米国、新型コロナウイルス対策法可決、有給休暇拡充
Japan tax alert 2020年3月26日号
米国では新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される中、有給休暇の拡充等を規定する「The Families First Coronavirus Response Act」(「新型コロナウイルス対策法」)が3月18日に緊急可決され、同日、トランプ大統領の署名により成立しました。
新型コロナウイルス対策としては3月6日に医薬研究・開発、公共衛生機関支援等を目的とした補正予算がすでに可決されています。また、3月13日にはトランプ大統領が「国家非常事態」宣言に行い、従業員負担の特定支出を雇用者が非課税で補填する恩典を認める規定の新型コロナウイルス関係支出への適用が可能となっています。
今回新たに可決された新型コロナウイルス対策法は、原則、従業員数が50人以上500人未満の雇用者を対象に、一定要件下で有給休暇を義務付ける一方、有給休暇にかかわる給与コストを税額控除という形で連邦政府が負担するものです。
有給休暇は2週間の治療休暇(「Sick Leave」)と10週間の家族休暇(「Family Leave」)で構成されています。Sick Leaveは従業員本人の新型コロナウイルス検査・治療目的の場合には給与の100%、本人以外の者にかかわる治療・介護目的の場合には給与の3分の2が保障されます。Family Leaveは休校により在宅を余儀なくされた17歳以下子女の扶養目的のみに認められ、給与の3分の2が保障されます。
有給休暇にかかわる支給額は税額控除という形で、雇用者が四半期ごとに納付する社会保障税の雇用者負担額(「FICAマッチ」)総額から差し引くことが認められます。ただし、税額控除は、給与100%支給対象の場合は1日511米ドル、3分の2支給対象の場合は1日200米ドルが上限となります。また、有給休暇にかかわる雇用者側の負荷をさらに軽減するため、有給休暇にかかわる支給額はFICAマッチの対象から除外するという恩典も規定されています。これらの措置は2020年末まで有効です。
新型コロナウイルス関連の別の進展として、財務省は個人所得税の申告期限を4月15日から7月15日に延期すると公表しています。議会は引き続きフェーズ3と呼ばれる1兆ドル規模の大型景気刺激策を審議中で、感染抑止策の影響で業績が急激に悪化している航空会社その他の産業に対する公的支援、各個人納税者に1,000米ドルから1,200米ドルの現金支給、NOL 80%使用制限の一時停止、等の規定が検討されています。