OECD、行動13に基づく移転価格文書化及び国別報告書に関する最終レポートを公表

OECD、行動13に基づく移転価格文書化及び国別報告書に関する最終レポートを公表

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EY 税理士法人

2015年11月19日
カテゴリー その他

Japan tax alert 2015年11月19日号

経済協力開発機構(OECD)は2015年10月5日に、税源侵食と利益移転(BEPS:Base Erosion and Profit Shifting)に対する行動計画に基づく行動13「移転価格文書化及び国別報告書」に関する最終レポート(以下、「最終レポート」)を発表しました。本レポートは、全15のBEPS行動に関する最終レポートがまとめられた最終パッケージの一環として公表されました。最終レポートは、本件に関して以前発表された文書である次の3つの報告書を概ね踏襲し、統合した内容となっています(2014年9月16日に発表された「移転価格文書化及び国別報告書」に関わるドラフト報告書、2015年2月6日に発表された「移転価格文書化及び国別報告書の実施ガイダンス」に関わる報告書、2015年6月8日に発表された「国別報告書実施パッケージ」に関わる報告書の3つの報告書です)。

最終レポートには、移転価格文書化に関する基準の改定と、所得、納税額、経済活動の特定の評価基準などに関する情報を国別に記載する国別(CbC)報告書の雛形が示されています。これらは両方とも、OECD移転価格ガイドラインに組み込まれる予定です。改定基準では、移転価格文書化やCbC報告書に関して、3層構造アプローチを取ることが要求されています。3層構造アプローチは、次の3項目から構成されます。

  • マスターファイル: マスターファイルでは、多国籍企業(MNE)がグローバルで行っている事業や、MNEの移転価格算定方針に関する概括的(High Level)な情報が税務当局に提供されます
  • ローカルファイル: ローカルファイルでは、重要な関連者間取引及び取引金額、当該関連者間取引に関わる移転価格決定についての企業分析などの情報が各国の税務当局に提供されます
  • CbC報告書の雛形: このCbC報告書の雛形では、MNEが事業を行っている各税管轄地での収益(関連者及び非関連者を含む)、利益、法人税納税額及び未払税金、従業員数、確定資本金及び利益剰余金、並びに有形資産の額に関する情報を記載することが求められています。さらに、各税管轄地で事業を行っているMNEグループ内の事業体を特定する情報や、各事業体が行っている事業内容に関する情報の記載も求められています

CbC報告書の提出は、2016年1月1日以降に開始する事業年度から新たに義務化される予定であり、適用対象はグループ年間連結売上高が7億5000万ユーロを超えるMNEとなります。OECDはBEPSプロジェクト参加国に対し、当該新基準の実施状況を注視し、2020年末までに当該報告書の内容修正及び追加データの報告における義務付けが必要か否かを再評価するよう義務付けています。

おわりに

最終レポートで示されたマスターファイルやローカルファイルに関するガイドラインは、現在の文書化要件とは異なっています。これらの相違点に対応するために、企業は既存の文書や文書作成プロセスを見直すことを余儀なくされるでしょう。

最終レポートの中に織り込まれているCbC報告書の雛形は、全く新しい報告要件となります。企業は、自社固有の事業構造に当該ガイドラインをどう適用していくか、これらの新報告要件を注意深く検討しなければなりません。新報告要件に毎年対応していくために、新報告要件に関する持続可能なプロセスと役割分担を決定し、必要な情報をできるだけ効率的に収集する態勢を確立するための措置を講じることが必要となります。

OECDによる新報告要件に関するガイドラインはこれが最終であるため、自社が事業活動を行っている国におけるこれらの新報告要件の適用に関する動向を慎重に注視していかなければなりません。

※本アラートの全文は、PDFでご覧いただけます。

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