金融商品取引法改正に伴う四半期開示の見直しに関する上場制度の見直し等のポイント

2024年4月30日
カテゴリー 会計情報トピックス

EY 新日本有限責任監査法人
公認会計士 前田 和哉

<東京証券取引所が2024年3月28日に公表>

東京証券取引所(以下「東証」という。)が2023年11月に取りまとめた「四半期開示の見直しに関する実務方針」(以下「実務の方針」という。)を踏まえ、金融商品取引法改正に伴う四半期開示の見直しに関する上場制度の見直し等を公表しました。

1. 背景

2023年11月20日に成立した「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(以下「改正金商法」という。)において、上場企業について、四半期報告書(第1・第3四半期)が廃止され、四半期決算短信に「一本化」されることになりました。東証では、この「一本化」の具体的な方向性に沿った実務の実現に向け、「四半期開示の見直しに関する実務検討会」において検討を行い、2023年11月に実務の方針を取りまとめ公表しました。実務の方針を踏まえ、四半期開示の見直しに関して、所要の上場制度の整備を行うものです。

2. 主な概要

(1) 四半期決算短信の取扱い

① 四半期財務諸表等の作成基準(有価証券上場規程施行規則(以下「規程施行規則」という。)別添9)

  • 四半期財務諸表等は、四半期財務諸表及び四半期連結財務諸表等又は四半期累計期間にかかる財務書類(以下「四半期財務諸表等」という)をいい、四半期財務諸表等の作成基準(以下「四半期作成基準」という。)は、第2四半期(連結)累計期間を除く四半期(連結)累計期間に係る四半期財務諸表等を対象としています。
  • 四半期財務諸表等は、企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」に準拠して作成します。
  •  継続企業の前提に関する注記は、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下「財務諸表等規則」という。)149条及び連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下「連結財務諸表規則」という。)120条の規定を準用することとされています(四半期作成基準第4条第1項第1号及び第2号)。
  • 当期の四半期(連結)会計期間及び四半期(連結)累計期間に係る四半期(連結)財務諸表は、当該四半期(連結)財務諸表の一部を構成するものとして四半期比較情報を含めて作成しなければならない(四半期作成基準第3条)。
    四半期比較情報は、四半期(連結)貸借対照表の前(連結)会計年度に係る事項、四半期(連結)損益計算書及び四半期連結包括利益計算書の前(連結)会計年度に対応する四半期(連結)会計期間及び四半期(連結)累計期間に係る事項、四半期(連結)キャッシュ・フロー計算書の前(連結)会計年度の対応する四半期(連結)累計期間に係る事項をいう。
  • 以下に掲げる事項以外の事項については、記載の省略ができます(四半期作成基準第4条第2項)。
    (1) 四半期連結貸借対照表
    (2) 四半期連結損益計算書及び四半期連結包括利益計算書又は四半期連結損益及び包括利益計算書(3) 重要な会計方針の変更(自発的に重要な会計方針の変更を含む。)
    (4) 会計上の見積りの変更
    (5) 四半期特有の会計処理を採用している場合には、その旨及びその内容
    (6) セグメント情報等に関する事項
    (7) 株主資本の金額に著しい変動があった場合には、主な変動事由
    (8) 継続企業の前提
    (9) キャッシュ・フローに関する注記(期首からの累計期間に係る有形固定資産及びのれんを除く無形固定資産の減価償却費及びのれんの償却額(負ののれんの償却額を含む。))
    (10) 過去の誤謬の修正再表示を行った場合には、その内容及び影響額
  • 上記(1)及び(2)は、連結財務諸表を作成していない場合は、四半期貸借対照表、四半期損益計算表となります。
  • 上記(9)のキャッシュ・フローに関する注記は、四半期連結キャッシュ・フロー計算書の開示を省略する場合に限られます。
  • 四半期(連結)財務諸表における項目の表示に係る取扱いについては、財務諸表等規則及び連結財務諸表等規則に規定されている第一種中間(連結)財務諸表での取扱いを準用するものとしています(「決算短信・四半期決算短信作成要領等」(4)第1・第3四半期決算短信(添付資料)の開示事項及び記載上の注意事項、全般)。
  • レビューの有無等の記載やその他作成にあたっての留意事項は、「決算短信・四半期決算短信作成要領等」において定めています。

