メディア・エンターテインメントセクター メディア・エンターテインメントセクターの概要Q&A

2024年6月27日
カテゴリー 業種別会計

EY新日本有限責任監査法人 メディア・エンターテインメントセクター
公認会計士 泉家 章男

概要Q&A

Q1. メディア・エンターテインメントセクターにはどのような業種が含まれるのか教えて下さい。

A1.

メディア・エンターテインメントセクターには多種多様な業種が含まれておりますが、代表的な業種としては、放送業、出版業、新聞業、映画/アニメ等の映像制作・配給業、ゲームソフトウェア業、広告業、娯楽業(例えば遊園地、劇場、プロスポーツ団体の運営)などが挙げられます。

我が国において用いられている業種分類との関係は以下の通りです。

<総務省「日本標準産業分類」における分類>

総務省が定める日本標準産業分類は、統計の正確性と客観性を保持し、統計の相互比較性と利用の向上を図ることを目的として設定された統計基準であり、全ての経済活動を産業別に分類しているものです。その構成は、大分類、中分類、小分類からなる3段階構成となっています。

メディア・エンターテインメントセクターに属する多くの企業は、「情報通信業(大分類G)」に分類されており、例えば、公共放送業、テレビジョン放送業、映画・ビデオ制作業、アニメーション制作業、映画・ビデオ・テレビジョン番組配給業、レコード制作業、新聞業、出版業、広告制作業、ニュース供給業、ゲームソフトウェア業、インターネット附随サービス業などの業種が含まれております。その他、「学術研究、専門・技術サービス業(大分類L)」に広告代理店などが分類されている他、「生活関連サービス業、娯楽業サービス業(大分類N)」には遊園地、劇場、プロスポーツ団体などが分類されています。

