株主資本等変動計算書 第2回 財務諸表・計算書類における株主資本等変動計算書の記載方法

2013年1月24日
カテゴリー 解説シリーズ

公認会計士 七海健太郎

2. 財務諸表における株主資本等変動計算書の記載方法

(1)純資産の区分

株主資本等変動計算書は貸借対照表の純資産の部における各項目の変動事由を明らかにするものであり、その表示区分は、「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(企業会計基準第5号)および財務諸表等規則に定める純資産の部の表示区分に従うことになります。

純資産の部は、株主資本と、株主資本以外の項目とに区分されます。株主資本には以下の項目が含まれます。

(個別)貸借対照表の純資産の部 連結貸借対照表の純資産の部
I 株主資本
 1 資本金
 2 資本剰余金
  (1)資本準備金
  (2)その他資本剰余金
 3 利益剰余金
  (1)利益準備金
  (2)その他利益剰余金
     ××積立金
     繰越利益剰余金
 4 自己株式(株主資本の控除項目)
I 株主資本
 1 資本金
 2 資本剰余金
 3 利益剰余金
 4 自己株式(株主資本の控除項目)






個別財務諸表では、資本剰余金と利益剰余金について内訳科目を記載します。資本準備金は資本準備金とその他資本剰余金とに区分して記載し、利益剰余金は利益準備金とその他利益剰余金とに区分した上で、その他利益剰余金については、株主総会または取締役会の決議に基づく設定目的を示す科目と、繰越利益剰余金とをもって掲記します。

上記のほか、申込期日経過後における新株式申込証拠金は、資本金の次に掲記することになっています。同様に、自己株式の処分に係る申込期日経過後における自己株式申込証拠金は、自己株式の次に掲記することになっています。

株主資本以外の項目で、純資産の部に属する項目は、以下のとおりです。

(個別)貸借対照表の純資産の部 連結貸借対照表の純資産の部
II 評価・換算差額等
 1 その他有価証券評価差額金
 2 繰延ヘッジ損益
 3 土地再評価差額金

III 新株予約権



II その他の包括利益累計額
 1 その他有価証券評価差額金
 2 繰延ヘッジ損益
 3 土地再評価差額金
 4 為替換算調整勘定
 5 退職給付に係る調整累計額(※)

III 新株予約権
IV 少数株主持分

その他の包括利益累計額(個別財務諸表では評価・換算差額等)には、以下の項目が含まれます。

① その他有価証券評価差額金
時価のあるその他有価証券を時価評価することによって生ずる、取得価額との差額をいいます。

② 繰延ヘッジ損益
ヘッジ手段であるデリバティブ取引等を時価評価することによって生ずる評価差額で、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで繰り延べられているものをいいます。

③ 土地再評価差額金
「土地の再評価に関する法律」(平成10年3月31日法律第34号)第7条第2項に規定する再評価差額金をいいます。

④ 為替換算調整勘定
連結財務諸表において、外国にある子会社または関連会社の資産および負債の換算に用いる為替相場と純資産の換算に用いる為替相場とが異なることによって生じる換算差額をいいます。

⑤ 退職給付に係る調整累計額(※)
連結財務諸表において、未認識数理計算上の差異および未認識過去勤務費用のうち、まだ、当期純利益を構成する項目として損益処理されていない部分をいいます。

これらその他の包括利益累計額(個別財務諸表では評価・換算差額等)に含まれる項目の金額は、税効果会計を適用し、繰延税金資産または繰延税金負債を控除した金額となります。

新株予約権は、将来、権利行使されて払込資本となるか、権利行使されずに失効し利益となるか、権利行使の有無が確定するまでの間、その性格が確定しないものですが、返済義務のある負債とはいえないことから、純資産の部に含まれます(純資産の部会計基準22項)。

少数株主持分は、連結子会社の資本のうち親会社に帰属していない部分であり、返済義務のある負債ではなく、純資産の部に含まれます(純資産の部会計基準22項)。

(※)平成25年4月1日以後開始する連結会計年度より

(2)株主資本の各項目の記載方法

株主資本の各項目は、当期首残高、当期変動額および当期末残高に区分し、当期変動額は変動事由ごとにその金額を表示します。以下は適用指針第6項に例示されている変動事由ですが、このほかに適切な名称をもって記載することもできます。なお、当期純利益(または当期純損失)および剰余金の配当は、必ず記載する変動事由とされています。

(1)当期純利益または当期純損失

(2)新株の発行または自己株式の処分

(3)剰余金(その他資本剰余金またはその他利益剰余金)の配当

(4)自己株式の取得

(5)自己株式の消却

(6)企業結合(合併、会社分割、株式交換、株式移転など)による増加または分割型の会社分割による減少(第7項なお書き参照)