② 公認会計士又は監査法人によるレビュー

  • 第1・第3四半期累計期間に係る四半期財務諸表等に対する公認会計士又は監査法人(以下「公認会計士等」という。)によるレビューを受けることは原則として任意としています。ただし、以下のいずれかの要件に該当した場合には、要件該当以後に開示する第1・第3四半期累計期間に係る四半期財務諸表等に対し、公認会計士等によるレビューが義務付けられます。(有価証券上場規程(以下「規程」という。)第404条第3項及び第4項、第438条第2項、規程施行規則第405 条第2項)

a 直近の有価証券報告書、半期報告書又は四半期決算短信(期中レビューを受ける場合)において、無限定適正意見(無限定の結論)以外の監査意見(期中レビューの結論)が付される場合
b 直近の内部統制監査報告書において、無限定適正意見以外の監査意見が付される場合
c 直近の内部統制報告書において、内部統制に開示すべき重要な不備がある場合
d 直近の有価証券報告書又は半期報告書が当初の提出期限内に提出されない場合
e 当期の半期報告書の訂正を行う場合であって、訂正後の中間財務諸表に対して期中レビュー報告書が添付される場合

  • 四半期累計期間(第2四半期を除く。)に係る四半期財務諸表等に対して公認会計士等の期中レビューを受ける場合には、年度財務諸表等の監査証明を行う公認会計士等による期中レビューを受けることとし、監査証明府令第3条第4項の期中レビュー基準に準拠して実施された期中レビューの結果に基づき作成された期中レビュー報告書を添付します(規程第404条第4項及び第438条第2項、規程施行規則第405条第3項)。

(2) 上場規則の実効性の確保

① 上場会社による調査及び調査結果の報告

上場会社は、当取引所が必要と認める場合には、会社情報に関して必要な調査及び調査結果の当取引所への報告を行うものとします(規程第415条第2項)。

② 公認会計士等との情報連携の強化

上場会社は、当取引所が、実効性確保措置の検討に必要と認めて、監査証明等を行う公認会計士等(当該公認会計士等であった者を含む。)に対して事情説明等を求める場合には、それに協力するものとします(規程第511条)。

③ 特別注意銘柄の指定要件の追加

特別注意銘柄の指定要件として、四半期累計期間(第2四半期を除く。)に係る四半期財務諸表等に期中レビュー報告書が添付される場合であって、当該期中レビュー報告書に「否定的結論」又は「結論を表明しない」旨が記載されたときを追加しています(規程第503条第1項第2号c)

3. 適用時期

2024年4月1日から施行しています。
ただし、(1)四半期決算短信の取扱い及び(2)③特別注意銘柄の指定要件の追加に関しては、施行日以後に開始する四半期累計期間又は四半期会計期間から適用されます。

4. 公開草案からの主な変更点

  • 比較情報の作成について規定されました(四半期作成基準第3条)。
  • 上場規程における中間(連結)財務諸表等の定義を「第1種中間(連結)財務諸表等及び第2種中間(連結)財務諸表を含む」としたうえで、四半期作成基準においても「第1種中間財務諸表」から「中間財務諸表等」の表現に変更しています。これによって、第2種中間(連結)財務諸表を作成している会社については、第2種中間(連結)財務諸表の作成にあたって適用される会計方針に沿って作成することを意図していることが明確化されました。
  • 期中における連結範囲の重要な変更の重要性は、連結財務諸表規則第101条に規定する連結範囲の変更に準じて判断するとされました。

なお、詳細については本文をご参照ください。

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