このように、メディア・エンターテインメントセクターに属する企業の業種は多岐に渡っています。

代表的な業種に関する説明と例示は以下の通りです。

分類名 細分類コード 説明 例示
公共放送業(有線放送業を除く) 3811 主として公共の目的のため、非営利的に放送事業を行う事業所をいう。 日本放送協会本部・同地方放送局
テレビジョン放送業(衛星放送業を除く) 3821 主として広告料収入又は有料放送収入によりテレビジョン放送事業(ラジオ放送事業を兼営するものを含む)を行う事業所をいう。 テレビジョン放送事業者(ラジオ放送事業を兼営するものを含む)本社・同放送局・同放送センター
ゲームソフトウェア業 3914 家庭用テレビゲーム機、携帯用電子ゲーム機、パーソナルコンピュータ等で用いるゲームソフトウェア(ゲームソフトウェアの一部を構成するプログラムを含む。)の作成及びその作成に関して、調査、分析、助言などを行う事業所をいう。 ゲーム用ソフトウェア作成業
ポータルサイト・サーバ運営業 4011 主としてインターネットを通じて、情報の提供や、サーバ等の機能を利用させるサービスを提供する事業所であって、他に分類されないものをいう。広告の提供を目的とするものや、サーバ等の機能を主として他の事業の目的のために利用させるものは、本分類には含まれない。 ウェブ情報検索サービス業、インターネット・ショッピング・サイト運営業、インターネット・オークション・サイト運営業
アプリケーション・サービス・コンテンツ・プロバイダ 4012 主としてインターネットを通じて、アプリケーションを提供する事業所又は音楽、映像等のコンテンツを配信する事業所であって、他に分類されないものをいう。 ICTアプリケーション共用サービス業(ASP 事業、SaaS 事業)、コンテンツ配信プラットフォームサービス(放送に該当しないもの)
映画・ビデオ制作業(テレビジョン番組制作業、アニメーション制作業を除く) 4111 主として映画(アニメーションを除く)の制作を行う事業所又は制作及び配給の両者を行う事業所並びに記録物、創作物などのビデオ制作(アニメーションを除く)を行う事業所をいう。 映画撮影所、小型映画制作業、映画制作業、ビデオ制作業
テレビジョン番組制作業(アニメーション制作業を除く) 4112 主としてテレビジョン番組(アニメーションを除く)の制作を行う事業所をいう。 テレビコマーシャル制作業
アニメーション制作業 4113 主としてアニメーションの制作を行う事業所をいう。 アニメーション制作業
映画・ビデオ・テレビジョン番組配給業 4114 主として映画、ビデオ又はテレビジョン番組の配給を行う事業所をいう。フィルムの配達交換、購入などを行う事業所も本分類に含まれる。 映画フィルム配給部(映画制作業から独立しているもの)、映画配給業、ケーブルテレビジョン番組配給業、有線テレビジョン放送番組配給業
レコード制作業 4121 主としてレコードの企画・制作を行う事業所をいう。 レコード会社、音楽出版会社
新聞業 4131 主として新聞の発行(電子版を含む。)を行う事業所をいう。ただし、主として新聞の印刷を行う事業所は大分類E-製造業[151]に分類される。 新聞社、新聞発行業、新聞印刷発行業
出版業 4141 主として書籍、教科書、辞典、パンフレット、雑誌、定期刊行物などの出版(電子版を含む。)を行う事業所をいう。ただし、主として書籍等の印刷を行う事業所は大分類E-製造業[151]に分類される。 書籍出版・印刷出版業、教科書出版・印刷出版業、辞典出版・印刷出版業、パンフレット出版・印刷出版業、雑誌・定期刊行物出版・印刷出版業、情報誌発行業
広告制作業 4151 主として印刷物にかかる広告の企画、制作を行う事業所をいう。ただし、依頼人のために広告に係る総合的なサービスを提供する事業所は大分類L-学術研究、専門・技術サービス業[7311]に分類される。 広告制作業(印刷物にかかるもの)、広告制作プロダクション(印刷物にかかるもの)
ニュース供給業 4161 新聞、定期刊行物、テレビジョン、ラジオ等にニュースを供給する事業所をいう。 新聞社支局(印刷発行を行わないもの)、日本放送協会放送局支局(放送設備のないもの)、民間放送局支局(放送設備のないもの)
広告業 7311 主として依頼人のために、広告に係る企画立案、マーケティング、コンテンツの作成、広告媒体の選択等、総合的なサービスを提供する事業所、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、インターネットその他の広告媒体のスペース又は時間を当該広告媒体企業と契約し、依頼人のために広告する事業所をいう。広告文案の作成、商業美術などの業務を行うが、広告媒体に広告しない事業所は大分類G-情報通信業[4151]に分類される。 総合広告業、広告代理業、新聞広告代理業、インターネット広告業、屋外広告業(総合的なサービスを提供するもの)、車内広告業(総合的なサービスを提供するもの)、電柱広告業(総合的なサービスを提供するもの)
映画館 8011 アトラクションのあるなしにかかわらず商業的に映画の公開を行う事業所をいう。主として映画館の賃貸を行う事業所も本分類に含まれる。 映画劇場、野外映画劇場、映画館賃貸業、ミニ・シアター、ビデオ・シアター
演芸・スポーツ等興行団 8025 契約により出演又は自ら公演し、落語、浪曲、見世物、野球、相撲、ボクシング、レスリングなどの娯楽を提供する他に分類されない事業所をいう。 寄席出演業、見世物業、曲芸・軽業(かるわざ)団、相撲部屋、ボクシングジム、浪曲興行、プロ野球団、プロレス協会、落語家業、音曲業、漫才業、プロサッカー団
遊 園 地(テーマパークを除く) 8052 各種遊戯施設により娯楽を提供する事業所をいう。 遊園場
テーマパーク 8053 文化、歴史、科学などに関する特定のテーマに基づき施設全体の環境づくりを行い、各種遊戯施設により娯楽を提供する事業所をいう。 テーマパーク

<日本取引所グループ「業種別分類表」における分類>

日本取引所グループが定める「業種別分類表」は、企業が初めて株式を公開する際に個別の銘柄について業種を決定する際に用いるものであり、大分類項目及び中分類項目の2段階構成となっております。また、当該業種別分類は原則として総務省が定める「日本標準産業分類」による分類に基づいています。

メディア・エンターテインメントセクターに属する多くの企業は、情報・通信業(中分類、業種コード:5250)に分類されておりますが、例えば、広告代理店や遊園地や劇場などの運営を行う企業などにおいては、サービス業(中分類、業種コード:9050)に分類されています。

Q2. メディア・エンターテインメントセクターにおける業種の特徴を教えて下さい。

A2.

