5 分 2020年1月17日
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テクノロジーと人材の融合によって長期的価値を高める方法

5 分 2020年1月17日

このテクノロジーは従業員の可能性を引き出し、力を与えることができるものかどうか、経営幹部は確認する必要があります

現在、ヒューマンエクスペリエンスの観点から、テクノロジーによるビジネスへの貢献度がかつてないほど評価されています。言い換えれば、新商品・サービスの開発や効率化を促進する以上のことがテクノロジーには求められています。それはむしろ、人中心の企業を支える大きな力となり、全ての人のための長期的価値を生み出す動力となる必要があるのです。

ビジネスとテクノロジー、そして人々にとっての新たな道が交差する場所に影響を与える立場にある経営幹部にとって、これはどのような意味を持つのでしょうか?これを詳しく探るため、国も業種もさまざまな大手企業とベンチャー企業の経営幹部570人に、社内のテクノロジーと人材のトランスフォーメーションの進捗状況と今後の計画について尋ねました。

世界をリードする企業(ここでは、収益、粗利益、全体的な財務業績が5年間で10%以上の伸びを示す企業)の半数近く(45%)が、トランスフォーメーションに向けて徐々に変革を進めていると回答しています。全社的にトランスフォーメーションを浸透させる取り組みに着手していると回答した経営幹部も3分の2(66%)に上りました。

このようにトランスフォーメーションを推進している経営幹部が強調したのが、人材育成の重要性です。60%近くが新たなスキルの習得をスタッフに奨励するインセンティブを策定しており、半数以上(56%)の経営幹部が全スタッフの研修の受講を必須としています。

人材への投資

EYが実施した調査では、地域やセクターに関係なく、全ての企業がスキルのギャップによる影響を感じていることが浮き彫りとなりました。このギャップに対処する方法のうちの1つが、テクノロジーを活用し、従業員のスキルを伸ばすことにより、新しいテクノロジーを習得し、革新的な働き方ができるようになることです。

テクノロジーの活用により従業員の能力を解放し、顧客などのステークホルダーのために長期的な価値の創出に注力できるようになることによって、人中心の企業となることが可能になります。テクノロジーは従業員が新たに習得しなくてはならないものというだけではなく、効果的に活用すれば、教育と能力開発を支える存在になります。実際にEYでは、テクノロジーを活用してEYのメンバーの教育と能力開発のニーズを満たしています。これまでに、オンライン教育プログラムである「Learning Academy」や、人工知能(AI)やデータ解析など、将来を見据えたスキルの保有者であることを示すデジタルバッジを獲得できるようにする「EY Badges」プログラムを導入してきました。

また、組織外の多様な人材育成にもテクノロジーを活用しています。最近では、13~18歳の若い女性たちを対象に、STEM(科学・技術・工学・数学)分野でのキャリアの構築を奨励するモバイルプラットフォーム「EY STEM Tribe」をスタートさせました。

現在働いている従業員の能力を育成するだけではなく、近い将来プロフェッショナルとなる人材と関わり合いを持つ能力も、企業の今後の成否をますます左右するようになるでしょう。

テクノロジーと長期的価値

今回の調査では、もう1つ重要な点が明らかになりました。トランスフォーメーションを推進する経営幹部が、どの程度人工知能やIoT(モノのインターネット)をはじめとする最新テクノロジーへの投資を加速させているのか、ということです。こうしたテクノロジーを利用することにより、顧客体験と従業員体験を向上させ、人間の進歩と事業の成長を同時に推し進めることができることを経営幹部は理解しています。

例を挙げると、圧倒的多数(93%)の経営幹部が、AIの導入により、コストや効率、生産性、ブランド認知度においてすでにプラスの効果、または大きなプラスの効果が表れていると回答しています。顧客満足度の向上にAIが貢献したとの回答も86%に上りました。

経営幹部は、テクノロジーへの投資と、それが成長に与えるプラスの効果を高く評価しています。一方で、EYは、真の長期的価値は、企業の理念と結びつきのある、人を中心に置いた考え方に沿って新たなテクノロジーを取り入れることで、実現されると考えています。トランスフォーメーションのビジネスケースには、財務指標にとどまらず、人的価値や社会的価値なども考慮に入れる必要があります。企業は、自社の中核的価値である企業目的を踏まえた上で、その価値をどのように実現させるかを決めなければなりません。

企業がトランスフォーメーションに着手すると、あらゆるステークホルダーにとっての長期的価値の創出を目指すことが求められます。だからこそ、多様な人材を育成することがトランスフォーメーションにとっては不可欠であり、トランスフォーメーションを推進する経営幹部は教育と研修に力を入れているのです。多様性は、テクノロジーソリューションの設計を含め、実にさまざまな形で創造性を高めます。例えば、人材とテクノロジーの面で多様性に富んだリソースエコシステムからもたらされる視点とスキルにより、AIシステムの設計におけるバイアスがかかるリスクを可能な限り抑えることができます。

トランスフォーメーションがすでに軌道に乗っている企業であれ、着手したばかりの企業であれ、最終的な目標は、従業員とステークホルダー、そして地域社会にとっての長期的価値の実現です。この実現に向けて留意すべき点は次の通りです。

  • イノベーション:イノベーション能力において、トランスフォーメーションが人々にどのような影響を及ぼすか、さまざまな要因を考慮する必要があります。異なる視点から物事を見ることを得意とする、多様性に富んだインクルーシブなチーム、すなわち独自のスキルセットを提供できるチームがイノベーションには不可欠です。企業がステークホルダーにとっての長期的価値の創出に成功する鍵も、イノベーションにあります。
  • エコシステムの価値:多くの企業が、エコシステムの持つ可能性を十分に生かしきれていないのが現状です。技術的プラットフォームこそ構築しているものの、外部からイノベーションを取り込む文化がないことが、その原因となっているケースが多々あります。適切なコミュニケーションとマーケティング、業務プロセス、そして知的財産に関する方針が整備され、こうした不確定要素の影響を受ける人たちを支える体制が整えられていなければ、プラットフォームを効果的なコラボレーションの基盤とすることはできません。
  • 投資対称性:テクノロジーへの投資はトランスフォーメーションに欠かせない要素です。一方で、企業が従業員のスキルと能力を育成することの重要性も、勝るとも劣りません。目的に沿って戦略とそれを支えるテクノロジーや人材が相互に連携したとき、企業は顧客に最良のサービスを提供することができます。

テクノロジーが急速に進歩する今こそ、真のトランスフォーメーションをもたらすテクノロジーの可能性を最大限に引き出すために必要な人材やスキル、創造性と、機械やプログラムとの適正なバランスを取ることについて企業が考えるべき時です。

サマリー

トランスフォーメーションの成功はテクノロジーだけでなく、人材にもかかってきます。トランスフォーメーションを推進する経営幹部は、テクノロジー自体が最終目的ではなく、人材育成もまた重要であることを認識しています。

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