BEPS update ~OECD、EU、英国、コロンビア、シンガポール、米国、ベルギー、ルクセンブルグ~

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EY Japanの窓口

EY 税理士法人

2018年9月13日
カテゴリー BEPS

Japan tax alert 2018年9月13日号

OECD

2018年8月8日、OECDは、国別報告書の自動的交換に関する権限ある当局による多国間合意(Multilateral Competent Authority Agreement on the Exchange of Country-by-Country Reports、以下「CbC MCAA」)に署名した国・地域のリストを更新しました。今回更新されたリストによると、香港が2018年7月26日、カザフスタンが2018年6月12日、アラブ首長国連邦が2018年6月24日にそれぞれ署名し、CbC MCAAに署名した国・地域の総数は72になりました。

2018年7月16日、IMF、OECD、国連及び世界銀行の共同イニシアティブである「税に関する協働プラットフォーム(Platform for Collaboration on Tax)」は、「オフショア間接譲渡に対する課税-ツールキット(ドラフト第2版)」に関する報告書の改定版について、最終意見の募集を開始しました。当該ツールキットでは、資産のオフショア間接譲渡、すなわち、ある国に所在する資産を所有する法人を別の国の居住者が売却する場合の税務上の取扱いについて分析を行い、選択肢を提示しています。この問題は、多くの途上国において重要な問題として浮上してきており、IMFの技術的支援作業やOECDによるスコーピングにおいて明らかにされましたが、G20及びOECDのBEPSプロジェクトの対象とはなっていませんでした。採取産業に関連するオフショア間接譲渡は、国連における作業の対象でもあります。利害関係者を対象とした意見募集の期限は2018年9月24日です。税に関する協働プラットフォームについては、2018年末までに最終ツールキットを公表することを目指しています。

2018年7月、OECDは、CbC MCAAに基づき有効化された追加の交換関係を発表しました。現在のところ、EU指令2016/881に基づく交換関係、並びに租税条約もしくは租税情報交換条約に基づく、交換に関する権限ある当局による二国間合意を含めて、国別報告書の交換を確約している国・地域の間で確立された自動交換関係は1,700を超えているとのことです。現行の自動交換関係の一覧、並びに各国における国別報告書に関する法的枠組みの導入についての最新状況は、OECDのウェブサイトに掲載されています。今回の更新において、ボネール、シント・ユースタティウス及びサバ、コスタリカ、並びにルーマニアが、国別報告書の交換関係を初めて有効化した国のリストに含まれました。

欧州連合(EU)

2018年7月20日、EU理事会は、行動規範グループ(法人課税)が1998年3月の設立以降調査した優遇税制の概要報告書を公表しました。同報告書は3つのパート、(i)EU加盟国の優遇税制(英国に関してはジブラルタルを含む)、(ii)(税制の通知日時点で)EU条約が適用されないEU加盟国の属領もしくは関連領、(iii)その他の国・地域(現在はEUの一覧表作成の対象)に分かれています。結論として、行動規範グループは638の優遇税制を調査し(1998~1999年に調査した280の優遇税制を含む)、そのうち254の優遇税制が有害であると判断したとしています。

2018年6月6日、オーストリア連邦政府はブリュッセルにおいて、EU理事会におけるオーストリア議長国のプログラムを公表しました。公表されたプログラムによると、効率的で公正かつ透明な税制の確立がオーストリア議長国の優先事項の一つです。主要課題として、有害な税競争、税金詐欺及び脱税からの公共予算の保護、並びにグローバル化と新しいテクノロジーを考慮した税制の近代化が挙げられています。オーストリア議長国は当該課題を特に重視しており、交渉を進めて、G20、OECD、EUレベルの動向を踏まえた解決案を提示する狙いです。また、オーストリア議長国は、共通法人税課税標準の導入に関する欧州委員会の提案にも、引き続き取り組むことを確約しています。

英国

2018年7月31日、英国の税務当局である歳入関税庁(以下、「HMRC」)は、2017-2018年の「移転価格及び迂回利益税」統計を公表しました。当該統計は、HMRCが移転価格にさらに注力し、迂回利益税(以下、「DPT」)が多国籍企業の行動に影響を与えたことにより確保した歳入について知見を提供しています。また、DPTがHMRCの移転価格問題の解決促進を図る能力を強化しているという状況を示しています。

税収の増加から予想されるように、HMRCはDPTの事前通知に関する活動も強化してきました。DPTの事前通知受領後、異議の申立てが認められた企業もあると見られ、この段階で異議を申し立てることは納税者にとって価値がある場合があることを示しています。

その一方で、統計によれば、事前確認(Advance Pricing Agreements:APA)や過少資本課税に係る事前確認(Advance Thin Capitalization Agreement:ATCA)の交渉にかかる時間は以前より長くなっています。また、二重課税の排除を求めるために相互協議手続(Mutual Agreement Procedure:MAP)を利用する件数は増加しており、OECDの見解では、英国は引き続き十分な人員が配置されたMAPチームを有する優れた条約相手国であるとしています。上記で説明した傾向により、MAP事案の解決には以前より時間がかかるようになりましたが、過去最高水準よりは低いレベルにあります。

