投資信託 第5回:外貨建資産の計理処理

2011年4月19日
カテゴリー 業種別会計

投資信託研究会
白取 洋

投資信託では、外貨建資産等の計理処理について多通貨会計という手法が用いられています。一般に多通貨会計(Multi Currency Accounting)とは、2種類以上の通貨建で取引を行っている場合において、各通貨建の取引を通貨別に記録管理するとともに、これに基づいて作成される各通貨建の試算表を各月末など一定の時点で、その時の為替相場等により財務諸表作成の基本となる通貨に換算の上、これを合算して総合試算表を作成するという会計に関する記録及び集計の方法、と定義されています。

投資信託に関しては、「投資信託財産の計算に関する規則」(以下、「投信計算規則」という。)第60条において、このような会計処理が認められています。投資信託では通常、外貨建資産に投資を行う場合、その前提として受益者から調達した邦貨建の資金を外貨に転換する必要があります。このように異種通貨間取引が行われる場合は、各通貨ごとの貸借を一致させるために各通貨をまたがる取引を記録するための"連結環"として通貨振替勘定を設け、これを経由して処理することが必要になります。投信計理ではこの通貨振替勘定として、邦貨建日計表において「外国投資勘定」、外貨建日計表において「外貨基金」という勘定を設けて処理します。

ファンドの決算日に合算日計表を作成するに当たっては、外貨建日計表における外貨基金を決算日の対顧客為替相場の仲値で邦貨換算し、邦貨建日計表における外国投資勘定と相殺消去します。このときに、当初外貨に転換した時と決算日との間に発生した為替相場の変動により差額が生じます。この差額はその他外貨収益又はその他外貨費用(為替差損益)として計上します。

このように多通貨会計を採用するメリットとしては、第一に大量かつ頻繁に行われる外貨建取引についてその都度換算する必要がなく実務上簡便であること、第二に通貨ごとの運用資産の残高が常時把握できること、第三に外貨エクスポージャーが外国投資勘定の残高として把握されるので為替リスクの管理が容易になること、などが考えられます。

図表2 多通貨会計のイメージ

図表2 多通貨会計のイメージ

(週刊 経営財務 平成22年11月15日 No.2991 掲載)

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