(7)株主資本の計数の変動

① 資本金から準備金または剰余金への振替
② 準備金から資本金または剰余金への振替
③ 剰余金から資本金または準備金への振替
④ 剰余金の内訳科目間の振替

(8)連結範囲の変動または持分法の適用範囲の変動(連結子会社または持分法適用会社の増加または減少)

なお、その他利益剰余金については、その内訳科目の当期首残高、当期変動額(変動事由ごとの金額)および当期末残高を個別株主資本等変動計算書に記載することに代えて、注記により開示することができます。この場合には、その他利益剰余金の前期末残高、当期変動額および当期末残高の各合計額を個別株主資本等変動計算書に記載します。

① 株主資本以外の各項目の記載方法

株主資本以外の各項目は、当期首残高、当期変動額および当期末残高に区分し、当期変動額は純額で表示するのが原則ですが、当期変動額について主な変動事由ごとにその金額を表示することもできます。以下は適用指針第11項を参考にした変動事由です。

(1)その他の包括利益累計額(個別財務諸表では評価・換算差額等)

①その他有価証券評価差額金
その他有価証券の売却または減損処理による増減
純資産の部に直接計上されたその他有価証券評価差額金の増減

②繰延ヘッジ損益
ヘッジ対象の損益認識またはヘッジ会計の終了による増減
純資産の部に直接計上された繰延ヘッジ損益の増減

③為替換算調整勘定(連結財務諸表のみ)
在外連結子会社等の株式の売却による増減
連結範囲の変動に伴う為替換算調整勘定の増減
純資産の部に直接計上された為替換算調整勘定の増減

(2)新株予約権

新株予約権の発行
新株予約権の取得
新株予約権の行使
新株予約権の失効
自己新株予約権の消却
自己新株予約権の処分

(3)少数株主持分

少数株主利益(または少数株主損失)
連結子会社の増加(または減少)による少数株主持分の増減
連結子会社株式の取得(または売却)による持分の増減
連結子会社の増資による少数株主持分の増減

② 貸借対照表との整合

記載に当たっては、株主資本等変動計算書に表示される各項目の当期首残高および当期末残高は、前期および当期の貸借対照表の純資産の部における各項目の期末残高と整合しているか、当期純利益(または当期純損失)の金額が損益計算書と一致しているかを確かめておく必要があります。

なお、遡及処理を行った場合には、会計方針の変更による累積的影響額を加味した当期首残高ではなく、遡及処理前の残高と前期の貸借対照表の純資産の部における各項目の期末残高とで整合性を確認します。

③ 記載方法に関するその他の取扱い

I)税法上の積立金の記載方法

かつて利益処分案の株主総会決議によって積立ておよび取崩しがなされていた税法上の積立金(圧縮積立金など)は、会社法の下では、当期の決算手続として会計処理することになります。具体的には、当期末の個別貸借対照表に税法上の積立金の積立ておよび取崩しを反映させるとともに、(個別)株主資本等変動計算書に税法上の積立金の積立額と取崩額を記載(注記により開示する場合を含む)し、株主総会または取締役会で当該財務諸表を承認することになります(適用指針25項)。

II) 新株の発行の効力発生日に資本金または資本準備金の額の減少の効力が発生する場合の表示

新株の発行の効力発生日に資本金または資本準備金の額の減少の効力が発生し、新株の発行により増加すべき資本金または資本準備金と同額の資本金または資本準備金の額を減少させた場合には、変動事由の表示方法として、以下のいずれかの方法により記載します。

a)新株の発行として、資本金または資本準備金の額の増加を記載し、また、株主資本の計数の変動手続(資本金または資本準備金の額の減少に伴うその他資本剰余金の額の増加)として、資本金または資本準備金の額の減少およびその他資本剰余金の額の増加を記載する方法

b)新株の発行として、直接、その他資本剰余金の額の増加を記載する方法

企業結合の効力発生日に資本金または資本準備金の額の減少の効力が発生した場合についても同様に取り扱います。

3. 会社法計算書類における株主資本等変動計算書の記載方法

会社法計算書類および連結計算書類の株主資本等変動計算書の記載方法は、以下の点を除けば、財務諸表等と同一となります。

(1)株主資本等変動計算書の記載様式

会社法は株主資本等変動計算書の様式を定めていないため、適用指針の様式例に従うことが期待されます。財務諸表等規則および連結財務諸表規則における様式は、純資産の各項目を縦に並べる様式のみとされていますが、適用指針では第1回での表1~2のように純資産の各項目を横に並べる様式も認めており、計算書類ではこちらの様式で作成することもできます。

(2)純資産の区分

計算書類における純資産の区分は会社計算規則第76条に定められています。これは財務諸表と同様ですが、(個別)計算書類ではその他利益剰余金を株主総会または取締役会の決議に基づく設定目的を示す科目ごとに細分して表示することは求められていません。

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