コロンビア

2018年7月30日、コロンビアの官報において、移転価格に関する2018年7月26日付決議第40号が公表されました。決議第40号では、国別報告書通知の提出手順が明確にされています。同決議により、構成事業体が特定の移転価格フォーム(フォーム120)の提出を義務付けられている場合、国別報告書通知を同フォームにより提出することになります。同フォームにより提出しない場合、構成事業体は税務当局のウェブサイトから特定のフォームをダウンロードし、電子メールにより件名を「通知-国別報告書」としてpreciostransferencia@dian.gov.coに送信する必要があります。通知期限は2018年9月11日から24日の間となります。具体的な通知期日は、納税者番号の最終桁に基づいて決定されます。

2018年7月17日、コロンビア国税庁(DIAN)は、BEPS行動13に基づく2017年度を対象としたローカルファイル及びマスターファイルの提出手続きに関する2018年決議第38号を公表しました。同決議により、ローカルファイルとマスターファイルは、それぞれフォーム1729 V-7とフォーム5231 V-1を使用して電子的に提出しなければならなくなります。当該フォームの提出期限は、2018年9月11日から24日の間ですが、具体的な提出期日は、納税者番号の最終桁に基づいて決定されます。

シンガポール

2018年8月7日、シンガポール税務当局は、国別報告書に係るガイドライン(e-Tax Guide)の第3版を公表しました。今回の更新では、国別報告書における端数処理済の数値の使用を明確にするため、FAQの質問11が変更されました。ガイドラインによると、国別報告書に記載した金額の元となったデータが端数処理済みの数値である場合、企業は端数処理済みの数値で報告することができます。ただし、企業は、国別報告書の理解という点において、端数処理済の数値が重大な影響を与えないことを確保する必要があるとしています。また、千の位まで四捨五入する場合、1,126シンガポール・ドルではなく、1,126,000シンガポール・ドルとするなど、数字をすべて表示する必要があります。

米国

米国内国歳入庁(IRS)は、移転価格調査における審議(Planning)、調査実施(Execution)及び決議(Resolution)を支援するため、ベストプラクティス及びプロセスに関する手引書である移転価格調査手順(Transfer Pricing Examination Process、以下「TPEP」)(刊行物第5300号(2018年6月))を最近発表しました。本刊行物は、調査開始時に納税者と共有されますが、大企業及び国際調査手順(Large Business & International (LB&I) Examination Process (LEP) )(刊行物第5125号)と整合性を取るよう意図されています。TPEPは、移転価格調査における審議、調査実施及び決議に役立つ調査手法、アドバイス、リンク及び参考資料をIRS調査官に提供することを目的として2014年に発表されたツールキットである移転価格調査ロードマップ(Transfer Pricing Audit Roadmap)に取って代わるものです。

2018年8月9日付、Japan tax alert「米国IRSが移転価格調査手順を公表」をご参照ください。

ベルギー

2018年7月9日、ベルギー政府は、新たな移転価格文書化要件に違反した場合に適用される行政罰金の概要を示した2018年6月29日付国王令を公布しました。(i)納税者が管理できない状況に起因する違反、(ii)違反が悪意によって又は租税回避する意図で行われなかった場合における1回目の違反については、罰則は適用されません。2回目の違反時点において、違反が悪意によって又は租税回避する意図で行われなかったことを証明できる場合は、4回目の違反行為後、罰金が1,250ユーロから25,000ユーロまで徐々に増加します。違反が悪意によって又は租税回避する意図で行われた場合(不完全又は不正確な法人税申告書を意図的に提出することを含む)、1回目の違反時点で12,500ユーロの罰金が科されます。連続して違反した場合は、25,000ユーロの罰金が科されます。

ルクセンブルク

2018年7月26日、ルクセンブルク税務当局は、仮想通貨の特性評価、並びにルクセンブルク納税者が行う仮想通貨に関連する取引やマイニング活動から生じる所得の税務上の取扱いについて、ガイダンスを示す行政通達を発出しました。

基本的な前提として、仮想通貨は、所得税、地方事業税及び富裕税上、通貨ではなく無形資産と見なされます。仮想通貨は、法定通貨ではなく、中央銀行によって価値が保証された交換手段ではありません。そのため、仮想通貨建ての収益及び費用は、ユーロ又はその他の支払可能通貨に変換する必要があります。

さらに通達では、仮想通貨からの所得が、課税対象となる事業所得もしくはその他の所得となる可能性についてのガイダンスが示されています。納税者は、仮想通貨の取得日又は作成日並びに関連費用を示す一貫した継続的な文書を具備している必要があります。