メディア・エンターテインメントセクターにおける業種は多岐に渡り、それぞれの業種毎に特徴は異なりますが、共通項の1つとして、「コンテンツビジネス」であることが挙げられます。

ここで、「コンテンツビジネス」とは、画像・動画・音楽データなどの「コンテンツ(情報の内容)」そのものを制作・販売・使用許諾して収益を得たり、コンテンツを利用して広告収入を得たりするビジネスモデルをいいます。

メディア・エンターテインメントセクターで取り扱われるコンテンツはニュース・テレビドラマ・映画・アニメ・ゲームなど多岐に渡りますが、これらのコンテンツは著作権等の知的財産権で保護されているため、1つのコンテンツを様々な相手先に対し使用許諾(ライセンス)して収益を獲得することが可能である点が最大の特徴といえます。

また、メディア・エンターテインメントセクターで取り扱われるコンテンツは教養又は娯楽のいずれかの側面がありますが、特に娯楽的な側面について、一般的な製造業の製品のように消費者に対して機能性や利便性を訴求するのではなく、消費者の感情や感性に訴求することが必要な点は、メディア・エンターテインメントセクターならではのビジネスの特徴といえます。

その他に、特定のコンテンツが大ヒットした場合には業績が大きく上振れすることがある一方、多額の投資を行ったコンテンツが想定通りヒットしなかった場合には業績が下振れすることがあるなど、業績の変動幅が比較的大きい点も挙げられます。そのため、このような変動幅が大きい業績を下支えするべく、例えば、不動産賃貸事業等の安定収入が得られるビジネスを併せて行っている企業もあります。

なお、コンサルティング企業等がメディア・エンターテインメントセクターに関する業界トレンドや分析を行う場合には、TMT(Technology, Media&Entertainment and Telecommunicationsの頭文字)という単位が用いられることが多く、これは、テクノロジーセクター・メディア・エンターテインメントセクター・テレコムセクターの相互関連性が高いということが背景にあると考えられます。

主な業種毎の取り扱われるコンテンツとその収益の種類は以下の通りです。

主な業種 取り扱われるコンテンツ 主な収益の種類
放送業 テレビ番組など 受信料収入(公共放送)、広告収入(民間放送)、番組の販売収入、番組の使用許諾収入(ライセンス収入)など
出版業 小説・コミックなどの書籍 書籍の販売収入、雑誌等における広告収入など
新聞業 新聞記事など 新聞の販売収入、新聞における広告収入など
映像制作・配給業 映画など 制作収入、配給収入、映像配信権等の使用許諾収入(ライセンス収入)、パッケージソフト販売収入など
ゲームソフトウェア業 ゲームなど パッケージソフト販売収入、オンラインゲーム利用料収入、ゲーム内アイテム販売収入、ゲーム関連コンテンツの使用許諾収入(ライセンス収入)、受託制作収入など
広告業 広告動画や広告記事など 広告枠販売手数料、広告制作収入、その他広告関連サービス収入など
娯楽業(例えば、遊園地や劇場の運営) イベントコンテンツなど 入園料収入、興行収入など

Q3. メディア・エンターテインメントセクターにおける主な業種・ビジネスについての概要や会計論点について教えて下さい。

A3.

EYのウェブサイト(ey.com)内の企業会計ナビ:業種別会計「メディア・エンターテインメント」において、映像(映画やアニメ)ビジネス・出版業・広告業・ゲームビジネスなどについて詳細に解説を行っておりますので、こちらをご参照下さい。

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