランプ政権は2020年3月20日、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける貿易問題に関して3つの主要な声明を発表しました。

  • 米国税関、関税の納付猶予を認める
    米国税関国境警備局(US Customs and Border Protection、以下、「米国税関」)は新型コロナウイルス感染症対策として、関税、諸税および手数料の納付猶予を個別で承認することをCargo Systems Messaging Serviceで発表しました2。 申請は米国税関の担当部署(Office of Trade, Trade Policy and Programs)に電子メールで行えます(OTentrysummary@cbp.dhs.gov)。

  • 事前教示の回答発出の遅延
    新型コロナウイルス感染症により米国税関の業務に支障が出ているため、事前教示申請について、書面によるものやサンプル提供が必要な申請への対応に遅延が生じる可能性があることを発表しました3。その対策として米国税関は書面での申請ではなくeRulings(https://erulings.cbp.gov/s/)を通じて電子的に申請を行うことを推奨しています。また、物理的なサンプルの提出に代えて詳細な写真や動画をeRulings上で提出することを求めています。

  • 特定の医療用機器に対し対中追加関税の発動の取りやめを発表
    米通商代表部(USTR)は、中国の技術移転、知的財産およびイノベーションに関する行為、政策、慣行に対して発動されている通商法301条4に基づく追加関税について、健康への配慮を優先し、人工呼吸器、酸素マスク、吸入器等の重要な医療用機器に対し追加関税の発動を取りやめることを発表しました。(現在、2,500億米ドルに相当する物品に25%の追加関税、1,200億米ドルに相当する物品には7.5%の追加関税が賦課されています)5
    また、重要な医薬品やその他の重要な医療用機器および部分品には追加関税をそもそも発動していないことに言及し、新型コロナウイルス感染症に関してさらなる追加関税の適用免除を検討するため、パブリックコメントを募集することを発表しました。
    パブリックコメントには、問題となる製品の10桁のHTSUS(米国関税率表)コードや機能および特徴(寸法、構成、その他の特徴等)等の情報を可能な限り詳細に説明し、製品が新型コロナウイルス感染症の対応にどのように関連するか(治療や対策に製品がどのように使用されるか等)についても具体的に説明する必要があります。

パブリックコメントの期限は早くて2020年6月25日とされていますが、適宜期限を延長することについても言及されています。寄せられたコメントは順次レビューされます6
 

企業に求められる対応

日本において、輸出国で原産地証明書の発給を受けられない企業は税関に個別相談を行い、確実なEPAの利用を確保できるようにすることが推奨されます。また、今後の日本の情勢に合わせて、税関の動向をモニターし早期に対策を講じることをお勧めします。

米国において、新型コロナウイルス感染症によって資金繰り難に直面する企業は、米国税関に納付猶予の申請を行うことが推奨されます。

301条に基づく追加関税に関して、ビジネスの確実性のために品目分類や原産地の事前教示申請を行っている米国の輸入者は、事前教示の遅延がビジネスに与える影響を考慮することが求められます。当面の間、事前教示の代わりに、リーズナブルケア7に関するメモや追加で輸入者の見解を裏付ける計画を始めることが推奨されます。

301条に基づく追加関税により輸入する特定の医薬品や部分品が影響を受ける企業は、パブリックコメントを提出するための手順と要件を確認する必要があります。

巻末注

  1. 新型コロナウイルス感染症対策に係る輸出入通関手続等について
  2. CSMS #42097586 - Additional Days for Payments due to COVID-19をご参照ください。
  3. Cargo Systems Messaging Service CSMS #42092162 - Information on Processing of Binding Ruling Requests by CBP's National Commodity Specialist Divisionをご参照ください。
  4. 通商法301条に基づく追加関税の措置は1974年通商法において規定されています。
  5. USTRのプレスリリース「USTR: Response to Coronavirus Crisis」をご参照ください。
  6. 「Request for Comments on Additional Modifications to the 301 Action to Address COVID-19: China's Acts, Policies, and Practices Related to Technology Transfer, Intellectual Property, and Innovation.」をご参照ください。
  7. リーズナブルケア: 輸入者が輸入する貨物について事前教示を取得する等、法規則に基づいて正確な申告を行うために十分な対策を講じることが求めるもの。

※本アラートの詳細は、下記PDFからご覧ください。

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